技術賞・優秀製品賞 受賞記念
複列アンギュラローラーリング RW 形
優秀製品賞
企業情報はこちらTHK 株式会社* 1

1. 複列アンギュラローラーリングとは
 複列アンギュラローラーリング:RW 形(図1)は、主に工作機械の旋回テーブルに使用される軸受であり、円筒ころを複列にDB 接触構造で配置することで、コンパクトでありながら低トルクで非常に高い剛性を有し、また取扱性も容易な高機能軸受である.

 

図1 複列アンギュラローラーリング RW形

2. 開発の背景
 従来、工作機械の旋回テーブルや産業用ロボットの関節部にはコンパクトで剛性のあるクロスローラーリングが用いられてきた.クロスローラーリングとは一条の軌道溝に円筒ころを交互に直交配列させた、45 度の接触角を持つ軸受である.
 近年、工作機械の性能向上に伴い、旋回テーブル用としてより高剛性の軸受の要求が高まってきたが、従来のクロスローラーリングの構造では軸受の大型化や回転トルクの増大などが避けられなかった.
 そこでコンパクトでありながらより高い剛性を有し、回転トルクの増大を抑えた複列アンギュラローラーリング:RW 形を開発した.
 RW 形と従来型であるクロスローラーリング:RU 形の構造と寸法の比較をそれぞれ図2、表1 に示す.

図2 RW形とRU 形の構造比較 表1 RW形とRU 形の寸法比較

3. RW形の構造
 RW 形は前述のように転動体に円筒ころを用い、それらを複列にDB 接触構造で配置した軸受であるが、RU 形と異なるのは小径の転動体を用いていることである.その結果、RW 形はRU形に対して寸法を変更することなく、転動体を複列配置することが可能となった(一部形番を除く).
 また、小径の転動体を複列配置することでRU 形に比べ転動体数が約4 倍に増加し、従来に比べて50%以上の剛性向上を達成した(図3).さらに転動体の小径化は、転動体の”差動滑り”の抑制にも繋がり、滑りによる摩擦抵抗を抑えることで、回転トルクの低減が可能となった.回転トルクの低減は発熱を抑制し、従来より高い回転数での運転も可能となった.
 一方で軸受を固定するためのボルト配置についてもFEM 解析を用いて見直しを実施し、RW 形の高い精度を安定して発揮させるための構造を採用している.具体的にはRU 形に比べてボルトサイズを小さくし、加えて座ぐり穴を深くすることで締結力による内・外輪の変形を抑え、さらにボルト本数を増し締結力を分散させることで変形を円周方向に均一化している.これによりボルト締結前後での回転トルクの変化が抑えられ、安定した性能を発揮することが可能となった.

図3 RW 形とRU 形の理論剛性比較 表2 RW 形とRU 形の取付穴の比較

4. 販売実績
 2014年1月までに国内外で販売されたRW 形は累計で15,000 個以上である.

5. まとめ
 複列アンギュラローラーリング:RW 形は小径転動体の複列配置という構造から、コンパクト・高剛性・低トルクと優れた特性を有する軸受であり、工作機械の旋回テーブル用として数多く使用され、その性能向上に貢献している.

* 1 特別員,〒141-8503 東京都品川区西五反田3-11-6
豚もも部位自動除骨ロボットの開発
技術
企業情報はこちら株式会社 前川製作所 

1. 概要
 豚もも部位は,軟らかく,形態が一様ではなく,個体差が大きい「不定形柔軟体」であるため,これから大腿骨・下腿骨を取り除く処理(除骨)を行う作業工程は,身体的な柔軟性や熟練した技能,状況判断が必要とされる職人技であり,その難易度の高さため自動化が遅れていた.
 ロボットにより複雑な三次元形状である上に処理中に位置や関節の屈曲・ねじれが時々刻々と変化していく骨に沿って正確に切るために,人の手首の柔軟性を模した機構を備えたカットツールを開発し,これをハンドに装着することで,ナイフの位置を反射的に微調整できるようにした.さらに,不定形柔軟体としての特性を利用した把持,位置固定と状態の認識を行うことにより,人の作業に近い高品質かつ高速なロボットによる自動除骨を実現した.

2.技術の内容
 豚もも部位自動除骨ロボット(図1,2)は,豚もも部位から大腿骨・下腿骨を取り除く除骨処理を自動で行うロボットである.500 本/時間のもも部位を処理する能力がある.
 処理の流れは,まずコンベア上に流れてくる豚もも部位をロボットアームで拾い上げて連続搬送系の処理工程に投入する.投入後に,X 線画像を撮影・処理することにより,内部の骨形状認識や右脚・左脚の判別を行う.計測された情報に基づいて個々のもも部位に合わせたカットラインを生成し,骨形状に沿ってナイフで切り込みを入れる「筋入れ」を行う.筋入れ後のもも部位は段階的に骨から肉をはがし,要所で筋を切ることで,骨と肉を完全に分離する.
 「筋入れ」工程を正確に行うために,X 線画像を基に軌道生成を行い,垂直6 軸アームロボットにより筋入れ動作を行わせた.しかしながら,ロボットが計画軌道の通りに動作をしても,対象物(骨)の位置や形態が時々刻々と変化してしまうため,適切な位置に筋入れを行うことができない.また,骨に対して刃の角度が立ちすぎるとナイフが骨に食い込んでしまうリスクもある.

図1  豚もも部位自動除骨ロボット(全体) 図2  豚もも部位自動除骨ロボット(筋入れ部)

 リスクを回避しながら,高速かつ正確に骨に沿って切るために,垂直6 軸ロボットの先端フランジとナイフの間に自由度を二つ設けた.自由度の一つは,ナイフ側面に対して垂直方向へナイフを平行移動する軸である.バネでナイフを両側から押してセンタリングする構造になっており,計画軌道に対する骨の太さ方向へのずれに対してナイフを追随させる効果がある.また,バネの押付け具合でカットの力加減も表現できる.もう一つの自由度は,骨に引っ掛かりにくい角度にナイフを振れるようにするものである.ナイフ刃面よりも揺動軸をナイフ進行方向にオフセットした位置とすることで,回転中心が刃面よりも先行するので,ナイフの角度が常に回転中心の方向を向くようになり,骨に引っ掛かる前にナイフの角度を逃がすことができる.(図3,4)
 人の手首の柔軟性と同様の機械的なコンプライアンス機能を有することで,反射動作による軌道修正が可能となり,高速での不定形柔軟体の処理を実現した.

図3 カットツール 図4 軌道修正動作

3. まとめ
 本開発ロボットは,商品名「HAMDAS-R」として欧州を中心に導入されており,重労働からの解放と作業者確保難,定着率低下の問題解決に貢献している.
 「HAMDAS-R」の実現は,世界的にも類がなく,食品加工工程を端緒とする不定形柔軟体を対象とした職人技の自動化に新たな可能性を示した.

*1 正員,(株)前川製作所(〒385-0021 佐久市長土呂774)
*2(株)前川製作所(〒385-0021 佐久市長土呂774)
高効率空気吹きIGCC(石炭ガス化複合発電)の開発
技術
企業情報はこちら三菱日立パワーシステムズ 株式会社 

1. 概要
アジアをはじめとする発展途上国の経済成長に伴い,今後,世界のエネルギー需要は増加していくことが予想される.こうしたなか,世界中に広く分布し,埋蔵量が豊富な石炭は,長期にわたり安定的な供給が見込め,価格も比較的安いことから,エネルギーセキュリティを確保していくうえで重要なエネルギー資源となっている.
一方で,石炭火力発電には,最新の天然ガスコンバインド火力発電システムに比べて発電効率が劣ること,他の燃料に比べて燃焼に伴う発電電力量あたりのCO2 排出量が多いことの2つの課題がある.そこで,これらの課題を解決すべく開発を進めているのが,IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle:石炭ガス化複合発電)である.
我国では,高い技術的難度から海外では開発が断念された“空気吹きガス化”について小規模実験プラントから段階的に開発に取り組み,実用規模の250MW 実証機の開発を完了して世界で初めて空気吹き石炭ガス化IGCC の実用化に成功した.

2. 技術の内容
火力発電の高効率化を図1 に示す.最新鋭の超々臨界圧石炭火力(USC)の発電効率が42%(送電端,LHV ベース)程度なのに対して,商用規模の空気吹きIGCC では48 〜 50%の発電効率が可能である.また,将来,燃料電池と組み合わせた IGFC では発電効率55%以上が期待される.
IGCC のシステム構成を図2 に示す.IGCC では,高温高圧のガス化炉で石炭をガス化し,ガス精製設備にて不純物を取り除いた後,ガスタービンにて発電し,同時にガス化炉とガスタービン排熱から蒸気をつくり,蒸気タービンにて発電する.ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせてコンバインドサイクル発電を行うことで,従来型の石炭火力発電より高い発電効率が可能となる.
空気吹きガス化炉では,酸化剤として酸素ではなく空気を使用することにより,所内動力の削減が図れる.これにより,空気吹きIGCC は高い発電効率を達成し,省資源とCO2 削減を実現できる.更に,ガス精製設備で不純物を高レベル除去することで,優れた環境性を有する.
従来,空気吹きガス化炉は,技術的に困難と言われていた.これは,GT 安定燃焼に十分な発熱量を確保しようとするとガス化炉での燃焼温度が上がらずに灰の溶融排出に十分な温度が得られず,ガス化炉で灰の溶融に十分な温度を確保するとGT安定燃焼に十分な発熱量を得られないという背反現象があったためである.これを解決するために,独自の2 室2 段ガス化方式を開発採用し,灰の溶融排出とGT の安定燃焼に必要なガス発熱量の両立が工業的なスケールでも成立することを実証した.

図1 火力発電の高効率化 図2 IGCC のシステム構成

3. まとめ
 250MW 実証機(図3)により技術開発は完成し,我が国独自技術としての空気吹きIGCC を商用レベルで実現可能なことを実証した.250MW 実証機は,2013 年4 月から常磐共同 火力(株)勿来発電所10 号機として引き続き商用プラントとして運転継続されている.次の500MW 級IGCC 量産機は,高い発電効率と優れた環境性を併せ持つ石炭発電システムとして,エネルギーセキュリティの確保,省資源,低炭素クリーン社会を実現する基幹技術として貢献していくものと考えている.

図3 250MW 勿来IGCC 実証機(勿来発電所10 号機)全景

*1 正員,三菱日立パワーシステムズ(株)(〒220-8401 横浜市西区みなとみらい3-3-1)
*2 正員,三菱日立パワーシステムズ(株)(〒850-8610 長崎市飽の浦町1-1)
*3 フェロー,東京大学(〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1)
*4 常磐協同火力(株)(〒974-8222 いわき市岩間町川田102-3)
5 軸制御工作機械の幾何誤差補正とその精度維持を行う
知能化システムの開発
技術
企業情報はこちらオークマ 株式会社 

1. 概要
近年,工業製品のダウンサイジングが進む中で部品形状がより複雑化しており,5 軸制御工作機械の活用事例が増加し,高い精度が要求されるようになってきている.しかし,5 軸加工は,段取や機械構造に起因する誤差の影響を受けやすく,高精度に加工することが難しい.その主な誤差要因の一つとして,軸配置に関する幾何誤差があげられる.5 軸制御工作機械には13 種類もの幾何誤差が存在する.幾何誤差は,製造時に可能な限り小さくしたとしても,ユーザの工場に設置された際に機械の状態変化によって,わずかに変化する.また,ユーザが機械を使用している間も,環境温度変化(熱変位)によって変化し,さらに,床などの状態変化によって経時変化する.このため,機械が使用される環境において,必要な時に,短時間で,幾何誤差を調整する必要がある.そこで,5 軸制御工作機械が自身の幾何誤差を計測・補正して高精度を維持する知能化システムの開発を行った.

2. 技術の内容
本知能化システムの装置構成を図1 に示す.本システムは以下の主な技術から構成される.
(1) 幾何誤差の自動計測技術
タッチプローブ(工作物の機内計測に使用されるセンサ)と基準球を用いて,機械自身が幾何誤差を自動計測する技術.回転軸だけでなく直進軸に関する幾何誤差を含めた11 種類の幾何誤差の計測を実現した.オペレータは,.董璽屮襪亡霆犁紊鬟札奪箸靴董ぅ織奪船廛蹇璽屬魑紊里およそ真上に位置決めさせ,⊃回のキー・ボタン操作を行うだけで,後は自動で計測が実行され,10 分程度で完了する(図2).このため,オペレータのスキルに依存せず,安定した精度で幾何誤差を計測することができる.

図1 高精度を維持する知能化システムの装置構成 図2 幾何誤差計測の流れ

(2) 幾何誤差の補正技術
幾何誤差による工作物に対する工具の位置と姿勢の誤差をリアルタイムに補正する技術.自動運転だけでなく手動運転でも補正が適用されるため,オペレータは従来と同じ操作で段取から加工までを行うことができる.
(3) 環境温度変化による工作機械の熱変位を抑制する技術
環境温度の変化による熱変形を単純化する(傾きの生じない収縮・膨張のみにする)機械構造をベースとして,温度センサを用いて熱変位を自律的に補正する技術.一般工場環境下,急激な室温変化,切削液の有無,広い加工範囲など,様々な状況下で高い精度安定性を実現した.
本知能化システムにより,オペレータは簡単なセットアップ作業を行うだけで,機械自身が幾何誤差の影響を低減し,5 軸加工において高い空間精度を実現できる.また,環境温度変化による幾何誤差の変化の影響を機械自身が自律的に小さくすることで,長時間高精度を維持できるようになる(図3).

図3 本システムによる精度維持効果(イメージ)

3.まとめ
本知能化システムは2012 年4 月より販売しており,特に国内において適用機種への搭載率は極めて高く,ユーザの加工精度向上に貢献している.今後,さらに5 軸加工精度を向上する新技術の開発を進めていきたい.

*1 正員,オークマ(株)(〒480-0193 愛知県丹羽郡大口町下小口5-25-1)
*2 オークマ(株)(〒480-0193 愛知県丹羽郡大口町下小口5-25-1)
高耐圧高効率マイクロチャンネル熱交換器
優秀製品賞
企業情報はこちら株式会社 WELCON* 1

1. マイクロチャンネル熱交換器とは
 マイクロチャンネル熱交換器とは,マイクロスケールの流路(数十μm〜数百μm 程度)を持つ熱交換器である.  一般の熱交換器は流路径が数mm 程度であり,流路の長さも数m〜数十m ある.そのため体積が大きく,重くなり,高効率化が求められている.
 高効率化、軽量化を達成する手法の一つにマイクロチャンネルの活用がある.流路径を小さくして高密度化することにより,熱交換面積を増大できる.また,熱交換を行う流体間の距離が近くなり,流体間の温度差を最大限に利用できる.さらに,流路径が小さくなることにより,流体内に発生する温度分布の影響が小さくなり,効率的な熱交換を行うことができる.

 

図1 マイクロチャンネル熱交換器

2. 拡散接合とマイクロチャンネル流動現象の解明
 マイクロチャンネル熱交換器の製品化のために,2 つの研究開発を行ってきた.ひとつは拡散接合技術である.
 拡散接合とは,真空または不活性ガス中で接合材料を密着させ,融点以下の温度条件下で加圧・加熱して,原子の拡散を利用して接合する技術である.塑性変形を抑制でき,形状を維持した精密な接合が可能である.
 これにより,微細な流路を持つマイクロチャンネル熱交換器を製作できる.  面と面を接合する技術にろう付けがあるが,拡散接合は直接接合であり,ろう材を使用しない.そのため,水を流したときに,異種材料の電池効果による腐食が発生しない.また,数百度の高温でも使用できる.さらに,ろう材が微細な流路を塞ぐこともない.加えて,拡散接合部は母材なみの強さが得られるため,適切な設計を行えば,数十MPa 以上でも使用できる熱交換器が製作可能である.

図2 流路断面(250μm)

 もうひとつはマイクロチャンネルの熱流動現象の解明である.
 筑波大学 阿部・金子研究室と共同で,マイクロチャンネル内の熱移動や凝縮挙動について研究を行っている.そこから,マイクロチャンネル熱交換器の流路径,流路長さ,積層数による性能への影響が明らかとなり,適切な設計が行えるようになった.現在も,マイクロチャンネル内での蒸発,凝縮挙動の可視化に取り組んでいる.
 これらの技術を組み合わせることにより,小型でありながら優れた性能を有し,さらに高耐圧性,耐腐食性,耐高温性などの特徴を併せ持つ熱交換器を作ることが可能となった.

3. 応用範囲
 マイクロチャンネルの優れた特性は,発熱源を冷却するヒートシンクとして用いても,高い性能を示す.そのため,マイクロチャンネル熱交換器で得られた知見を応用し,さまざまな高性能流体デバイスの開発を実施している.

 

図3 マイクロチャンネルヒートシンク

4. シェア
 現在,半導体,自動車,電機,化学の分野で評価が行われており、一部で実機に搭載されている.
 すでに数十件の評価も行われており,これらのプロジェクトを起点としてより身近な製品への適用が進むことを期待している.

5. 謝辞
 本製品開発に際して,筑波大学 阿部豊教授,金子暁子准教授,学生の皆様にお世話になりましたことを感謝いたします.
 また,経済産業省のサポイン事業により,実用化に大きく近づけたことを感謝いたします.

* 1 特別員,〒956-0113 新潟市秋葉区矢代田15-1