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JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。
会長を含めて3人程度が交代で一年間を通して執筆します。


No.13 『メカ好き集団--手作りおもちゃを楽しむ--』

日本機械学会第81期 財務理事
大木 博(日立ハイテクノロジーズ)

 
 

 素朴なおもちゃには何故かメカ屋の心を引き付ける力がある。ましてや、あれやこれやと失敗を繰り返しながら自分で工夫したおもちゃを作っている時は、それに没頭して、頭と手を動かし続けたくなってしまう。
 私は、この3月まで勤めていた企業の研究所で、有志を募り「手作りおもちゃを楽しむ会」という活動をやってみた。目的は、日々の仕事からちょっと離れ、創意工夫しておもちゃを作りながら"からくり"の勉強をしよう、という趣旨である。根っからのメカ好きはもちろんのこと、シミュレーションはめっぽう得意だが大学ではあまり実物に触れる機会がなかった若者は特に大歓迎!ということにした。業務としての製品開発では常にスケジュールに追われ真剣勝負の仕事をしているから、たまには頭のリフレッシュのためにもこんな企画もいいだろうと考えた。必要な試作費もほんの僅かである。

1. 斜面を滑り降りるスキー人形 2. 最もシンプルな二足歩行機構

 募集をしたら若者を中心に約20名が集まった。定時後、週に1〜2時間、幾つかのチームに分かれ、皆でわいわい言いながらアイディアを出しては3次元CADで設計したり、機構動作解析をしたりしてすぐに試作してみる。予想通りにいかなかったら何が抜けていたか検討会を開き再トライする。こんな楽しいおもちゃ作りを1年間くらいやった。作品例1,2,3は東北大学名誉教授でおもちゃに造詣の深い酒井高男先生にご指導いただいて、自分達なりの工夫を加えて作ったものである。私も時々、試作品を見に行ったが、報告してくれる若者達の目がキラキラ光っているのが印象的であった。下記ホームページにアクセスすれば、作品の動画も見ることができるので、是非ご覧いただきたい。


http://www.hitachi.co.jp/Div/merl/toys/toyindex-j.html


3. ブレークスルー・リング 4. 坂道で、でんぐり返しをする機構

 作品3は平たいリング状の「逆立ちごま」である。これは逆立ちごまとしての性能のみならず、社内の商品デザナーにデザイン指導をしてもらったり、研究所のロゴを入れたりして"商品"に近い形にまでブラッシュアップした。写真のように机の上に左指でこのリングを軽く立て、右指でリングの右端をはじいてやると、垂直軸まわりに回転する。このリングが、あるタイミングで突然逆立ちし、ハートが上になり回転する。この動きが突然の"ひらめき"を連想させるので、これを "ブレークスルー・リング"と名付け、ご来所されたお客様に記念に差し上げることにした。飾っておいても綺麗なので、お客様には大変喜んでいただいている。
 ところで、この活動は単なる同好会活動ではなく、れっきとした研究所内の正式組織である「メカトロニクス研究会」の分科会活動として行った。"研究会"というのはこの研究所において、"学会"のような役割を果たしている。製品別に縦割りに分かれている組織の中から共通技術を所内横断的に括りだし、同じ技術分野で活動している研究者同士で切磋琢磨する場として有効に機能している。この"研究会"は8つほどあり、技術専門職である主管研究長や主管研究員が取り仕切っている。最近は研究所内だけでなく、社内およびグループ会社にも活動の輪を広げつつある。機械学会とも更に連携強化してゆきたいと考えている。

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Last Update 2003.5.14

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