部門長挨拶
|
|
この4月より第89期機械力学・計測制御部門の部門長を仰せつかりました慶應義塾大学の西村秀和でございます。皆様とともに1年間、部門の運営をして行きたく存じますので、よろしくお願い申し上げます。
3月11日の東日本大地震の発生により、被災された会員の皆様およびその関係者様に心よりお見舞い申し上げます。2ヶ月が経過いたしましても未だ余震の続く状況にありますが、皆様の生活と安全が一日も早く確保されることを心からお祈り申し上げます。
ご存知のとおり、当部門には、プラント機器等の耐震設計の専門分野に関連する研究者、開発者の方々が多く所属されています。日本機械学会では、東日本大震災タスクフォース・臨時分科会が設置され、当部門運営委員からは藤田 聡先生がメンバーになっています。また、耐震問題研究会幹事の古屋
治先生からの情報では、日本機械学会,日本地震工学会,日本建築学会,土木学会,地盤工学会,日本地震学会の6学会による被害調査連絡会が設置され,同研究会のメンバーが参加しています。兵庫県南部地震の際には、岩壷
卓三先生,安達和彦先生を中心として阪神淡路大震災の臨時調査分科会が設立され、その被害調査活動をもとに,耐震問題研究会では曽根 彰先生を主査,安達和彦先生を幹事としてWGを設置し「被害調査マニュアル」を作成しています。兵庫県南部地震から16年の歳月を経て、当時の調査に基づくその後の対策が、今回の地震による建物やプラント施設等の被害を軽減したものと推察します。今回の震災後においても、上述のように迅速でかつ学会横断的な対応がとられたことは大きな意味を持つと考えます。
しかしながら、今回の地震では,津波による被害が想定を越える極めて甚大なものでした。耐震設計としては十分になされていた原子力発電所も、津波に対しては脆弱な設計がなされていたと言わざるを得ません。こうした問題に対しては、当然ながら当該部門だけの力で対応できるものではなく、専門分野を横断し、そして、「デザイン」を行う必要があると切実に感じます。
当該部門ではDynamics & Design講演会を20年に渡り開催してきました.このDynamics & Designには,上述の問題の解決への糸口がしっかりと埋め込まれていると思います.すなわち、デザインする際に,ダイナミクスを考慮することの重要性を訴えていると思います.今や,機械が機械のみで動作するものは皆無と言って良いほどありません。そこには,様々な要素(ハードウェアのみならずソフトウェアや人や設備など)が組み合わされ,システムとしての所望の機能を持っています。そのようにデザインされています。所望の機能の中には、ダイナミクスをもった機能を発揮しなければならないものがあり、また、さまざまな要因により、動的にシステムの様相が変化することがあります。そうした変化にも耐えることが要求される重要なシステムが存在します。私たちはこうしたシステムを設計し、安全に運用し、そして、それを保守しなければならないのです。私たちがシステムによって被害を受けるようなことがあってはならず、システムのライフサイクル全般にわたる責任を私たちが持たなければならないのです。
こうしたことに目を向けてみると、私たち技術者、研究者は今一度、やるべきことを整理し、実行する必要があるのかも知れません。
私は、これまでの当該部門の良さを引き継ぎながら、さらに真剣に取り組むべき事項として、次の3つを挙げたいと思います。これらのことは、これまでの歴代の部門長も掲げてきたことなので、決して目新しいことではありませんが、震災の状況を見るに付け、改めてその重要性を感じているところであります。上述の点は当該部門の活動に当てはめてみると、以下の事項に割り当てることができます。
1.若手技術者および研究者の育成
たとえば、振動工学データベース研究会のデータベースv_BASEには、必要不可欠な技術が数多く含まれています。現場で生じる問題の原因は様々で、ここから学ぶことは多く、若手技術者の育成に役立てることができると考えます。そして、そこには、乗り越えるべき数々の課題と、基礎的な研究対象があります。このほかの研究分科会や研究会でも、積極的に若手技術者・研究者が参加する場をつくって欲しいと考えます。
2.他部門との連携:専門分野をまたがるシステムのデザイン
システムのデザインを行うには、他部門との連携、専門分野を越えた協業が必要不可欠です。日本機械学会内での部門を越えた連携や、学会を越えた連携が必要になってきます。当該部門としてのスポーツ・アンド・ヒューマンダイナミクス専門会議への支援は、こうした連携を促進する一つです。是非とも、皆さん自身が、他分野、他部門、他学会の方々と積極的に“交際”を深めていただきたいと思います。
3.国際化:JSDDの発展と日韓シンポジウム
2007年より部門に直結した国際Journal 、JSDD (Journal of System Design and Dynamics)を発刊し、国際化の推進をはじめました。まもなく5年の歳月を迎えようとしていますが、引き続き良質の論文の掲載を進め、国際的に評価される論文集に育て上げるとともに、国際的な発信力を備える必要があります。また、2009年には成田吉弘元部門長のもと、渡辺
亨先生を中心にD&D2009の中で「Japan-Korea Joint Symposium on Dynamics & Control」を開催しました。この5月25日〜27日には、韓国釜山にてK-Jシンポジウムが開催されます。こうしたグローバル化は当部門のみならず、日本の発信力の強化に極めて重要です。
機械力学・計測制御部門は,1987年4 月に発足しましたので、今期で25年目に入ります.四半世紀を迎えるにあたり、そして、今回の大震災を受け、ますます、当部門の真価が問われていると感じます。このような重要な局面で部門長になることは私のような若輩者には荷が重いことです。しかし、微力ながらも私にもできることがあるはずですので、皆様方のご指導ご鞭撻をいただきながら、部門の運営を進めて行きたいと思います。どうか積極的なご支援をお願い申し上げます。
2011.5.18
