更新:2011/4/20

このページでは、部門長挨拶、設計工学・システム部門の創設の背景と、この部門が対象とする分野および領域について紹介します。

第89期部門長挨拶
(首都大学東京 下村 芳樹)
第89期部門長 下村 芳樹

この度,第89期の部門長を仰せつかりました.運営委員および学会スタッフの皆様,ならびに部門員の皆さまのお力添えのもと,学会ならびに設計工学・システム部門の一層の発展に寄与できますよう努力を致したく存じます.どうぞよろしくお願いいたします.

我々を取り巻く社会は日々目まぐるしく変化し続け,一夜にして常識が覆り,攻守が頻繁に入れ替わる状況が日常的に続いております.このことは日本機械学会において扱われることの多いメカトロニクスシステム製品に対しても同様の変化をもたらしております.例えば,今や工学の範疇においても「価値」を議論する場が設けられることは決して稀有なことでは無くなりましたが,そこでいう価値の本質を固定的概念として語ることは容易ではなく,社会・時代の変遷とともに,変化し,成長し続ける概念としてとらえるべきものであることは,今や広く認識されるところです.そして「ものをつくる」ことが価値を創出するための手段であり続けるために,生み出すべく価値の変遷に伴って,「もののつくり方」もまた変化を遂げねばならないことは自明の理であり,その意味で我々は決して終わることのない,手段探求の道筋を歩み続けねばなりません.この過程において,道筋を示す地図の記法を整備し,また実際に地図を描くことこそが,設計工学・システム部門の役割であろうと認識しております.しかし社会の変化が求める「ものづくりの進化」は決して単純な旅程ではなく,多くの複雑な分岐や,かつてない巨大な障害に溢れています.これら分岐を地図に正確に記し,障害を取り除きつつ歩を進めるためには,先端の技術開発にこれまで以上に注力するとともに,個々の領域を超えた横断的な連携をものづくりにおいて実践することが非常に重要です.そしてこの「ものづくりにおける領域横断的連携の実践」こそが,設計工学・システム部門の主題であると理解しております.ここでいう領域横断的な連携をすること無しに解決することが困難であると言われる代表的な問題が環境問題であり,また極度に疲弊した自国経済の復興であることは皆様のご存知の通りです.しかしこれら以外にも我々が取り組まねばならない問題は散在しており,その一つの例が教育問題です.若年層の理科離れが叫ばれて随分と時間が経過しましたが,まだその抜本的な対策は見つかっていないように思われます.そしてその影響は高等教育や企業活動の現場においても深刻な影響を及ぼし始めており,「ものを知らない日本人」が急速に増大し,取り返しのつかない状況に陥りつつあることが多々指摘されています.つまり我々が描くべき「ものづくりの地図」には,つくるべきものへの道筋やあたらしいつくり方への道筋だけでなく,「ものを知る日本人」の育成への道筋を書き記すことが求められ始めています.設計工学・システム部門におきましては,この工学に対する新たな要求にお応えできる地図づくりと,そのための人づくりにひたすら邁進致します.学際,産業界,政界を問わず,志を同じくする皆様の本部門活動への積極的なご参加をお願い申し上げます.併せて,今後の設計工学・システム部門をどうぞよろしくお願いいたします.

部門創設の背景

機械工学を取り巻く環境は転換期にあり、設計はいろいろな問題をかかえています。別すると一つは、設計対象の「質」の確保の問題であり、もう一つは設計を行なうための効率化の問題です。第一の点の問題は、設計への要求が多様かつきびしくなっていることです。製品の大型化や大量化さらにP/L(製品責任)問題など信頼性の確保はもちろん、先端技術の製品への取り込みなどのほか、感性など製品に対する人間的視点の重視、さらに最近やかましくなってきた地球環境への対応や省エネなどがあり、これらの内容はすべて設計に対する要求として発現するのです。第二の点についてはどうか。第一の点を実現するために設計の負担は際限なく増大しており、加えて最近の設計では設計期間の短縮も強く要求されます。これに対処するためにCAD/CAM/CAE、AIなどのコンピュータ利用技術が採り入れられるわけですが、それらは情報分野における、例えばニューロやファジイなどの新しい技術にも関連しており、それらの理解はさらに新しい課題として設計者に課せられることになります。このような状況に対処するためには、正面から設計に取り組み、設計者を支援する方法を考える部門が学会に不可欠です。

(赤木新介「設計工学・システム部門設置の背景」より)

対象とする分野および領域
設計工学・設計方法論・設計学 CAD/CAM/CAE ,シンセシス,アナリシス,アブダクション,創発,場の理論,発想・創造支援,創発的計算法,タグチメソッド, QFD , TRIZ , DfX
設計知識 設計哲学,設計原理,設計公理,設計知識処理技法,設計知識マネジメント,設計知識共有・再利用,機能モデリング
製品開発・情報管理 製品モデル,製品開発,プロジェクト・マネージメント,コンカレントエンジニアリング, PDM , SCM , EPR ,ディジタルモックアップ,ラピッドプロトタイピング
設計組織 ビジネスモデル,エンタープライズモデル,設計生産性,グローバルエンジニアリング
システム工学 分散・協調,コラボレーション,インターネット応用技術,データベース,遠隔教育
ヒューマンインタフェース 身体性メディア技術,バーチャルリアリティ,ハプティックス,モバイル,ウェアラブル, IPT ,実世界指向
人工物工学の展開 人工物工学,サービス工学,ライフサイクル工学
新しい人工物 マイクロマシン