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第85期部門長挨拶

1. はじめに


第85期部門長
佐藤太一

  2007年4月より,松岡部門長の後任として,情報・知能・精密機器(IIP)部門の12 代目部門長を務めることになりました.本年度は,高橋宏副部門長(湘南工科大学),山内良明幹事(日立製作所)をはじめとする各委員会の委員長および運営委員の皆様と協力し,本部門のさらなる発展を図りたいと思います.何卒,よろしくお願いいたします.

2. IIP 部門のこれまでの歩みと現状

  IIP 部門は昨年度,設立15周年を迎えました.これを記念して今年の春の部門講演会では,本部門の歩みを総括いたしました.本部門は,高度情報化社会の基盤となる各種情報・知能・精密機器を対象として,そのテクノロジーの学問的基盤を確立するとともに,それらの創造と発展に寄与することを目的として設立されました.

  IIP 部門の最初の「I」は「Information」です.「情報」あるいは「情報機器」は本部門の設立趣旨の根幹を成すものです.そして,情報機器は,コンピュータの記憶装置などの周辺機器にまつわる研究や開発で,本部門設立から今日に至るまで牽引車となっています.

  しかし,情報機器が私たちの身の回りに普通に在る状況の今,本部門も単に,磁気ディスク装置で代表される情報機器のハードに留まらず,磁気ディスク装置でのキーテクノロジーでもある「マイクロ・ナノの技術領域」へ大きく踏み出しています.この技術領域を代表するものにMEMS があり,近年本部門における講演発表件数が特に増加しています.また,プリンティング技術では,紙送りという技術の根幹となる分野に加えて,印字の本質を支配するトナー制御技術というマイクロ・ナノ技術が活発に議論されています.

  IIP の第二の「I」は「Intelligence」,三番目の「P」は「Precision equipment」です.これらの分野は,昨今の機械の知能化・高機能化・精密化,高度福祉・医療機器の要求の流れに沿って本部門の中で着実に活動の場を拡げています.このような本部門の歩みと現状を踏まえて,これからの方向を考えてみたいと思います.なお,本部門の15 年をまとめた資料が部門ホームページ「http://www.jsme. or.jp/iip/Japanese/Overview/intro_ppt.pdf」にあります.是非ご覧ください.

3.今後の活動を考える

(1)学術(講演会,分科会)活動の活性化
  講演会は,自分の研究成果を他の人に厳しい目で評価してもらう大変重要な機会です.いろいろな人・角度から意見やコメントをもらうためには,多くの人が集まる活性度の高い講演会であることが必要です.
IIP 部門の講演会をこうした活性度の高いものにしていく必要性を強く感じています.発表者がある程度固定化するのはやむを得ないにしても,多くの方が参加できるようにシステムを改善していきたいと考えています.
一方,分科会・研究会活動については,本部門の主要技術領域の分科会の立ち上げをここ数年かけて行ってきました.ただ,多くの分科会が現在休止中であり,これらの再活動を積極的に進めていこうと思っています.これに加えて,「新しい芽の領域」に係わる分科会の立ち上げも積極的に検討しなくてはならないと考えています.

(2)講習会の活性化
  技術者教育は学会活動の大きな柱の一つとして挙げられます.本部門では講習会を年2回定期的に企画・開催しています.ここでは,先に述べた分科会活動で得られた成果を広く世の中に還元する目的でテーマ設定しています.多くの方に参加していただいて好評な講習会がある一方,内容が先端すぎたために参加者が少なかったものがあるのも事実です.できるだけ多くの方が望んでおられる講習会を企画する必要性を痛感しておりますが,その一つとして,若手・中堅技術者の教育・自己啓発に大きく貢献する本部門独自の基礎的な講習会を検討していきたいと考えています.

(3)グローバル化の推進
  技術開発のグローバル化に対応して,部門活動にも国際化が求められていることはよくご存知のことと思います.本部門は,米国機械学会(ASME)で当部門とほぼ同じ技術分野をカバーするISPS 部門と共催して,3年おきに日本とアメリカとで交互に国際会議を開催しています.2003 年に横浜でMIPE2003 会議(Joint Conference on Micromechatronics for Information and Precision Equipment)を,昨年の6月に Santa Clara でMIPE2006 会議を開催しました.2009 年には,再度,日本でMIPE2009 会議を開催する予定であり,本部門の主査会議・運営委員会メンバーを中心にその準備を開始しています.まだ,先ではありますが,本会議への積極的な参加をお願いする次第です.

  本部門は,機素潤滑設計部門,設計工学・システム部門,生産加工・工作機械部門,生産システム部門と合同で電子ジャーナル「Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing 」を発行しています.研究・開発の成果を広く世界に向けて発信するための媒体ですので,多くの方の投稿をお願いします.

(4)「多くの方のための部門」となるために本部門のホームページ「http://www.jsme.or.jp/iip/index.html」をご覧下さい.本ホームページはIIP 関連の方々と部門とを結ぶかけ橋です.本部門の情報・話題を皆様にスムーズに提供するために,今年の3 月にホームページをリニューアルしました.ご覧になって,ご意見等いただけましたら幸いです.

  部門は,一つのコミュニティーであり,人と人との結びつきを作る場です.そして,多くの技術者は,そうした体験を通して,学会・部門活動の重要性を感じることになります.しかし,将来の技術者の卵である学生が,学会に対してこうした感情を持っているでしょうか?

  学会での発表は,学生に成果発表の訓練の場とよい意味での緊張感を与えてくれます.しかし,学会発表が学生同士の結びつきを深めているとはとても言えないと思います.これは,学会発表では学生同士のコミュニケーションのための時間が十分取られていないことが原因です.こうした状況を少しでも改善したいと思い,今年の夏に「IIP 部門学生サマースクール」を企画しました.学生の主体的交流の場になればと思っています.

4.おわりに

  本部門のこれまでの歩みと現状を簡単にご説明し,今後,本部門としてどのように活動していくかということを述べました.部門活動は,皆様のご協力があって初めて発展していきます.皆様の部門に対するご協力・ご支援をよろしくお願いいたします.

Last Modified at 2010/8/5