Home > 部門紹介 > 第87期部門長挨拶

第87期部門長挨拶


第87期部門長
吉田 和司

 2009年度の日本機械学会、情報・知能・精密機器部門長を拝命いたしました吉田です。これまでの歴代部門長の方々の思いを引き継ぎ、部門のさらなる発展に努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。

 さて、当部門は、高度情報化時代を支える各種情報機器、知能化機器、精密機器の高度化を目指して、その基盤的技術や学理の確立だけでなく、新たな技術の創造や発展に寄与することを目的に設立されました。この理念は、部門設立17年が経過した現在でもなお重要であり、この理念に沿った活動を継続していきたいと考えています。

 これまでの情報機器の歴史を、電話を例に振り返ってみますと、江戸時代は飛脚という一種の郵便手段が唯一の情報伝達手段でした。それが、時代がすすむにつれて電信・電報となり、さらには一般家庭への電話の普及、そして現在では携帯電話といったように進化してきました。別の観点からみると、機器は地域に一台、家庭に一台、個人に一台といったようにダウンサイジングが進んできています。また同時に、一台の機器で処理する情報量も機器の進化とともに増大しており、この傾向は電話だけでなくテレビやオーディオ機器など、あらゆる情報機器で共通なものとなっています。

  このような情報機器の進化に伴い、当分野における技術開発は主に小型・軽量化、情報の大容量化、そして低コスト化を主たる課題として取組まれてきました。この技術開発の方向は、まだ当分の間は継続するものと考えられ、特に小型・軽量化の課題に対しては、機械工学の分野での技術革新が不可欠です。

  最近ではMEMSに代表されるマイクロ・ナノ領域での技術開発や研究が盛んになってきています。ここでは、ミクロンオーダーやナノオーダーでの現象解明や問題解決が研究開発の目標となりますが、従来の振動、構造、熱、流体等のいわゆる機械工学の基盤分野のみのアプローチでは問題の解決は困難です。問題解決のためには、機械工学の基盤分野の連携や統合、そして機器の知能化が不可欠であり、当部門の役割もこの問題解決のアプローチを率先して示していくことにあると考えています。

 一方、これまでの情報機器は、主に音声、文字、画像という人間の五感における視聴覚情報を対象とした機器でもありました。真の高度情報化時代を実現するためには、他の五感情報を伝達することのできる新たな情報機器の開発も必要です。私事で恐縮ですが、数年前に機械工学に最も相性が良いと思われる触覚伝達システムの「遠隔マッサージシステム」を若手の研究者とともに開発をしました。発表後の予想もしなかった周囲の反響に大変驚きましたが、同時に触覚情報機器に対するニーズがあることを認識することができました。本格的な触覚情報機器の実現には、小型・軽量のセンサやアクチュエータが不可欠ですが、この分野でも数多くの研究が進められており、製品としての触覚情報機器が出てくるのも遠い先ではないでしょう。

 このように考えると、当分野が研究、開発対象としている領域は、依然として夢とロマンのある領域であることを実感します。もちろん、現在、一般に普及している情報機器においても未だ十分に解析や解明がなされていない現象が多くあり、機器の知能化や精密化でもまだ多くの課題があります。情報・知能・精密機器は、研究テーマの宝庫であることは間違いありません。

 当部門の活動を通じて、様々な分野の研究者や技術者と交流することにより、個人や組織だけでなく、日本全体の技術向上に貢献できる組織になればと考えています。このためには皆さまの協力が不可欠です。今後とも部門活動に対するご協力とご支援をお願いいたします。

Last Modified at 2008/6/11