社団法人日本機械学会

社会で活躍する女性技術者


株式会社IHI

太田 聖子

太田聖子さんは学生の頃数値流体力学を専門にされており、博士課程を修了し企業へ就職された。女性の技術者はめずらしくはないが、機械系技術者のなかで女性の割合は他の工学系に比べ低く、本会でも38000名の個人会員のうち女性会員は600名程度となっている。研究開発に従事している女性ならではの視点のみならず、若手の技術者の一人として現在の企業の現状などをうかがう。なお、インタビューにはこれからの技術者を目指す女性学生員3名も加わっていただき、学生目線からの質問を受けた。


専門は数値値流体力学。2004年横浜国立大学で博士課程満期修了後、同大に助手として勤務、2004年12月に博士号取得。2005年4月より石川島播磨重工業株式会社(現IHI)に就職。現在、同社車両過給機セクター開発部性能グループ勤務。2001年より本会会員、2008年度には「渦法における汎用流体解析コードの開発」で本会奨励賞(技術)を受賞。流体工学分野での期待の若手技術者の一人。
聞き手 福山満由美広報理事(日立製作所)、山本創太会員部会委員(芝浦工業大学)
本会学生員の高島舞さん(名大院)、佐藤めぐみさん(慶應大院)、瀬賀直子さん(芝浦工大)も参加

自己紹介と機械系に進んだきっかけ

自己紹介をお願いいたします

【太田】 株式会社IHIの太田と申します。現在、横浜事業所にある車両過給機セクターで、ターボ機械の1つである自動車向けのターボチャージャについて研究開発を行っております。よろしくお願いします。
ターボ機械とは、ジェットエンジン、風車、水車、または身近にある換気扇や扇風機など、羽根車が回転して流体とエネルギーをやり取りする機械の総称を指しております。弊社ではターボ機械を主力製品として取り扱っており、その中でも、流体性能向上を専門とした業務を行っております。

【山本】 本日は、座談会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。 私、司会を仰せつかっています芝浦工業大学の山本でございます。よろしくお願いします。

【福山】 私は一緒に司会させていただきます福山といいます。日立製作所の機械研究所に所属しておりまして、機械学会では広報の理事をさせていただいております。


【山本】 学生さんからも、お一人ずつ自己紹介いただけますか。

【高島】 名古屋大学修士2年の高島舞と申します。専門は材料で、コーティングをしています。

【佐藤】 慶應大学の佐藤めぐみと申します。修士2年です。専門は生産システムです。細かく言うと、リバースエンジニアリングを研究テーマとしております。

【瀬賀】 芝浦工業大学の学部4年の瀬賀直子と申します。専門は、足を補助する装置の開発を行っていて、体に固定せず、着るだけで歩くのをサポートする機械の開発をやっています。 

Q 【山本】太田さんが機械技術者を目指されたきっかけと、今のキャリアへ至った経緯についてお聞かせください。


【太田】  子供のころから物をつくることが好きでした。父が技術者だったので、機械に興味を持てる環境が身近にあったことが理由の一つだと考えております。大学進学を考えたときも、不安はありましたが、そのような環境の中で育ってきたので、機械系に進学することへの抵抗はほとんどなかったと思います。 大学では、今、皆さんが習っている数学や工学的な学問を学びましたが、なんの役に立つのか、正直申し上げてよくわかりませんでした。今まで学んできたことが具体的にどのようにものづくりに反映されていくかを知りたかったのが、企業への就職を選んだきっかけだと考えています。
 入社してからは、研究所に配属され、ターボ機械の設計開発を行う部署で流体性能向上に関する研究開発を行ってまいりました。研究所には4年間在籍し、ターボ機械の開発を行ってまいりました。技術を色々と習得してきたのですが、自分の視野を広げたくて他部門への異動を希望し、現部署への配属が決まりました。


Q【瀬賀】 就職活動の中でどうやって技術者としての将来像を決めたのでしょうか?


【太田】 私は大学の研究室に在籍していた頃は、CFDというコンピュータを使った数値シミュレーションに関するコード開発を行っていたこともあり、流体工学について何を聞かれても恐くない技術者になりたいということと、それ以外の分野についても全般的に知識を深めていきたいという目標があります。
 その目標を達成するためには、大学に残って流体分野に注力した研究を行っていくのではなく、企業へ入って材料や構造、システムなどの様々な分野の技術者と交流しながら、視野を広げていくほうが良いと考え、現在に至ります。


【高島】 大学の研究室でやっていたことと企業に入ってからやっていることが重なる人って余り聞かないというか、そのまま続けていらっしゃるというのが私としてはすばらしいと思います。


Q【福山】 学生さん方はどうして機械のほうへ進まれたのでしょうか。


【高島】 私は物をつくりたいなと思っていました。私は材料系が専門で、その中でも解析系と実験系とあり、自分で物をつくってみたいというのがあったので、今の研究室に入って実験系を選びました。同級生で、一日じゅうパソコンに向かい解析をやっていて、夜はそのままパソコンに解析の計算させたまま帰る人たちを見ていると、やっぱり実験系でよかったなと感じます。実験をしていると、自分がつくったものが実際に見えるところがいいなって最近、思っています。

【佐藤】 私は大学進学を考えたときに、道路で見たフェアレディZって格好いいなって思っていて、単純に自動車の見た目だけで、もちろん当時はエンジンがどうなっているのかは何もわからなかったのですけれども、とりあえず、機械系のところへ行っておこうと決めました。
 その後、研究室を決める際には、自動車とか工業製品の設計の支援システムなどを研究の対象にしているところがあり、そこに入りました。研究テーマはデザインへと変わってきているのですけれども、私は、実物のものをつくりたいというよりは、格好いい形、デザインにかかわる何かがしたいと感じていました。それは、実体であろうと、システム内でのことであろうと、どちらでも良かったのですが、設計に関するところがしたいというので今に至ります。

【瀬賀】 私の実家は町工場を父が経営していて、小さいころから工場でずうっと遊んでいました。そして、中学に入るころから理系に進んで機械系に行こうと思っていました。大学へ入ってから、いろんな加工の実習とかは余り授業を選択しなかったのですが、父が教えてくれるようになって、それがすごく楽しくなって、つい最近、自分で機械を買ってしまったのです。(笑声)本当に物をつくるのが楽しくなって、今の研究室を選ぶときも、研究室の方針で外注はせずに自分たちで全部つくろう、というので選びました。いつもみんなで加工したりしています。
 それと、物はつくっただけじゃ何も動かないで、それを制御するというのも必要ですから、物をつくり・それを制御するという両方やるのも自分の視野を広げるにはいいかなと思い、今に至っています。就職活動は特にしておらず、大学院の修士課程には進むことが決っています。その後、どうするべきかそろそろ真剣に考えなくてはいけないなと思っています。

 

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