LastUpdate 2006.8.17

「機械の日・機械週間」制定宣言

 人類は発祥以来、さまざまな道具や機械を創り、それらを使いこなすことによって生活を豊かなものとしてきました。特に、十八世紀の産業革命以降の機械の目覚しい発達と普及は、産業を支え、災害や事故を防ぎ、人々に物資を供給し、健康を促進して長寿を可能にしてきました。機械技術は、社会の要請に間違いなく応え、文明文化の発展と深化に貢献してきたと言えます。この間、機械の概念も大きく拡がり、現在ではネットワークなどの新しい情報メディアとの連携によって成立する機械なども包含することになりました。しかし、技術の生み出す価値を広く社会に還元しようとする多くの人々の善意の活動は、一方で、大量生産、大量消費による資源枯渇や気候変動などの地球規模の困難な問題を生み出すことにもなりました。

 二十一世紀の今を生きる我々にとって、前世紀の単なる延長として人類社会の未来を展望することはできません。そして、科学技術が広大で深遠な社会的影響を有する現代において、技術者の責務もこれまでに増して重いものとなっています。我々は、地球規模で解決すべき環境や資源エネルギー枯渇の問題の深刻化とともに、豊かな生活、福祉、倫理、個人の尊厳などをいかに担保するかについても解決を迫られています。すなわち、新世紀を迎えた人類社会の目標は、肥大化した人間圏を地球と共生し得る持続的なシステムとして再構築すると共に、多様な価値観を有する人々に、健康で快適な生活と安全で安心な社会を保障することです。そして、技術者の使命も、新たな知の創造と活用を通じて、人々のよりよい生き方に貢献することと言えます。

 このような使命を負った機械技術者・研究者の集団である日本機械学会は、機械の意義や役割を広く社会と共に考え、人間と機械の相応しい関係を構築していくことが、我々に課せられた重要な課題であると考えています。また、我が国は科学技術創造立国を標榜し、世界のフロントランナーの一員として国際的な責任を果たすことを目標にしていますが、そのためには技術の中核を担う機械技術をさらに発展させ、新たな価値創造、ものづくりを進める必要があることを社会に訴えていくことも不可欠と考えます。

 以上の背景から、日本機械学会は、機械技術がどのようにして社会や産業の健全な発展に役立てるかを広く社会と共に思考すると共に、機械技術者の果たす役割を浮き彫りにして社会の一層の理解を得るために、関係諸団体のご賛同とご協力を得て、国民的な記念日を設置することにいたしました。その機会に、若年層の理工系離れ、技術離れを回避し、女性を含めた次世代の技術者の育成を支援し、さらに国際的な技術学術交流の促進も図りたいと考えています。

 機械の歴史は遠く古代に遡るとも言われますが、中でも七夕の起源は機械に少なからず関係の深い史実を含んでいます。七夕は、技巧上達を祈念する中国の「乞巧奠」(きっこうでん)に由来し、奈良時代に我が国に伝来しました。「たなばた」の読みは、この日に神に捧げる御衣を「棚機(タナバタ)」という当時の織機で織り上げたことから生じたとされています。このような故事に鑑みて、ここに、七夕の中暦にあたる八月七日を「機械の日」と定め、その日を最終日とする八月一日から七日の一週間を「機械週間」と定めることを宣言します。

二〇〇六年八月七日

社団法人 日本機械学会   
第八十四期会長  笠木 伸英

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