第30期[2023年度]関東支部・支部長挨拶

関東支部の今期の方針

第30期関東支部・支部長 東芝エネルギーシステムズ株式会社 渋川直紀


写真:渋川直紀 支部長  日々湧き出す新技術の情報に溺れ、デジタル・バーチャルの波に流されている感覚があり、技術の軸をどう捉えればよいか、周回遅れ気味の私には想像ができない状態です。チャットGPTが連日紙面のトップを占め、NFI市場も形成されてきました。こうした技術変容は、データ通信や高機能端末の進歩、それを利用したコンテンツビジネスが隆盛するところに、新型コロナ禍におけるオンラインコミュニケーションのニーズが相乗して加速されました。それが目指すゴールは延伸し続けており、予測し難くなっています。
 一方、3月以降のマスク着用の個人判断化、感染法上5類への移行などによって対面行事が徐々に再開し、人出の急速な回復が見られます。この反動は、人々のリアルへの要求を示すものと捉えることができるでしょう。バーチャルとリアルの融合を表すのに用いられるCPS(Cyber Physical System)の意味を調べると、実空間にある多様なデータをネットワーク上に収集し、サイバー空間上で知識化すること、とありますが、私はこれを、最終的にはリアルを進化させるシステムであると解釈することにしています。
 リアルを大切にしたい私の、機械に関する原体験はプラモデルでした。軍艦の喫水線より上を作る縮尺1/700のシリーズを、小遣いやおねだりによってたくさん集めました。ゴジラのような艦橋と、甲板に所狭し並ぶ連装機銃がカッコよかった。次に同様の気持ちになったのは、FJR710ターボファンエンジンのカットモデルを見た時。それで進む学科を決めました。ごちゃごちゃと配管や部品が積み重なった迷宮で、機能など全く分かりませんでしたが、衝撃的なワクワク感が湧きました。こうした体験はおそらく人間の本能に近く、今も昔も変わらないものと信じています。小さい子は乗り物が大好きですし、ロボコン、超絶的改造、重機の番組など、機械を題材にした番組も多く、すごい実物の刺激が人気を集めています。成長に応じて、算数、理科、物理、そして工学を学ぶのは、リアルな機械をいつか手にしたいという潜在願望とつながっていると思います。AIも、その結実のひとつであるバーチャル技術も、より迅速精緻にカッコいい機械を創造するためのツールと捉えたいです。
 最近、機械系研究室が減少しているという心配を伺うことが多くなりました。学生さんの志向が変化し、需給均衡がその方向に動いているそうです。企業の公開情報からも、開発リソースをハードウェア系からソフトウェア系にシフトする傾向が読み取れます。早ければ小学生入学以前からゲームやスマートフォンの多様なアプリに触れ、メディアでは毎日AIビジネスが紹介され、教育の場でもソフトウェアへの注力度が高まる中、それとうまく均衡できるハードウェア=機械を実感する体験材料を用意するのは至難の業ですが、機械学会が愚直に担うべき大切な役割だと思います。関東支部の事業企画とブロック活動、シニア会、学生 会の個々活動は、小中学生、高校生、大学生、地域の人々に向けてそれを実践した素晴らしいものです。個々が魅力的な内容なので、相互連係と分担などによって活動の良さをもっともっと見える形で表し、広く知ってもらい、身近に感じてもらう方法について、会員の皆さんとともに考えていきたいと思います。また、代々積み重ねられてきた支部活動の成果を利活用して、運営の効率化も図りたいと考えておりますので、ご協力賜りますよう、お願い申し上げます。

歴代支部長挨拶