部門長就任にあたって

次期部門長 田中啓介(名古屋大学)

 平成9年4月から部門長を務めさせていただくことになりました。材料力学部門は機械学会のなかでも中心的部門の一つとして活躍しており、現在第4位の登録者数となっております。しかし、最近の登録者数の伸び率は必ずしも高くありません。この登録者数が、部門の財政的基盤ともなるため、その増強が歴代の部門長が掲げる目標の一つでありまして、今年もこれを掲げて努力していきます。そのための中心的方策は、新鮮で魅力と夢のある活動を活発に行うことだと思います。
 戦後50年、わが国の工業、工学が大きな変革期にあり、機械工学や機械学会も例外ではありません。かつて社会インフラの構築期には、鉄鋼を中心とした大型の構造物の設計と健全性保証において材料力学は大きな役割を果たしました。現在でもその役割は変わりませんが、それ以上に機械工学が多様化し、取り扱う対象も大きな拡がりをみせています。そこでの新しい技術の創造や新しい産業の創生において材料力学が何をなすかが部門の課題となっています。
 1971年に横堀武夫先生と平修二先生はミクロとマクロを融合した材料強度学の創始により日本学士院賞を受賞されました。当時の転位論を中心としたミクロ理論を、マクロな構造物の強度解析に応用する手法は新鮮なものでありました。現在、ミクロな解析は分子・原子レベルにダウンサイズしています。一方、マクロな連続体力学は有限要素法を中心とする数値解析により設計のツールになっています。このミクロとマクロの間の108に余る寸法スケールのメゾ領域には、無限の可能性があります。また、研究の対象も多様になっています。従来のマクロ構造物ばかりでなく、電子デバイスで代表されるようなミクロ寸法の構造物にも関心が持たれています。材料・機能・構造を融合した学問体系は未完であり、研究者の自由で大胆な発想が望まれています。新技術と新産業の創生には、産学協同が有力な一つの方法であり、この架け橋としてもM&M部門の活動が大きく貢献するものと期待できます。
 部門の発展のため、白鳥副部門長と共に微力を尽くしますので、皆様のご協力をお願いいたします。


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