Virginia Techでの滞在

足立 忠晴(東京工業大学 工学部)

 私は文部省在外研究員にて、米国のVirginia Polytechnic Institute and State University (Virginia Tech) Department of Engineering Science and MechanicsのMichael Hyer教授の研究室に昨年の11月から今年の6月末まで約8ヶ月間滞在して、主に複合材料の非線形変形の研究を行っておりました。Hyer教授は成形時の残留応力を考慮した座屈を含めた非線形現象の解析および実験を主に精力的に研究を続けておられ、NASAから長期にわたり研究費を得ておられます。極めて基礎的な研究に対してNASAから評価されていることに驚きを感じました。
 Virginia Techはヴァージニア州の南西部のアパラチア山脈のふもとにあるBlacksburgという小さいな町にあり、深夜でさえ散歩できるくらい治安も良く、凶悪犯罪などとは無縁の土地で、町から5分も車で走ればすっかり自然の中にいるところです。いなかということで生活では苦労したこともありましたが、Hyer教授ご夫妻の公私にわたるご助力で、New Yorkなどの都会とは違った米国の生活習慣などが体験でき有意義でした。
 短い滞在期間でしたが米国について感じたことを書きますと、一口に言って米国は「進歩」の国です。コンピューター、航空宇宙技術などの先進的な技術では極めて早い進歩を遂げつつあります。しかし日常生活に関係する電化製品、自動車を始めとする民生品などについては残念ながら日本を含めたアジア諸国の技術力には追いつけない状態であり「退化」しているとしか感じられませんでした。これに対して日本は「伝統」の国です。今までの成果に立脚して新しい技術を生み出しているといえます。これは日本には優れた新技術が開発されず創造性がないということでは決してなく、文化的な背景によるものと考えられます。文化的な特徴を生かし、それぞれの国の適切な役割を果たし、国際的な技術、学術交流をより深めることで、より協力し合うことが必要であると改めて思いました。


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