変えるのが当たり前,新しいことへの挑戦
 
 
第89期部門長
林 眞琴
茨城県企画部
 
  第89期の材料力学部門の部門長に就任しました.部門制が発足してから30年余り経ちましたが,学界以外から就任する初めての部門長ということになります.これまでの学界出身の部門長とは多少異なる運営になるかと思いますが,皆さまどうぞよろしくお願い致します.
  昨年の副部門長就任挨拶でも述べたことですが,企業技術者が材料力学部門登録者に占める割合が55%であるにも拘わらず,部門活動への参加者に占める比率や,論文集A編の論文掲載数に占める比率はいずれも10%以下と低迷しています.これらを打破して,少しでも企業技術者の部門活動への参加比率を上げることが産業界出身である私の役目であると思っています.
  20世紀の日本は「生産技術の革新」で発展してきたとされています.私は生産技術だけでなく,新しい機能を有する製品の開発や,特異な機能を有する材料開発などでも大いに発展に貢献してきたと思っています.それはさておき,21世紀のモノづくりは,より斬新で(従来にないコンセプト),付加価値が高く,個別の性能が飛躍的に高い,単一機能ではなく,非常に多様な多機能な(システム化),従来なかった新しい機能価値を有する製品に変わっていくものと考えられます.つまり,21世紀ではオリジナルの製品を産み出さなければ,世界市場で勝てません.21世紀は「知的創造の世紀」になると言えます.言い方を変えれば,最近とみに言われているように「科学技術創造立国」へと変えて行くことが必要です.そのためには,大学と企業がいわゆる「死の谷」を埋めるための「深化した産学連携」を推進しなければならないと考えます.これを実現するための1つの方策は「シーズとニーズのマッチング」です.M&M2007においてその取組みを試みましたが,その後継続していません.このような活動は継続的に推進すべきと思います.いま1つの方策は「ロードマップの充実と定期的な見直し」です.日本が主導的な製品分野,あるいは,これから大きく発展するであろう製品分野において,製品のロードマップを策定し,その開発に必要な技術のロードマップを産業界が提示すべきであると思います.無論,企業にとっては生命線である製品・技術戦略を全て開示することはできませんが,大まかな技術の方向性を示すことは可能であると思います.学界の方々にはそれを参考に研究テーマを探索していただければと思います.産業界には研究テーマのネタとなる情報がいくらでもあります.自分たちからもっと積極的に産業界と接触してそうした情報を収集する努力もお願いしたいと思います.
  第2技術委員会(将来構想)では,第88期から材料力学部門の活性化という観点から,産学連携を深化させるための方策を検討してきました.その1つが新しい研究会や分科会の立上げです.産業界から技術情報の提供だけでなく,できれば,活動費も提供していただいて,産学で新しい研究課題に取組む活動を広げたいと考えています.その1つとして「マルチフィジクス研究会」を泉聡志東京大学准教授が中心となって立ち上げていただけることになりました.また,藤山一成名城大学教授は材料力学とロボティクスの融合という観点で,ロボティクス部門との連携を探る活動を開始していただいています.このような活動の輪を広げたいと思います.どなたでも提案可能ですので,特に,若手の研究者,技術者の皆様からのご提案をお待ちしたいと思います.
  話は飛びますが,私は研究開発・技術開発において重要なことは,「持続的技術と破壊的技術のバランス」ではないかと思っています.機械工学においていわゆる4力は正しく持続的技術と言えるのではないかと思いますが,材料力学においても,基本的な技術があります.それを継続的に進化,発展させることが必要な分野が持続的技術と考えます.一見地味で,進歩の速度が遅いという面がありますが,そうした技術がなくては技術開発は成り立ちません.一方,研究者,技術者は常に破壊的技術開発を目指す必要があります.学術界や産業界を大きく発展飛躍させるためには,革新的な技術開発が必要です.最近の言い方で言えば「イノベーションの創出」に近いかと思います.過去で言えば,破壊力学,分子動力学,第一原理計算などは破壊的技術であったと思います.そうした技術的に桁違いの飛躍をもたらす全く新しい技術開発にも常に挑戦していただきたいと思います.これは非常に難しい課題であり,そうした意味で持続的技術と破壊的技術のバランスの取れた研究開発をそれぞれの個人が目指すべきであろうと考えます.
  最後に,私の座右の銘(信条)をご紹介します.「積極進取・日々是革新」です.20年ほど前に某社に勤めていたとき,研究室長や部長は自分の信条を明示するようにとの所長の指示があり,ピンク地の少し大きい紙に書き,プラスチックのケースに入れて机の前に掲げさせられました.意味は説明するまでもありませんが,常に新しいことに挑戦するということです.世の中の発展には目覚しいものがあります.毎日何か新しいことを考えて行かなければ取り残されてしまいます.そうしたことがないようにとの戒めです.また,従来技術にしがみ付くことなく,変えることが当たり前という認識に立つべきということです. 変えてみて,上手く行かないなら方向を変える,あるいは,元に戻っても構わないと思います.
  材料力学部門の皆さまそれぞれが積極的に新しいことに挑戦していただければ,それ自身が材料力学部門の活性化,発展に繋がると考えます.新しいことに挑戦することを楽しんでやっていただきたいと思います.


























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