第80期部門長就任にあたって
第80期部門長 藤江正克(早稲田大学)


 このたび,機械学会の中でも極めて高い活性と質を誇るロボティクスメカトロニクス部門(RMD)部門長を務めさせていただくことになりました.これまでのRMD活動をレビューしながら,第80期部門運営に関しての抱負を述べさせていただくことといたします.
 従来,機械工学はいわゆる四大力学と言われる機械力学,材料力学,流体力学,熱力学の基盤工学をベースとして,「モノ」をデザインすることにより機能を提供してきたといえます.近年,電子工学の進展による半導体素子の小型化,高機能化が,情報工学により提供可能となった莫大なソフトウェアを機能として実装可能となり,いわゆる知能機械が多くの場面で利用できるようになってきました.メカトロニクスは機械工学の成果である,機械工学の特徴である構造・運動機能の提供と電子,情報工学の成果である制御機能を統合して,人類の歴史にかつてなかった高機能でフレキシブルな機械システムを提供しているといえるでしょう.また,ロボットはメカトロニクスに加え,人間と機械の運動の共存までも視野に入れ,実世界と相互作用することができる実世界コンピュータとしての多くの可能性と夢を持っています.
 この,可能性と夢ゆえに?現在第3位までの部門登録総数約5600名に対して,ここ数年のロボティクスメカトロニクス講演会(Robomec講演会)には600件以上の発表と1000名以上の参加者を得て,年々発展してきていることは,これまで部門運営に当ってこられた歴代部門長をはじめとする運営委員会各位のご努力,さらには会員各位のおかげ,と感謝する次第です.部門としての残された大きな課題としては,期待されて久しい夢あるロボティクスを日本の未来を担う産業に仕立てるための視点ではないかと常々感じており,本年、部門において重点的に取り組みたいと思っております.
 Robomec講演会は,全セッションポスター講演という特徴を持っており,コアタイムにはポスターを囲んで熱心な討論の場が形成され,通常の講演会では得られない人の交流と情報の交換が活発に置けなわれています.発表内容も,センサ,アクチュエータなど要素からのアプローチから,システムインテグレーション,ソフトウェアシステム,応用システム,さらには,人間,生命,心理学的アプローチまで幅広く,ロボティクス,メカトロニクスに関連する様々な分野をカバーしています.会場内には,機器展示コーナにおける出展各社のデモ,昨年から始まったレスキューに代表されるトピックスや小中学校生徒を対象にしたデモ等とあいまって,熱気渦巻く一大イベントの感があります.
 このように,ロボティクス・メカトロニクスは,あらゆる産業分野の機械・装置の設計に不可欠の技術として成長しつつあり,機械工学の将来の重要分野として,従来の基盤分野に匹敵するだけの役割を果たすものと信じております.このように,Robomec講演会は学術分野と産業を結びつける場として,会員の皆様にご活用いただいており,今後も発展していくものと考えております.
 このような,活気を呈しているRMD部門のもう一つの重要な活動に,ロボットグランプリがあります.ロボットグランプリは,日本機械学会100周年記念行事のひとつとして,機械工学の成果と可能性を,一般の社会にもわかりやすく訴える学会の社会貢献事業として,本部門が全面的に運営を担当してまいりました.テーマは,ロボット競技を通して,特に小中学校生徒にはじまる若年層への,物造りへの興味を持たせることと,ひいては知能化機械工学技術への関心の醸成であったと理解しています.おかげさまで,100周年以降も,毎年多くの参加者を得,昨年は社会的盛り上がりを背景に開かれたロボフェスタの中でも大きく位置付けされるなど,日本機械学会の看板イベントに成長してまいりました.
 以上述べましたように,1988年に日本機械学会ロボティクスメカトロニクス部門が設立されて以来,機械工学の将来を切り拓く部門として会員内外に対する活動を積極的に推し進めてまいりました.21世紀を迎え,機械学会会員に対して,多くの可能性を持つロボティクスメカトロニクス分野に関する情報の提供と,部門登録会員に対する更なる新しい産業を創生する場を提供することで,機械工学の更なる発展に貢献すると共に,関連分野・関連学会への橋渡しをはかっていくのがその使命と考えています.
 本稿を終えるにあたり,部門登録会員の皆様のみならず,機械学会会員の皆様の当部門に対する,ますますのご指導とご鞭撻をお願い申し上げます.

目次にもどる


Copyright(C) 2002 日本機械学会ロボメカ部門

Last Update :  2002/4/15

掲示責任者   : 日本機械学会ロボメカ部門広報委員会