熱工学コンファレンス2013開催報告

熱工学コンファレンス2014開催を終えて

実行委員会委員長 山田 純

はじめに
 2年ほど前だったと思います.飲み仲間の,熱工学部門総務委員会のメンバーから,1行のキャリアメールが届きました.
「2014熱工学コンファレンスどう?」
実にシンプルな依頼に,一瞬,ひるみそうになりましたが,冷静に「いやだ」と一言ご返事したのを覚えています.当時の部門幹事さんには,交渉決裂と心配をかけたようで申し訳ありませんでした.他学会のシンポジウムの実行委員長も頼まれていたので,その調整の必要があって,即答ができなかっただけです.
 お引き受けしてから,もっとも悩んだことは,どんな特徴を出すかです.これまでのコンファレンスを見ていると,開催地の特徴をうまく引き出しています.東京では,開催地の特徴を出すといっても・・・という感じでした.良いアイデアもなかったので,そのことはひとまず置いておいて,まずは,場所と開催日を決定しました.当初は,参加者の皆さまのアクセスを優先して,芝浦キャンパス(山手線田町駅から3分)を候補としましたが,学会の飲み会で,豊洲キャンパスが見てみたい,という意見が多く,変更しました.考えて見れば,最近建ったベイエリアにある都市型キャンパスは,一つの特徴かもしれません.だったら,豊洲開催をベースに組み立てようと.
 芝浦工業大学豊洲キャンパスは,東京ベイエリアの一角,豊洲にあります.新しく開発された地域で,タワーマンションが数年の間に,5棟も6棟も立つような場所です.多数のオフィスビルや商業施設なども建設されて,ちょっとした未来都市のような趣です.その一方で,豊洲のある江東区や,近所の佃には,江戸時代からの下町文化を引き継ぐような食べ物屋さんや,伝統工芸品のお店もたくさん残っています.周囲の運河を行き交い屋形船は,高層建築や人工的に整備された遊歩道と絶妙なコントラストを形成しています.このあたりを全面に押し出して,印象に残るようなコンファレンスを目指すことにしました.

講演論文集の電子版化
 さて,開催にあたってお金の心配がありました.開催にかかる経費は,すべて参加費から賄う必要があります.昨年,参加費を上げたばかりで,これ以上高くするわけにはいきません.随分と悩みましたが,コストのかかる冊子体の講演論文集を取りやめることにしました.いろいろと議論はあると思いますが,部門の了解を得て,冊子体は廃止,電子版のみにすることにしました.これにより,会計的には随分楽になりました.
 他学会の講演会では,冊子体の講演論文集の廃止に伴って,CD-ROMを配るケースが多くなっています.今回は,USBメモリで配布することにしました.これは,最近のノート型PCにCDドライブが備っていないことを考慮したためです.代わりにというわけではありませんが,プログラムブックをCDケースサイズにしました.これまでのCD版講演論文集の横に並べてもらえると幸いです.

カンファレンスバック(図1)
 冊子体の講演論文集を廃止して,プログラムブックをCDケースサイズにすると,コンファレンスバックも小さくて済みます.いろいろと考えたあげく,ここは古い東京でいこうと決めて,巾着を採用することにしました.市販の巾着のままではつまらないので,機械学会のロゴをつけることにしました.ロゴを作ってくれるところ,それを縫い込んでくれるところを探すのに,結構,苦労がありました.
 その他,巾着に合わせて,USBメモリの入れ物にポチ袋にすることは決めていましたが,感じのよいポチ袋は結構高くて手が出ません.研究室の学生に,100円ショップで買った千代紙を折って作ってもらいました.手作り感が出てかえって良かったかな,と思います.「熱」の金太郎飴に関しては,会場での活発な議論には糖分が不可欠ということで入れてみました.思いのほか,漢字がきちんと読めることに驚きました.楽しんでいただけましたでしょうか.

図1 カンファレンスバックとその中身

懇親会と催し物
 懇親会場は,新しい東京です.ベイエリアが見渡せるイタリアンレストランにしました.当初は,屋形船も考えたのですが,さすがに実現は難しく断念しました.少々雨模様でしたが,何とかベイエリアの夜景を楽しんでいただけたのではないでしょうか.
 この懇親会で残念だったことは,食事の量です.レストランとの打合せでは,「皆さんびっくりするくらい食べますよ」と言い続けたのですが,「絶対,大丈夫」との言葉に押し切られました.お店の人の想像を超える食欲・・・部門メンバーの逞しさ感じました.ただ,返す返すも食事の量は無念です.
 懇親会での催しを何にするかも悩みました.東京の伝統芸と言うことで,落語,俗曲なども検討しましたが,私自身が興味のあった3D投影のデモをお願いすることにしました.一般的な奥行きを感じる3Dではなく,回り込むと側面が見られるタイプの3Dです.技術的には,まだまだ,発展途上にありますが,うまくいくと計測などに利用できるのはないでしょうか.システムの開発者は,Y. Aonoさんです.詳しくは,http://polyphonicskies.net/をご覧下さい.ビジネスでやっているわけではなく,技術的な興味からシステムを個人で作られたそうです.この催し物についても,新しい東京を意識しています.コンテンツにアキバ系があったのに気づかれました?

特別公演
 本コンファレンスにおいて,新しい学術面での取り組み,例えば,ワークショップなどの企画はできませんでした.唯一,特別講演を,本学機械工学科の若手教員,山西陽子先生(実行委員の一人です)にお願いした点が新しいと言えるかもしれません.若手にお願いした意図は,最前線で活躍する研究者の純粋な思いを部門メンバーと共有できればと思ったからです. 山西先生は,機械学会では,主にマイクロ・ナノ工学部門で活動されていますが,研究内容的には,熱工学に関係の深いものも含まれています.参加者の皆さまに興味を持っていただけたのではないでしょうか.講師の山西先生が懇親会で引っ張りだこになっていたのが,企画した者としては嬉しく思いました.

講演会そのもの
 コンファレンスそのものは,多くのオーガナイザーの方に協力いただき,大きなトラブルも無く,無事終えることができました.国際会議帰りに,成田から,直接,会場に来られた方もおられました.本当に多くの方に参加いただけたこと,この場を借りてお礼申し上げます.

講演会のデータ
 ・開催日:2014年11月8日(土),9日(日)
 ・会場:芝浦工業大学豊洲キャンパス
 ・発表件数:214
 ・参加者総数:433(内学生数:178)
 ・オーガナイズドセッション数:16
  詳細については,2014熱工学コンファレンスHPをご覧下さい.
  http://www.jsme.or.jp/conference/tedconf14/