熱工学コンファレンス・プレコンファレンスワークショップ開催報告

第91期熱工学部門講習会委員会
委員長 上野一郎(東京理科大学)
幹事 植村 豪(東京工業大学)

 熱工学部門では,去る平成26年11月7日(金)と8日(土)の二日間にわたり,「熱工学コンファレンス・プレコンファレンスワークショップ」を開催いたしました.本ワークショップでは「熱工学」に関する様々な研究分野の最新動向を介するとともに,活発な議論や意見交換の場を提供することで,部門の活性化と発展を目的としております.皆様が落ち着いて懇親を深められるよう全参加者が合宿形式で1泊2日を共に過ごし,本年度は熱工学コンファレンス2014の開催前日(金曜日)から初日(土曜日)にかけて,コンファレンス会場(豊洲)近郊のホテルシーサイド江戸川(葛西臨海公園)において行われました.ベイサイドの自然に囲まれたくつろいだ環境の中で,本年度のワークショップは「地球・環境・熱」をテーマに,次のような3名の講師をお招きいたしました(以下ご発表順).

・熊谷 一郎 氏(明星大学):「実験室のプルームが語るマントル内部の熱物質輸送」

・柳澤 孝寿 氏(海洋研究開発機構):「地球の大規模な活動と熱の流れマントルとコアを中心に」

・山田 朋人 氏(北海道大学):「全球水循環と極端現象」

 近年,益々重要となっている地球環境問題を熱工学の観点から捉えることを目指し,大気や海洋,地殻を対象とした,地球上で生じている大規模な熱問題に関する話題提供をしていただきました.
 最初のご講演は,明星大学の熊谷一郎氏から,地球内部のマントルの対流に関するご講演をいただきました.マントル中でのプリュームの形成に関する大変美しいモデル実験をご紹介いただきながら,火山の分布やその変化との比較などをしていただきました.マントルの対流については参加者の大半が初心者でしたが,実地調査の写真や経験談を織り交ぜながら分かり易く解説していただいたおかげで,本ワークショップの緊張感をほぐしていただけました.
 続いて,海洋研究開発機構の柳澤孝寿氏に,コア部の対流,そして磁場反転に関するご講演をいただきました.数十万年単位での磁場反転を,磁性流体対流場の反転に関するシンプルなモデルを用いた数値シミュレーションでの議論をご紹介いただき,その可能性と反転の瞬時性などについてご説明いただきました.地球という巨大なスケールでありながら,磁場の反転が容易に生じ得る事実は衝撃的でした.
 最後のご講演は北海道大学の山田朋人氏より,地球上の水循環に関するご講演をいただきました.地球規模での水循環を精度よく予測するためには,灌漑やダム,農耕など人間の活動を反映することが非常に重要であることなどを最新の精密な計測データをもとにご紹介いただきました.農業や工業を通じた人間の水利用が,地球上の水収支のバランスに著しい影響を与えていることはとても意外でした.
 最近は熱工学分野においてマイクロ・ナノスケールへの展開が数多くみられますが,今回は時間・空間スケールが共に極めて大きい対象で,いずれも新鮮な驚きを伴う内容でした.それぞれの講演後の質疑では,参加者から多数の質問が上がっており,講師の先生方の丁寧なご講演のおかげもあり,とても理解しやすく,また興味を持って聞くことができた結果だと思われます. 運営側の発表時間の設定がタイトだったこともあり,講師の皆様方には駆け足でのご講演をお願いすることとなってしまい,申し訳ありませんでした. 講演会の後は立食形式の夕食を取り,参加者の相互の懇親を深めていただきました.参加者同士の交流を深めるだけでなく,今回は講師の先生方にもご参加いただけたため,ご講演の中で質問しきれなかった点について,参加者との間で非常に活発な議論もなされていました.夕食後は会場を移し,和室のくつろいだ雰囲気の中で技術交流会を開催しました.ご講演に関する内容に限らず,今後の熱工学に関する課題など,幅広い話題についての意見交換が行われました.翌朝から熱工学コンファレンスに参加する参加者も居ましたが,時間が経つのも忘れて活発な交流がなされていました.
 最後に,今回のプレコンファレンスワークショップでは,ご講演を頂いた3 名の講師の先生方をはじめ,中部主敬先生(熱工学部門長),保浦知也先生(部門幹事),横森剛先生(前部門幹事),大通千晴様(日本機械学会熱工学部門担当),そしてご参加を頂いた皆様より,多大なご支援とご協力をいただき,大変有意義なイベントとして盛会のうちに終えることができました.至らない点も多々あったかと思いますが,この場をお借りして,ご参加いただいた20名の皆様に心より感謝申し上げます.また,次期講習会委員会を主体として,既に来年度のワークショップの準備も進められており,ぜひともこれまでご参加いただいた皆様に加えて,新たなご参加をお待ちしております.熱工学部門のさらなる発展に向けて,今後とも引き続き皆様のご協力を賜りたくお願い申し上げ,当ワークショップの開催報告とさせて頂きます.

熊谷先生 柳澤先生
山田先生 集合写真

プレコンファレンス会場の様子