日本機械学会 技術賞・優秀製品賞 受賞記念
縦型X線装置用リフローシュミレーター
優秀製品賞
企業情報はこちら株式会社アンベエスエムティ* 1

1. 製品の概要
リフローはんだ付時にボイド,ブリッジ,不ぬれ,ソルダーボール等,多種類のはんだ付不良が起こりうる.そこで,プリント基板のリフローはんだ付中の溶融はんだの動きを常時X線で観察できれば,不良の発生状況が分り,改善につながる.時間の経過と共に移動する現象も観察され,本装置の有益性が明らかとなった.
 また,本X線リフローシュミレーター内部に小型密閉型真空リフロー炉を設置することで,真空リフロー中のはんだの動きを観察する事も可能となった.

  X線画像

2. 開発上の課題
 本装置の開発は以下の技術的課題を克服することで製品化を実現した.
①リフローはんだ付装置にX線が透過しにくい金属材料等を使用したのでは,溶融はんだとこの金属部が重なり溶融はんだのみを検出できない.そこで,X線がほぼ貫通 する材料でX線装置用リフロー炉を開発した.その結果,基板及び溶融はんだの動きを明瞭に観察できるようになった.
②X線拡大率を大きくするため,可能な限り薄い加熱ユニットを開発する必要があり,研究開発の結果,最小厚さ約30mmを達成した.本薄型加熱炉のX線観察エリアは約100mm角と広い視野を達成した.
③300℃程度までの均一加熱(約80mm角程度)を実現した.

3. 装置構成
X線装置用リフロー炉と制御装置から成る.

4. 特長
①様々なX線装置に着脱可能.
②明瞭・高倍率で撮影可能.
③当社の高速応答熱電対(先端厚み約40μm極薄熱電対)を観察したい箇所の近くに設置することで,設定したプロファイルに近い温度曲線を取得できる.熱電対は6本装着可能で6個所の温度を測定できる.
④温度プロファイル屈曲点を最大16ポイントまで設定可能.
⑤シンプルな構造で,性能の割に安価である.
⑥真空はんだ付中のX線観察を実現した.
⑦X線装置の映像と温度変化を同一画面で観察,録画できる.

観察中画面

5. 販売実績
 2010年から販売を開始した.最近の超高密度実装化により最近販売件数及び引きあいが増えている.
 リフロー中のX線装置での観察の需要が増えているため,同業他社も数社あるが,当社の薄型で高倍率・着脱が可能なタイプは他になく,このタイプのシェアは100%と言える.

6. まとめ
 超高密度はんだ付実装技術の向上に必須となりつつあると思われる.本装置を使って,はんだ付中の溶融はんだの動きを観察することで,はんだ中の不良のメカニズムを把握することができ,製造の歩留まりが上がり,製造の効率改善・製品の精度向上につながる.
 特に,最近はBGAやCSPさらには基板上に基板を実装するケースも多く,はんだ付箇所が外側からでは目視観察できず,かつ超微細な実装も出現,超高密度実装化がますます進んでおり,本装置の有用性が明確となった.

* 1 特別員,〒226-0024 横浜市緑区西八朔町149-18
エンジン熱効率向上のための新規冷却損失低減技術の開発
技術
トヨタ自動車株式会社 株式会社豊田中央研究所

1. 概 要
 エンジンの各種損失の中でも冷却損失の割合は大きく,燃焼室の断熱によりこれを低減する試みは数多くなされてきたが,高温となる断熱壁が吸入空気を加熱し,出力や排気を悪化させるという背反を克服できず長年の課題であった.これに対し,燃焼室の壁温をガス温度に追従させることで,遮熱と性能への背反防止を両立する遮熱手法(図1:スイング遮熱壁,サイクル中の燃焼室壁温度がガス温度の変化に追従して急速に上昇・下降する現象を「壁温スイング」と呼ぶ)を構築した.この遮熱材への要求性能である低熱伝導率・低体積比熱の遮熱膜を開発し,エンジンの燃焼室壁面に形成することで冷却損失を低減,熱効率の向上を実現した.

  図1 壁温スイングコンセプト

2.技術の内容
 燃焼ガスから燃焼室壁面への冷却損失はガス温度と燃焼室壁温度の差によって発生する.壁温スイング遮熱法は,燃焼室壁温をガス温度に追従させることでこの温度差を縮小し,冷却損失の低減と吸入空気加熱防止の両立を狙っている.燃焼室壁面に形成する遮熱膜の熱伝導率と体積比熱を小さくする(熱を伝えず,温まりやすく冷めやすい)ほど大きなスイング幅が得られ(図2),冷却損失の低減効果は高くなる.
 この要求熱物性を達成するため,外部から遮断された空隙を含む多孔質セラミックスに着目し,実現手段としてアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を適用した.電解液中でアルミニウム合金に電荷をかけ酸化させると,中央に孔の空いた柱状のアルミナがアルミニウム表面から垂直方向に成長し皮膜が形成される.従来の皮膜よりも膜内部の空隙の量を増やし,かつ熱および応力への耐久性を高めるために皮膜にシリカを充填した,シリカ強化多孔質陽極酸化皮膜(Silica Reinforced Porous Anodized aluminum:略称SiRPA)を新たに開発した(図3).

図2 熱物性とスイング幅の例 図3 SiRPA 皮膜の模式

 SiRPA皮膜をピストン表面に形成し,その表面温度が狙いどおり燃焼時のみ上昇し吸気行程では降下(スイング)することを,非接触かつ高応答で温度測定が可能なレーザ誘起燐光法のエンジン燃焼状態での適用により実証した(図4).
 SiRPA皮膜を形成したピストンは,通常のアルミピストンに対し冷却損失が低減し,正味仕事(熱効率)と排気損失が増加(排気後処理触媒の暖機・保温に貢献)するというエンジン性能上の効果(図5)を,排気・性能の背反なしに実現できることを確認した.

図4 表面温度の比較 図5 エネルギーバランス比較

3. まとめ
 壁温スイング遮熱技術は,エンジン燃焼・材料開発・計測・生産技術の緊密な連携によって,新たなエンジン熱マネージメント技術として実現することができた.本技術は'15に量産開始した新型ディーゼルエンジンにて世界で初めて実用化され,お客様に優れた燃費性能をご提供している.

*1 正員,トヨタ自動車㈱ エンジン先行設計部(〒410-1193 裾野市御宿1200番地)
*2 正員,トヨタ自動車㈱ 無機材料技術部(〒471-8572 豊田市トヨタ町1番地)
*3 正員,トヨタ自動車㈱ エンジン設計部(〒471-8572 豊田市トヨタ町1番地)
*4 正員,㈱豊田中央研究所 機械1 部(〒480-1192 長久手市横道41番地-1)
*5 正員,㈱豊田中央研究所 材料・プロセス1部(〒480-1192 長久手市横道41番地-1)
微細レーザ加工機の開発
技術
企業情報はこちら三菱重工工作機械株式会社 

1. 概 要
 レーザ加工は,被加工材に対して適切な光源を選択することにより,金属材料だけでなく脆性材料などの非金属材料にも幅広く適応可能なことから,様々な分野で応用が試みられている.特に近年,高精度で高品位な微細穴加工ニーズの高まりから,従来のレーザ穴あけ加工では材料への熱影響が大きく穴径精度や加工面性状など品質を満たすことができなかったが,ピコ秒などの短パルスレーザを用いることで,アブレーション(Ablation:蒸発,昇華)加工により高精度で高品位な加工が可能となっている.
 そこで,当社では従来培ってきたレーザ光学系の技術と,工作機械メーカーとしての精密駆動,精密位置決めの技術を融合した微細レーザ加工機「ABLASER」を開発し,熱影響が少なく高品位な微細穴加工を実現した.(図1)

  図1 微細レーザ加工機「ABLASER」の外観

2. 技術の内容
 各種レーザ加工方法の概略を図2,図3に示す.パーカッション加工はレーザビームを移動,回転させず同一の場所で パルスレーザを照射する加工方法である(図2).現在微細穴加工の方法として採用されているが,レンズによる集光で生じる拡がりが転写されるため切断面がテーパー形状になってしまう.一方,ヘリカルドリリング加工は,レーザビームを任意の穴径に調整し高速に回転させながらパルスレーザを照射し加工する(図3).当社ではヘリカルドリリング方式を採用している.

 独自開発したレーザ光学系は工作機械用精密軸受を擁したスピンドル構造を採用し,レーザービームの軌道を精密に制御できる上に,スピンドルに取り付けた光学部品の位相制御により,レーザービームの照射位置と角度を調整可能なシステムとしている.

 図4にSUS420(t0.3mm)の板材にφ0.12mmの穴加工事例を示す.平滑な加工内面であり鋭利なエッジ部となっていることから,アブレーションにより熱影響が少ない穴加工であることがわかる.図5 にシリコンウェーハ(t0.5mm)にφ0.15mmの穴加工事例を示す.SUS420と同様に脆性材料であるシリコンに対しても,熱影響の少ない加工ができた.

 SCM420焼入れ材(t0.8mm)に最小部φ0.1mmのストレート穴,逆テーパー穴,鼓穴に加工した断面のSEM観察写真と粗さ測定結果を図6に示す.ビームの入射角を制御することにより,任意のテーパー形状に加工が可能であり,その加工面粗さはいずれもRa0.1μm以下である.ストレート穴,逆テーパー穴には異物の付着が見られるが,加工後に付着したものであり洗浄方法等を工夫することで鼓穴(形状)加工では付着物のない平滑な加工面を達成した.

図7は,異形状加工のSEM観察写真を示す.穴あけ加工だけでなく,任意の形状に切断可能で,その切断面に熱影響は少ない.

図2 パーカッション加工方法 図3 ヘリカルドリリング
加工方法
図4 SUS420 微細穴加工 図5 シリコンウェハ
微細穴加工
図6 各種穴形状加工事例

3. まとめ
 本微細レーザ加工機開発の結果,加工困難とされていた高精度で高品位な微細穴加工を実現した.今後も多岐にわたる産業分野における超精密加工の更なる微細化,高品質化要求に対し最適なソリューションを提供できるよう,技術開発を推進する.

図7 異形穴形状加工事例
*1 正員,三菱重工工作機械㈱ 先端生産システム開発センター(〒520-3080栗東市六地蔵130番地)
*2 三菱重工工作機械㈱ 先端生産システム開発センター(〒520-3080 栗東市六地蔵130番地)
900MVA級水素間接冷却タービン発電機の開発と製品化
技術
企業情報はこちら三菱電機株式会社 

1. 概 要
 地球温暖化と世界的な電力需要増加を背景にタービン発電機の高効率化と大出力化が求められている.ところが,単機出力の増加要求に対応するため,水冷却コイルを採用すると水循環装置等の付帯設備が追加で必要となり,輸送性や設置性,保守性が損なわれる点が問題となっていた.
 本製品は,コイルの冷却に必要な付帯設備を簡略化できる水素間接冷却方式を採用し,主絶縁,軸流ファン,冷却風路等に最先端技術を適用することで冷却性能を高め,水冷却方式に迫る大出力化とコンパクト化を両立させた.水素間接冷却タービン発電機として世界最大(2014年12月8日時点,三菱電機調べ)900MVA級の出力を可能とする新型機の開発を完了,870MVAの実機検証機を製作,2014年11月に検証試験を完了した.発電機効率は世界最高レベルの99%以上を達成した.本製品はVP-Xシリーズ機として200~900MVA級にラインナップ化し,2015年4月より販売を開始した.

2. 技術の内容
 水素間接冷却方式のタービン発電機では,発電時に機内各部で生じた熱を機内に密封した水素ガスにより冷却を行う(図1).固定子コイルの導体部を主絶縁を介して間接的に冷却するため,導体部を水素ガスや純水で直接冷却する方式と比較して大出力化が難しい.一方で冷却風路が比較的シンプルで水素冷却ガスの循環に必要なファン差圧が比較的小さく,導体内に冷却媒体を通さないことから導体断面積を有効利用でき,高効率なタービン発電機とすることができる.そこで,発電効率の高い発電用大型ガスタービンの全出力領域に,高効率な水素間接冷却タービン発電機を適用できるよう900MVA級の大出力化技術開発を行った.
 大電流・高電圧を発生する固定子コイルの導体部は,先に示したように導体周囲の主絶縁を介して水素ガスによって冷却される(図2).複数に重ねたマイカ層と熱硬化性樹脂を主材料として構成される固定子コイルの主絶縁は,熱伝導率が低く導体で発生した熱を通しにくいが,製作プロセスを改善することで主絶縁材の熱伝導率を向上させた.
 回転子コイルでは,導体内に設けた通風路に水素ガスを通して導体部を直接冷却する.通風路の各部において圧力損失の低減および冷却性能の向上を目的に形状の適正化を行った.一例として,入口形状の適正化により当該部の圧力損失が従来形状と比較して約60%低減することをCFD解析および部分モデル風洞試験で確認した.

図1 水素間接冷却タービン発電機断面図
図2 固定子コイル冷却方式

 さらに,機内の水素ガスは,回転子軸の両端に取り付けられた軸流ファンによって循環される.新開発の軸流ファンは翼形状およびファン入口の吸い込み風路構造を適正化し,ファン効率を従来品と比較して約10ポイント改善した.
 これら新技術を実機に組み込み,900MVA級を実証できる検証機を製作し検証試験(図3)を実施した.発電機特性や各部温度は設計値とよく一致し,発電機効率は世界最高レベルの99%以上を達成した.

  図3 高効率タービン発電機 870MVA 検証機

3. まとめ
 水素間接冷却タービン発電機について,大出力・高効率・小型化を可能とする技術開発を行い,これら新技術を組み入れた検証機により,その性能を確認した.水素間接冷却タービン発電機としては世界最大出力(900MVA級)を実証し,効率99%を達成したことにより,従来水冷却で対応していた出力域を一部水素間接冷却で置き換える(図4)ことができる.これにより大出力域においても高効率で保守面に優れたタービン発電機の提供を可能とした.

  図4 タービン発電機ラインナップ(2 極タイプ)
*1 正員, 三菱電機㈱ (〒652-8555 神戸市兵庫区和田崎町1-1-2)
*2 正員, 三菱電機㈱ (〒661-8661 尼崎市塚口本町8-1-1)
*3 三菱電機㈱ (〒652-8555 神戸市兵庫区和田崎町1-1-2)
レーザー円形走査溶接法「LSW」を用いた車体骨格開発
技術
トヨタ自動車株式会社 

1. はじめに
 安全性,信頼性,骨格剛性など車両性能の基盤を成している車体骨格の接合は,スポット溶接がその大部分を占めるが,分流により溶接ピッチを短くすることができないため,接合点数には限界があり十分に骨格部材の強度・剛性を引き出すことが困難である.そこで,スポット溶接に代わる溶接技術として開発をしたレーザースクリューウェルディング(以下,LSW)は,レーザー溶接の大きな課題であった板隙裕度を克服した.LSWにより短ピッチ溶接が可能となるだけでなく,片側からアクセスできることで接合配置の自由度が向上するため,LSWを活用し車両性能を高めた車体骨格の開発に取り組んだ.

2. 技術の概要
 レーザースクリューウェルディング(LSW)は,円形にレーザーを走査し,溶接条件の工夫によって溶融した鉄をうまく撹拌することで亜鉛の金属蒸気を逃がしながら溶接を行い,板隙の有無に関わらず安定した溶接品質が得られる.(図1)
 これにより車体骨格に広く適用でき,従来のレーザー溶接と比較して主体的に車両性能へ寄与することができる.以下に主な利点を示す.

①短ピッチ接合による衝突安全性能向上
 キャビンの変形量低減と軽量化を両立するため,車体骨格へは超ハイテン材の採用が拡大してきているが,超ハイテン材は,接合部が骨格部材より先に破断し,本来の軽量化効果を発揮できない例がある.そこで,衝突負荷等で高負荷なフランジ部に対して,従来のスポット溶接では実現できない短ピッチでLSWを集中的に配置し,接合1点あたりの負荷を低減させ車両性能に必要な接合強度を確保した.

②片側アクセスによる溶接を利用した骨格構造の刷新  従来のスポット溶接は,溶接部を溶接ガンで挟み込む必要があったため,生産上の都合により接合できない場合や,溶接ガンをアクセスするための作業穴を空ける場合があり構造としては不利な点があったが,LSWでは図3に示すような閉じ断面骨格へLSWを配置することで生産性を損なうことなく連続な骨格構造を実現した.

③高速での接合による生産性の向上  LSWの溶接時間は1打点当り0.3秒~0.8秒とスポット溶接と比較して高速であるため,スポット溶接をLSWに代替させることで溶接工程を約40%短縮することが可能となる.(図4)

図1 板隙変化による溶接品質の比較
図2 車体骨格への超ハイテン材の採用部位
図3 閉じ断面骨格へのLSW 適用例

3. まとめ
 LSWは,従来のレーザー溶接を量産化する上で課題となる板隙裕度を解決できる世界初の溶接技術である.今後も適用車種の拡大とさらなる車両性能向上,軽量化などを実現する車体骨格の開発を積極的に推進していく計画である.

図4 溶接工程の比較
*1 正員,トヨタ自動車㈱(〒471-8571 豊田市トヨタ町1番地)
*2 トヨタ自動車㈱(〒471-8573 豊田市元町1番地)
*3 トヨタ自動車㈱(〒471-8571 豊田市トヨタ町1番地)