日本機械学会 技術賞・優秀製品賞 受賞記念
アモルファスモータ 一体型 オイルフリースクロール圧縮機の開発と製品化
技術
株式会社日立産機システム

1. 概 要
 産業界におけるモータ動力の電力使用量は,全電力使用量の75%を占めモータの省エネルギー化は世界的課題である. モータの高効率化には低損失な材料の活用が有効であり,そのような材料として鉄基アモルファス金属が知られている(図1).しかし,硬くて脆いという機械的特性によりモータへの適用は困難であった.また,希土類を用いたネオジム磁石を用いることもモータの高効率化には有効であるが,資源調達リスクがあった.本開発では鉄基アモルファス金属とレアアースを用いないフェライト磁石を用いたモータ設計とものづくりに挑戦し,世界で初めてIEC規格最高効率クラスIE5のアモルファスモータを実現した.一方,工場内駆動源として使用される空気圧縮機は,高効率・小型・軽量化のニーズが高い.上記の薄型で高効率なアモルファスモータとオイルフリースクロール圧縮機構を一体化する構造工夫と筐体内熱流れの最適化などにより,従来機比-63%の大幅な小型化を達成するスクロール型空気圧縮機を開発し,2017年3月より販売を開始した.

図1 電磁鋼板とアモルファスの得失比較

図2 アモルファスの短冊積層コア製法と構造

2.技術の内容
 ロータの磁石にフェライト磁石,ステータの鉄心にアモルファス金属を利用するアキシャルギャップ型アモルファスモータを開発し,高効率化(≧IE5)と省資源化(レアアース未使用),薄型化(従来比40%減)を実現した.また,このモータの高効率,薄型の特長を活かしたモータ組込み構造のスクロール型空気圧縮機を開発した.従来のスクロール型空気圧縮機はベルト駆動でモータと圧縮機構が分離した構造であったものを,薄型モータを圧縮機構と一体構造とすることにより圧縮機本体の小型化37%を実現した.

(1)アモルファス金属を鉄心に利用する鉄心構造,製法
 アモルファス金属の,薄く硬く脆く,加工による特性劣化が著しいという課題を解決する,「短冊積層鉄心構造,製法」を考案し,単純形状のアモルファス金属箔を鉄心とする鉄心構造(図2)とその量産技術を確立した

(2)薄型アキシャルギャップ構造モータ技術
 アキシャルギャップモータは,ロータ径を大きくできるため,ラジアルギャップモータよりもギャップ面積(トルク発生に寄与するロータとステータが対抗する部分の面積)を3倍程度に大きく採る事ができる(図3).このため,磁力が1/3程度のフェライト磁石で構成可能である.モータ効率は,IE5以上となる96.2%を達成した(図4).

(3)モータ一体型オイルフリースクロール圧縮機設計技術
 それぞれが発熱体である圧縮機構部とモータ部を一体実装するための熱設計技術を構築し,体積を63%削減したアモルファスモータ一体型のオイルフリースクロール圧縮機を開発した(図5).

図3 薄型アキシャルギャップモータ構造

図4 開発モータの効率

図5 アモルファスモータ一体型
オイルフリースクロール圧縮機

3. まとめ
 アモルファス金属,フェライト磁石を使用した薄型で高効率なアモルファスモータを圧縮機構部と一体化して大幅な小型・省エネを実現するスクロール型空気圧縮機を'17年3月に製品化した.本製品は,CO2やエネルギー消費削減でSDGsの実現に貢献できる.


*1正員, ㈱日立産機システム 研究開発センタ(〒101-0022 東京都千代田区神 田練塀町3番地AKSビル)
*2 ㈱日立製作所 研究開発グループ 制御イノベーションセンタ モータシステム 研究部(〒319-1292 日立市大みか町7-1-1)
*3 ㈱日立産機システム 事業統括本部 空圧システム事業部(〒424-0926 静岡 市清水区村松390番地)
*4 ㈱日立産機システム 事業統括本部空圧システム事業部 相模事業所(〒252-1121 綾瀬市小園1116)
*5 ㈱日立産機システム 事業統括本部 ドライブシステム事業部(〒275-8611 千葉県習志野市東習志野7-1-1)
長尺シャフト用横型真円度測定機
優秀製品賞
株式会社三鷹精工

1.製品概要
 本製品は長尺シャフトの任意の位置での真円度測定を可能とした横型真円度測定機である.図1で示すように真円度測定機の基幹部である静圧空気軸受を横置きに配置し,その空気軸受に貫通孔を設けた.この貫通孔に長尺シャフトを通し,空気軸受に対向して配置したワークチャックで長尺シャフトを固定する.このワークチャックはワーク芯出し用のYZテーブル上に取り付けられており,ワークの芯出はこのYZテーブルを調整して行なう.また,空気軸受側には変位センサーが取り付けられており,空気軸受の回転に伴いセンサーが長尺シャフトの周りを回転して測定する.従来は,テーブル(シャフト側)が回転するが,本機では,センサー側が回転する.測定機両端に支持台を設置することにより,最大10mまでの長尺シャフトの任意の位置での真円度測定が可能である(図2).

図1 長尺シャフト用横型真円度測定機構造図 図2 長尺シャフト用横型真円度測定機写真


2.開発の背景
 当社はプリンターシャフトの様な短尺シャフトの真円度測定用に従来のテーブル回転型の真円度測定機のターンテーブル部(空気軸受部)に貫通孔を設けた特殊真円度測定機の製作実績があった(図3).  
 しかし長尺シャフト(2m以上)の測定は,従来の測定機では測定不可能である.その理由としてシャフトをターンテーブル部に固定した場合,図4で示すように振れ回りが発生する.またコラムの高さに制限があり任意の位置でのセンシングが不可能である.精密研削磨棒メーカーにおいて,製品(長尺シャフト)の真円度を測定する場合,良品と思われる製品を切断して一般的なテーブル回転型真円度測定機で測定していた.そのため切断による工数の無駄,切断後の品物の破棄処分,客先納入品での測定は不可能であること等,多くの問題点があった.そこで磨棒メーカーからのニーズもあり上記問題点を解決した本製品を開発し,製造,販売を行なった.即ち,製品を切断せずにそのまま測定できる測定機である.また,もし精度面で不良となった場合でも,現状寸法より小径寸法の製品に再仕上げすることが可能でありリサイクル面でも大いに有効である.

図3 従来型測定機構造図 図4 シャフトト振れ回り


3.技術の内容
①大口径の静圧空気軸受の開発
 太径の長尺シャフトを測定可能とする場合,長尺シャフトを貫通させるための静圧空気軸受の貫通孔径も太くなる.それに伴い軸受外径も太くなり必要加工精度も厳しくなり,測定機の価格も高額化する.それを避けるため軸受外径寸法を従来品と同程度に抑え,従来品と同等の剛性と回転精度を持った静圧空気軸受を開発した.
②変位センサー(差動トランス)の姿勢差と測定精度の維持  
 本測定機は検出器回転型のため検出器が図5に示すように360度回転する.そのため姿勢の影響(重力)を受け安定的に高精度測定が困難となる.測定子バネ圧や先端部のガタ調整により測定誤差の少なくなるようにした.
③回転する変位センサーの測定信号(アナログ信号)をノイズレスで固定側へ伝達
 小径の場合はスリップリングを介して伝達すれば良いが,大径となるとスリップリングも高額となる.そこで回転側(変位センサー側)にA/D変換を搭載したマイコンを置き,デジタルデータに変換された位相毎の測定データを無線で固定側へ伝達するマイコン基板を開発した.

図5 センサー姿勢差



4.販売実績
 大手精密磨棒メーカーの国内外の工場で使用されている.この様な横型真円度測定機は,2018年3月時点で,他社では確認されていない.

5.まとめ
 「中小ものづくり高度化法」では,加工工程数の削減や廃棄物の削減による環境負荷への配慮と記載されている.本測定機はこの指針に合致している.今後更に効率化・無駄の排除が求められる中,更なる技術開発と顧客のニーズ対応で低炭素化社会へ向けて貢献して行きたい.


* 特別員,〒196-0021 東京都昭島市武蔵野3-2-32
内歯車新加工法の開発
技術
三菱重工工作機械株式会社

1. 概 要
 近年,内歯車の加工法として,約100年前に考案されたスカイビングが注目されている.スカイビングは内歯車を精度良く,高能率に加工することができるが,工具寿命が短いという課題を解決できず,これまでほとんど実用化されてこなかった.
 スカイビングは歯車形状の工具を用い,粗加工から仕上げ加工まで同じ切刃で加工を行う.これに対し,新加工法では粗加工と仕上げ加工の切刃を分けた新工具を用い,工具の長寿命化を図った.また,新工具の切削シミュレーションを開発し,最小限の試加工で,工具寿命,加工精度を満足する工具諸元と加工条件の設計を可能にすると共に,新工具の利点を活かせる加工機を開発した.その結果,従来のスカイビングと同等の生産性と加工精度を確保しつつ5倍以上という圧倒的な工具寿命を実現した.

図1 スカイビング加工

図2 新加工法の工具(スーパースカイビングカッタ)

2.技術の内容
 スカイビングは,図1に示すように工具を傾けた状態で工具とワークを同期回転させ,工具を上下に3~6回程度,切込み深さを変えながら移動させることで加工を行う.工具はピニオンカッタと呼ばれ,1つの内歯車歯溝に対して1つの切刃しか作用しない.
 新加工法の加工動作は従来のスカイビングと同じであるが,図2に示す新工具を適用している.新工具は,1つの内歯車歯溝に対して粗,中,仕上げの3つの切刃が作用するようになっており,切刃を増やすことで工具の長寿命化を図っている.新加工法では,スカイビングに比べ,工具形状が複雑かつ多数の切刃が作用するため,最適な工具諸元と加工条件をシミュレーションできるソフトを開発した.図3に本ソフトによる工具寿命予測の一例を示す.この例では形状の異なる7つ切刃について,摩耗部が黒色で示されている.
 図4に乗用車用変速機の加工の一例を示す.従来のスカイビングの寿命200個に対し,1200個と6倍の寿命を達成した.

3. まとめ
 内歯車を高精度かつ高能率に加工する新加工法を開発したことで工具寿命の課題を克服し,実用化を可能とした.今後,更なる工具コスト低減を目指し,新工具に最適な工具材料, コーティングについて技術開発を推進する.

図3 切削シミュレーション(工具摩耗予測)

図4 乗用車用変速機の内歯車加工事例


*1 正員,三菱重工工作機械㈱(〒520-3080 栗東市六地蔵130)
*2 三菱重工機械システム㈱(〒652-8585 神戸市兵庫区和田崎町1-1-1)
*3 三菱重工工作機械㈱(〒520-3080 栗東市六地蔵130)
*4 三菱重工業㈱ 総合研究所(〒652-8585 兵庫県高砂市荒井町新浜2-1-1)