2013年度

NEDO受託事業

日本機械学会連続講座
「法と経済で読み解く技術のリスクと安全」
〜社会はあなたの新技術を受け入れるか〜



日本機械学会
会 員 各 位


                                        一般社団法人日本機械学会


平素は本会活動にご理解,ご協力いただき,誠に有難うございます. さて,本会では,東日本大震災に対する調査・提言・検討活動を通じまして,我々が作り出してきた技術に関連してリスクが存在することと,それを社会に説明 し議論することが重要であることを再確認し,学会としてリスクと安全の議論に積極的・重点的に取り組んで行く所存でございます.
今回,その一環として,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のご支援をいただき,日本機械学会連続講座「法 と経済で読み解く技術のリスクと安全〜社会はあなたの新技術を受け入れるか〜」を実施することにいたしました.
本会を挙げて取り組むため,イノベーションセンター内に日本機械学会連続講座「法と経済で読み解く技術のリスクと安全」実行委員会 (委員長 近藤惠嗣)を立ち上げ,法工学専門会議の協力のもとに,今期,8回の連続講座を開催することにいたしました.
多くの技術者,研究者にとって,社会と技術の接点を考えるに当たり,大変重要な観点を提供する講座になると存じますので,技術と社会 の関わりに関心をお持ちの方々に奮ってご参加いただきたく,ご案内させていただきます.

なお,本講座は,日本機械学会が,(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託を受け,人材育成事業として実施しますので,受講 料は無料とし,毎月1回程度の開催間隔で実施し,出席率の高い受講者には,修了証書を付与することとします.開催概要と第5回の講座 内容と第6回のテーマは,以下の通りでありますので,皆様,奮ってお申込み頂けますようお願い申し上げます.

------------- (最終更新日:2013年11月27日) -------------
日本機械学会連続講座(NEDO共催)
「法と経済で読み解く技術のリスクと安全 〜社会はあなたの新技術を受け入れるか〜」

U R L: http://www.jsme.or.jp/InnovationCenter/nedoproj-lt/
企 画: 日本機械学会イノベーションセンター
会 場: 日本機械学会 会議室(東京都新宿区信濃町35 信濃町煉瓦館5階)

開催趣旨:
福島第一原子力発電所の事故は技術の安全性に対する人々の信頼を失わせた.しかし,技術なしに現代社会は成り立たない.また,介護ロボッ トのような新技術は私たちの生活の質を向上させることが期待される.一方で,技術にはリスクがつきまとう.介護ロボットの誤作動で被介護 者が死傷することもあり得る.社会に利益をもたらすとともに,リスクを内包する技術はどのような条件の下で社会に受け入れられるのだろう か.リスクが現実化したとき,技術者の責任は問われるのだろうか.今,新技術の開発に従事する技術者の胸に去来するこのような疑問に,現 在の法制度のみならず,法と経済学,正義論なども視野に入れて,体系的に答えようという野心的な試みからこの講座は生まれた.技術のリス クと安全に関心のあるすべての技術者に是非聴講していただきたい.

参加費: 無料
新規申込方法:「日本機械学会連続講座参加申し込み」と題記のうえ,(1)氏名,(2)会員・会員外(会員の場合会員資格・会員番号),(3)学校 又は勤務先,(4)連絡先(電話番号,e-mailアドレス)を明記の上,下記申込先までE-mail又はFAXにてお申し込みください.なお,一度申し込 みを受付し登録をされた方は,それ以降の講座に継続的に出席出来ますので,毎回申し込みをする必要はありません.
問合せ・申込先: 日本機械学会事業企画グループ 担当 荒木 弘尊/電話(03)5360-3506/FAX(03)5360-3508/E-mail:nedoproj-lt@jsme.or.jp


第6回: 安全とCSR
開催日:2013年12月20日(金)17.30〜19.30

第6回講師 田村 直義 ((株)インターリスク総研 コンサルティング 第一部 CSR・法務第一グループ グループ長)

講演要旨:
安全に関する様々な事件事故が後を絶たない.安全確保は,さまざまなステークホルダーが企業に求める最重要の経営課題のひとつであるにもかかわらず,現状認識を誤り,経営資源の投入を怠ったために,過去の事件事故の教訓が活かされていないことが主な原因ともいえる.
個別具体的な法令や強制規格・基準を遵守するだけでは,しかるべき安全レベルを確保することはできない.法令・規格は社会的コンセンサスを得て明文化されるものであり,新技術の後追いとならざるをえない.安全に関する技術基準もあらゆるリスクに有効とはいえず,安全に関する性能基準を適切に定めて実現する,リスクアセスメントと各種対策により,社会的に許容可能なリスクまで低減させる,などの方策が必要不可欠である.企業においてこれらを実現する上では,個別の対策のみならず,社会的責任を踏まえた安全管理態勢を構築・整備・運用することが重要である.
このため,ISO26000(社会的責任に関する手引)に基づき,安全に関する考え方を整理すると同時に,ISO10377(消費者製品安全−供給者のためのガイドライン),ISO10393(消費者製品リコール−供給者のためのガイドライン),IEC61508(電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全),リスクアセスメントハンドブック実務編(経済産業省),製品安全に関する事業者ハンドブック(経済産業省)などを参照しつつ,安全管理態勢のあるべき姿について解説する.
また,経営者・技術者に期待される役割について,役員の善管注意義務・技術者倫理の観点から説明すると同時に,予防原則の理解・リコールの判断等に関するトピックスについて,企業の社会的責任の観点から考察する.
企業が安全管理態勢を整備する上で自主的な取組を促進し,企業とさまざまなステークホルダーの損失を最小化するための一助となれば幸いである.

―第7回テーマ予告―
第7回: リスク・コミュニケーションと社会心理学
開催日: 2014年1月17日(金)17.30〜19.30

第7回講師 土田 昭司 (関西大学 社会安全研究科・社会安全学部 教授)

講演要旨:
科学技術は言うまでも無く数学的論理にもとづいている.法や経済もまた,少なくとも古典的な考え方においては,数学的論理にもとづく発想を基盤としている.しかしながら,私たち人間の認知や判断は数学的論理とは別の論理にもとづいている.このことは,心理学者でありノーベル経済学賞受賞者であるカーネマンらあるいは同じくノーベル経済学賞受賞者であるサイモンが経営行動や経済行動における人間の認知・判断の法則性として明らかにしてきた.そして,リスク心理学者スロビックにはじまるリスク認知・リスク意思決定研究においては,カーネマンらやサイモンが指摘する人間の認知・判断の法則性などを,リスク認知・判断に適用した研究がなされてきている.
たとえば,私たちは危険事象の発生確率を個人の経験の強さによって判断している.すなわち,日頃よく経験すること(あるいは,経験していると思い込んでいること)は高い確率で発生するはずであり,日頃ほとんど経験していないこと(あるいは,経験していないと思い込んでいること)は発生するはずがないと判断しているのである.この人間の判断メカニズムは,日常生活の大抵の場面においては,瞬時に低コストで満足解が得られることから有効に機能する.これをカーネマンらはヒューリスティックとして概念化した.しかしながら,新たな技術の社会的導入のような日常生活にはそれまでにはなかった場面などにおいては,経験による発生確率判断などのヒューリスティックは新技術がよりどころとする数学的論理とは相容れず矛盾することとなりやすい.そのようなときには,新技術は社会から受け容れ難くなるのである.
本講演では,人間の認知・判断の特性について概説した上で,リスク・コミュニケーションのあり方について述べる.

―第8回テーマ予告―
第8回: 規制権者としての国の責任
開催日: 2014年2月21日(金)17.30〜19.30

第8回講師 桑原 勇進 (上智大学 法学部 地球環境法学科 教授)

講演要旨:
技術の利用には便益が当然あるが,リスクも伴う.そのリスクが顕在化して損害発生にいたることは,可能な限り防止すべきであるが,技術の発展や利用を不当に阻害することも避けるべきである.この間のバランスをとることが必要である.その際,新技術の利用には,知識の不確実性が伴うことが稀でない.どのような場合にどのような好ましくない結果(損害)が生じるのか不明確な場合にどうすべきかということも問題となる.
さて,技術に対する規制は,基本権の制約となるため,憲法上の限界がある.根拠があまりに不明確なまま規制をすれば違憲となる可能性があるし,必要以上の規制することも問題である.他方で,損害発生の防止という観点からは,なるべく強い規制が,しかも不確実な場合であっても規制をすることが要請されよう.
ところで,国が技術の利用に伴う損害の発生を防止する目的で(広い意味での)規制をする場合,その規制の態様には,トライ・アンド・エラーの容認(損害発生の現実を待って初めて対応を始める)から禁止という極めて厳しい対応までいろいろある.また,知識の不確実性にも程度の相違があろう.リスクが誰に降りかかるのかも状況によって異なる(技術の利用により便益を受ける人にリスクが同時に生じるのか,それとも,技術の利用による便益を享受する立場にない人が一方的にリスクだけを受けるのか).国が規制権者としてどのような場合責任を負うべきか,規制の態様,不確実性の程度,リスクと便益の関係などの事情を踏まえながら,検討したい.そもそも,技術を開発したわけでも利用するわけでもない国がなぜ責任を負うのかという根本的な問題についても,併せて考えてみたい.

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開催日程は次の通り構成されます.

第1回 2013年 6月21日(金) 17.30-19.30 開催 講師 倉田 健児 氏
「社会による新技術の受容と文理融合の必要性」


第2回 2013年 7月19日(金) 17.30-19.30 開催 講師 近藤 惠嗣 氏
「法律は技術の安全に寄与しているのか」


第3回 2013年 9月20日(金) 17.30-19.30 開催 講師 真野 敦史 氏
「ロボットに係る社会制度の現状と課題」


第4回 2013年10月18日(金) 17.30-19.30 開催 講師 岸本 充生 氏
「技術安全のための経済学的思考:インセンティブとガバナンスの視点」


第5回 2013年11月15日(金) 17.30-19.30 開催 講師 中西 準子 氏
「安全と自己決定」


第6回 2013年12月20日(金) 17.30-19.30 開催 講師 田村 直義 氏
「安全とCSR」


第7回 2014年 1月17日(金) 17.30-19.30 開催 講師 土田 昭司 氏
「リスク・コミュニケーションと社会心理学」


第8回 2014年 2月21日(金) 17.30-19.30 開催 講師 桑原 勇進 氏
「規制権者としての国の責任」

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