一般社団法人日本機械学会
イノベーションセンター 研究協力事業委員会所属分科会

RC252


 
1. 分科会名称

 『低炭素社会実現に資する高効率ディーゼル機関の燃焼の最適化および高度化に関する研究分科会

2. 主査名  飯田訓正 (慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科
3. 設置期間  2011年4月〜2013年3月(2年間)
4. 活動目的・内容

 低炭素社会実現の要求が高まる中,ディーゼル機関は,年々強化される排出ガス規制に対応しつつ,今後一層の燃費向上と高出力化が求められる。
 その要求に応えるためのディーゼル機関の燃焼技術として,熱効率向上と窒素酸化物および排出微粒子の低減のために高過給や高EGRが行われ,熱損失の低減のために低温燃焼の導入も検討されている。また,ディーゼル燃焼は,従来の拡散的燃焼を主体とするものから,HCCI燃焼,PCCI燃焼で代表されるいわゆる予混合的燃焼に基づく種々の燃焼法が導入され,また,DPF,SCR等の排出ガス後処理装置を機能させるための燃焼制御が必要とされている。このような背景から,運転範囲において複数の燃焼法が展開され,その燃焼条件が広範囲にわたる。特に高過給および高EGR率の環境下での高圧噴射が燃焼過程に及ぼす効果の解明と制御は,重要な検討項目と言える。
 本研究は,係る背景から多岐に渡るディーゼル燃焼の統一的理解を得ることにより,高効率燃焼の最適化を実現する制御手法について検討を進めるものである。以上の観点から,本分科会では,下記の項目について研究を実施する。
 1)着火・燃焼の反応過程の解明
 2)燃焼室形状を考慮した噴霧および混合気形成・燃焼過程の理解と制御
 3)大気汚染物質の生成・排出過程の解明と制御
 4)燃料性状の多様化と適合可能性の検討および新燃料の活用技術
 熱効率,動力性能,環境性能,いずれも高水準を要求されるディーゼル機関においては,前述のように高過給,高EGR,低温燃焼等の技術が導入されており,厳しい条件下での燃焼制御が必要となる。また,エンジンの運転条件,エンジンの用途や使用燃料,あるいは排気後処理技術によっても,最適となる燃焼方式の組み合わせが多岐に渡ることとなり,このような燃焼技術の多様化もこれからのディーゼルエンジンの技術的特徴と考えられる。
 本研究分科会では,近年の技術トレンドである高過給・高EGR率の環境下での燃焼過程の解明に取り組むとともに,ディーゼル燃焼技術の高度化および最適化の基盤となる燃焼現象の理解および燃焼制御法を熟成することを主目的としており,その成果により実用機関の開発における燃焼系設計のよりどころとなる知識をレベルアップすることが期待できる。

(上期/第1年目)
 上記の目的のために,研究内容を下記のような項目に分類して研究を進める。第一年目は,個別の項目について研究を実施しながら,それぞれの成果を統合してゆく作業を行う。
 1)着火・燃焼の反応過程の解明
 ・着火・燃焼現象における物理・化学過程の理解と相互作用の解明
  均一系着火・燃焼の化学過程を明らかにした上で,時間・空間的に変動する不均一濃度・温度場における化学過程の解明に関する研究を行う。
 ・希薄・希釈混合気における化学反応過程の解明
  希薄混合気や不活性ガスにより希釈された混合気の着火遅れ,温度上昇速度,未燃成分の生成などについて研究する。
 2)燃焼室形状を考慮した噴霧および混合気形成・燃焼過程の理解と制御
 ・不均一性を制御する混合気形成法の検討
  燃料噴射,シリンダ内流動,吸気流れの条件と混合気不均一性との関係解明,ならびに大小規模の混合気濃度・温度・組成の不均一を制御するのに必要な手法の検討を行う。
 ・不均一性と着火・燃焼の関係解明と制御
  混合気濃度・温度の不均一度(濃度・温度変動の大きさ,空間・時間スケール)が着火と熱発生の過程に及ぼす影響の把握と,不均一度の選択による着火時期,燃焼の急激さ,燃焼の完結性の制御方針とその限界について検討を行う。
 3)大気汚染物質の生成・排出過程の解明と制御
 ・過酷な雰囲気条件での不均一燃焼におけるNOx,PM,HC,CO生成・消滅過程の解明と制御
  広い混合気不均一度の範囲,ならびに低酸素濃度・低温など過酷な条件における環境影響物質の生成 ・消滅過程の解明と,生成量,排出量抑制のための燃焼制御法の検討を行う。・排気後処理装置による排気の改善に関する研究
  様々な運転条件に応じた排気後処理装置の制御,性能評価に関する研究を行う。
 4) 燃料性状の多様化と適合可能性の検討および新燃料の活用技術
 ・新燃料の可能性,燃料種・燃料性状の多様化の可能性に関する検討
  新規燃料製造・改質方法とそれによる燃料の組成・性状の変化についての検討,ならびにそれに対する燃焼技術の対応についての検討を行う。
 ・燃料の評価と設計
  各種燃焼方式における燃料の評価,ならびに望ましい燃料の探求を行う。
 ・燃料の活用
  各種燃料の特性を活かした新規な燃焼法に関する研究を行う。
 
(下期/第2年目)
 上期の研究テーマを継続・深度化して,得られた成果を集約する。エンジンシステムの高効率・低エミッション燃焼法の理解と解明およびその実用システム実現のための技術指針を提示する。
 いずれの年度においても,中間ならびに年度末報告会を開催して研究報告を行うとともに,企業・研究者委員相互の意見交換を行う。また,研究の方向性を確認し,項目間の連携と成果の集約を図るため,外部研究者による講演会や,共通テーマによる討論会を実施する。また,研究者・企業委員から委員を選任して運営委員会を構成し,分科会の運営・活動方針を定める。

5. 期待される研究成果 
6. 参加負担金  50万円(年間)
7. 問合せ先


 飯田訓正 慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科
  (主査)  TEL: 045-566-1723, FAX: 045-560-3232, e-mail: iida@sd.keio.ac.jp
        住所: 〒223-8522 横浜市港北区日吉3-14-1


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