部門長挨拶アーカイブ

2021年度部門長挨拶

西田 正浩
第99期部門長 西田 正浩
(産業技術総合研究所)

このたび,バイオエンジニアリング部門長を仰せつかりました.

1987年に当部門が発足してから34年が経ちましたが,発足3年目に開催された第1回バイオエンジニアリング学術講演会(現:バイオフロンティア講演会)に,前部門長の片岡先生とともに初登壇して以来,常に当部門にお世話になってきました.当部門は,バイオメカニカルエンジニアリング,バイオメディカルエンジニアリングおよびバイオテクノロジーを研究分野の三本柱として,医学・生物学と機械工学の融合分野における多様な研究者や技術者に貴重な交流の場を提供しています.2021年4月時点での部門登録者数は第1位から第3位登録者までで1,870名であり,日本機械学会内では中・大規模部門に分類されます.ここ10年ほど登録者数が減少することがないのは,ひとえに当部門の皆様の熱意とこれまでのさまざまな取り組みの賜物です.私が皆様と交流させていただき,楽しく仕事ができる環境を得,多くのプロフェッショナルな刺激を受けられることは,幸運なことだと思っています.今期,運営委員会等の方々,そして皆様とともに魅力ある部門を目指して,微力ながら貢献できればと考えています.

現在,新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより,社会全体がその脅威に晒されています.医療におけるその克服は喫緊の課題であり,診断や治療に関わる医薬品や医療機器の迅速な研究開発と実用化が必要な状況は依然として続いています.当部門の中にも,その対応に追われている方々がいらっしゃるのではないでしょうか.コロナ禍以前は,治療薬やワクチンなどの医薬品,PCR検査機器,人工呼吸器およびECMOなどの医療機器に対する知識は,医師や専門家しか持ち合わせておりませんでしたが,感染症への恐怖でまたたく間に世間に知れわたることとなり,注目が集まっています.バイオメディカルエンジニアリング分野だけではないと思いますが,診断や治療に携わっている医療現場の先生方に,直接的・間接的に,安全・安心な医療技術の提供やその後押しをすることが今後も必要になっていくと思います.

学会の意義は,互いに切磋琢磨して研究や技術に磨きをかけることであり,連携や協力により成果を拡大することです.当部門の強みは,機械工学をベースとして磨きぬかれてきた学術研究レベルの高さです.その高さゆえに挑戦的で新しい研究や技術を生み出したり,国際会議の開催による交流や医学系学会とのコラボレーションなどを実現したりすることができており,当部門は発展し続けていると感じています.医工連携を含むさまざまな連携において重要なことは,われわれ工学者は,工学側からの正しい知見を常に発信し,医学等の相手側ひいては市民に信頼されることです.そのためには,専門的な知見を深め論理力や分析力,はたまた設計力を強めることが必要です.一方,日本機械学会は,分野の壁を越えた活動の活性化を求めており,当部門でも分野連携企画が年次大会等で実施されますが,この際にも同様であり,異分野の研究に刺激を受けながらも正しい専門的な知見をもって交流することが重要です.

当部門におけるすべての分野において,そのプラットフォームを形作り,その中でトップランナーを輩出し,さらには次世代の芽が育つように研究者や技術者を励まし,より良い研究ができるように皆様のお力をお借りしながらお手伝いしていきたいと考えています.これから一年よろしくお願いします.

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