J S M E 談 話 室

ようこそ、JSME談話室 「き・か・い」 へ



JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。
会長を含めて3人程度が交代で一年間を通して執筆します。


No.18 『日本機械学会会員の女性比率』

日本機械学会第81期 会長
田中重穗(長崎総合科学大学 理事長)

 
 

 改正男女雇用機会均等法が1999年4月に又男女共同参画社会基本法が1999年6月に施行された。しかし見たところ女性の雇用および共同参画は、それほど急には進んでいない様に思える。先日、平成15年9月17日付の日本経済新聞に 奥村茂三郎記者のパリからの記事として「経済協力開発機構(OECD)は16日、加盟 30ヶ国の教育に関する統計をまとめた2003年版"図表で見る教育"を公表した。」とあり「その中の1つのデータとして、加盟国全体では2001年の大学の学部卒業者のうち女性が55%と初めて男性を上回ったが、日本は加盟国中最低の39%で"際立って低い"との不名誉な評価を得た。」とあった。更に「大学院以上のレベルで女性の占める割合が日本は修士25%、博士課程の修了者23%といずれも加盟国の最低を記録。」とあった。
 又「OECDの平均は修士も51%と女性優位で博士課程の女性も38%と日本を大きく上回った。」ともあった。
 ところで、日本機械学会の会員に占める女性比率は平成15年2月時点で、1.4%弱であり、これまた極めて低いと言わざるを得ない。しかし、機械工学、機械技術、機械産業の成果を享受する側での女性比率はどうかと言えば、統計をきちんととった訳ではないが50%近いものが殆どではないかと思われる。新幹線の乗客、旅客機の乗客、電気・ガスの利用者等々いずれも女性の方が多いとさえ思われる。
 しかし、機械工学、機械技術、機械産業を発展させる、言わば成果を生み出す側の女性比率が非常に低いと言うのが現状である。これは何かおかしい。このままでは、機械工学、機械技術、機械産業の成果に偏りが出ないか、成果の魅力作りに偏りが出て他国に大きく遅れをとることにならないかと心配をしている。例えば、これから築く社会の大きな特徴のひとつである"環境と調和の取れた資源、エネルギー、物流、生活システムによる持続可能な循環型社会"があるがこのようなパラダイムシフトが必要な時に価値観のゆがみが出てくるのではないかと心配している。しかし、これは見方を変えれば機械工学、機械技術、機械産業の成果を生み出す側の女性比率を高める余地が十分にある分、変革の可能性が他に比べて十分にあると言うことでもあり、必ずしも悲観材料だけではない。適正な変革をすることにより、成果を生み出す側の、もう1段も2段もの質的な飛躍が期待されることとなり、わが国の機械工学、機械技術、機械産業の新たなる展望が開かれるのではないかと思ってみたいところでもある。
 このように考えてくると、日本機械学会の会員数に占める女性比率は、現状の1.4%弱から今後5年以内ぐらいに1桁上の10~15%程度に増やす努力が必要と考えている。これは中々大変な数値目標ではあるが、大学の機械系の学科の女子学生比率を増すことから地道に取り組まねばならないであろう。これについては先のOECD発表の事実が日本国内で重視され先ず教育の場から女子学生比率増大の改革が進められることを期待したい。これと併せて現在、日本機械学会で進めている各種資格認定事業に男女差別のない、むしろ過渡期として女性重視の事業を意識的に行ってはどうかと個人的には考えている。
 いずれにせよ、わが国は少子化の時代及び世界に例を見ない高齢化の次代を迎えて女性の活躍の場の拡大は極めて重大な問題であり、特に機械工学、機械技術、機械産業の領域での取り組みが遅れているのではないかと心配である。

<バックナンバー>


Home

Last Update 2003.11.17

ホームページへのご意見・ご希望は wwwadmin@jsme.or.jp へお願い致します。
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, The Japan Society of Mechanical Engineers.