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本会理事が交代で一年間を通して執筆します。


No.34 「建学の精神」に思う

日本機械学会第83期副会長
深野 徹(久留米工業大学)


 旧国立大学の法人化の是非がさかんに議論されていた頃のある日、私が前に所属していた大学で、法人化についての講演会が開催された.私は国立大学が一律に且つ一度に法人化されるというプロセスに疑問をもっていたので、その辺りをどのような理由付けをして説明されるだろうかと思って、講演会に参加した。しかしその話では期待した内容には触れられず、主として法人化後の大学の有り様がどのように変わるのかについて説明があったが、その内容には驚くようなものはなかった。私は、そのような変化であれば今のままでもできるのではないか、と思った。もちろんこのように大学が外部の作用で変革するのではなく、自らが変わる努力を怠っていたということは、率直に反省する必要があろうと深く反省した.
 私が「一律に・一度に」ということに強い疑念をもったのは、その必要性に何のフィロソフィーも感じられなかったからである.そもそも、日本全体にバランス良く7つの大学が設立されていること、その後多くの国公立大学が設立されていること、に対する現状認識と分析があるべきであった、少なくとも議論すべきであった、と当時思っていた.その講演会で、ただ一人私だけがこのことについて質問したが、なるほどと思う説明はなく、質問に対しては関係のないようなことが長々と話された.
 その後、今度は法人化を審議されている中央の大学関係者の同様な講演会があった。このときは法人化後の姿がもっと具体的に語られた。しかし法人化後にはこれだけ素晴らしくなりますよ、ということは少しも感じられなかった。私と同じように感じた方が他にもおられたようで、その方は「現在と比較して法人化後最も良くなることは何ですか」と質問された。その答えは「予算が年度を越して使えるようになることです」であった。これには唖然とした。私の無知かも知れないが、その関連部分だけでも法律を改正した方が簡単ではないのか.なぜそれが「一律に・一度に法人化」という大変革の発想に結びつくのか、と法人化に対する疑念が深まる一方であった.
 その頃どうしても理解できなかったもう一つのことは、私立大学は、明確な「建学の精神」があって設立されている.これに対して国立大学に「建学の精神」というのはあるのか、ということであった。少なくとも私が国立大学に在学し、さらに職を得た後も、このようなことを考えたこともなかったし、聞くことも無かったので、うかつにも国立大学には「建学の精神」あるいはそのスローガンは無いものと思い込み、このような大学が私立大学化しても、その存在理由はあるのか、とその説明に真剣に悩んだものである。
 私は法人化前に定年を向かえ、これらのことはすべて忘れていた。
 今の大学に移って、毎日を慌ただしく過ごしていた今年の7月7日、日本高等教育評価機構(この7月7日に正式に評価機構として認可された)の「大学評価セミナー」が開催された。この案内は「国公私立大学所属機関長」宛に出されているので、法人化された旧国立大学も対象であることは間違いない.私も大学の命によって参加したが、このセミナーでの最後の要約的説明では、各大学の評価報告書はその大学の「建学の精神」に沿って、いかに活動しているかが、明確に読みとれるように作成されるべきであることが強調された。これに対して「建学の精神」が決められていない旧国立大学はどのように対応されるだろうかと、余計な危惧が浮かんでくる。
 このセミナーの参加から思いもかけず、忘れていたことを思い出し、コラム欄の記事とした.

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Last Update 20057.22

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