一昨年の金融経済危機以来、日本の製造業を取り巻く環境は大きく変化し、明るさの見えない状況が続いています。我が国の製造業が得意としてきた高品質でリーズナブルな価格の商品をタイムリーに提供する製造技術は世界をリードしてきましたが、激化する国際競争の中で、それだけでは優位を保つことは困難となっています。一方で、市場の国際化に伴い、ユーザの心を掴んだ魅力的な商品は、あっという間に世界市場で優位な地位を占めるなど、市場の変化は従来にないスピードで進んでいます。このような時代において、新たな価値を持った商品を生み出すことは今までになく重要となっています。

 言うまでもなく新しい価値をもった製品を生み出すためには、商品企画から設計に至る製造上流工程が肝要です。製品設計の上流において、旧弊を打破し、新たな価値を生むための工夫が求められていると言えます。設計工学、システム工学の学術領域は、このような時代の要請に答え、これら問題解決の方向性を示す重要な役割を担っていると考えられます。

  今回、設計工学・システム部門講演会は第20回という記念すべき節目を迎えます。これを機会に、今までの設計工学・システム分野の研究を再検討し、新たな価値創造のため、製造業の推進役となるべき分野として飛躍する、絶好の機会と考えております。そこで本講演会は「新しい価値創造のためのデザイン」と題し、幅広い知識と情報をシステム的に統合する設計工学分野に関し、多面的かつ喫緊の課題解決を議論するまたとない機会を用意します。多くの皆様にご参加いただき、最新の研究成果の発表とそれに基づく活発な討論をしていだだきますようお待ち申し上げます。