No.23(2003年5月28日発行)
日本機械学会 設計工学・システム部門 業績賞を受賞して
菊池 昇(ミシガン大学)
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部門業績賞を頂き、非常に光栄に思います。設計工学に計算科学・工学を融合することが出来たら双方の分野が大きく発展するに違いないと思いながら、均質化法と言う複合材の力学とその数学理論を設計工学に持ち込むことを模索して来ました。均質化法やそれに準じる構造物などの形を創造する手法が構造物のトポロジー最適化手法として、多くの研究者やソフト開発技術者たちによって研究開発され、現在では広く現場の設計者にも使って頂けるようにも成っています。設計工学は、一般的な設計理論の研究者、その工学理論を具体化するソフトの開発技術者、そして応用を目的とする設計技術者の緊密な連携が必要とされる分野ですが、こうした連携無しにはトポロジーの最適化手法は成立し得なかったと思います。この場を借りて、関係各位の皆様に厚く御礼申し上げます。設計は単に構造物や機械だけに留まらず、材料から感性に至るまでの広い分野です。こうした世界に数学的な手法を持ち込むことで設計工学手法の一般化がなされ、異分野へ進出が可能になればと思いながら、均質化法による設計法を寸法の大きいものから小さいものへ、熱力学特性などの機械的なものから電磁場特性などの電気・化学的な特性までをも含む複合的な機能設計へ拡張を試みています。また、こうした手法と対極に位置する初等力学や物理・化学原理を用いて、簡便に複合的な機能を設計するコンピュータ手法としてFOA法を提唱し、自動車の車体構造物設計を見直す作業も試みております。こうした活動が、日本の「ものつくり」に少しでも役立つことになればと願っております。


日本機械学会 設計工学・システム部門 業績賞を受賞して
三浦 宏一(NASA Ames 研究所)
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 昨年秋、機械学会の設計工学システム部門から、業績賞のお知らせをいただきましたが、11月の学会での授賞式には出席できず、直接お礼を申し上げることができませんでした。この受賞は最適設計という概念がようやく多少なりとも、機械設計に役に立つ可能性が日本でも認められ始めた結果、このような業績賞という形になったと、長年その発展に関わってきたグループの一員として、非常に喜ばしく思っております。
 計算機を活用しての最適設計技術は、まだまだ人間の創造性とは次元の違うところにあって、常に戦力になるという域には、到達していないと思います。それでも、過去20年ほどの進歩を振り返ると、研究開発に真剣に取り組む人が続く限り、設計に必要不可欠なツールに発展していく可能性は秘められていると考えております。CAD は設計情報処理に革命をもたらしました。 では、CAE がどんな形で工学設計に真の貢献をするようにできるのでしょうか。これは、まだかなり根本的に改良が重ねられておそらく現在とは、かなり違った形になっていくかも知れず、創造性を生かして貢献できる分野が拡がっているのではないかとも思えます。優れたもの造りへの貢献は、生産性を高め、ひいては社会を豊かにすることに直接役立つことになりますから、意欲的な若い方々に、研究、開発の対象として誇りをもって取り組んでいただきたいと願っています。


日本機械学会 設計工学・システム部門 業績賞を受賞して
Larry Leifer (Stanford University)
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I am honored to receive the "Design and Systems Achievement Award" from the Design and Systems Division of JSME. It was a pleasure to be with the Division in person to shake hands with Chairman Masataka Yoshimura. This award is especially important to me in three regards: 1) it is the first such award given to a foreigner; 2) it is an award that recognizes contributions to engineering design education and the importance of rigorous scholarship in the pursuit of learning improvements for our students; and 3) it is received in parallel with the fundamental design engineering work of Dr. Koichi Ohtomi, Toshiba Corporation. He and Toshiba have been long-standing research and education partners with the Stanford University Center for Design Research. I would also like to acknowledge Professor Shuichi Fukuda's sponsorship of the JSPS Fellowship that has most recently allowed me to meet with colleagues across Japan.


日本機械学会 設計工学・システム部門 功績賞を受賞して
大富 浩一(東芝)
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この度、部門功績賞をいただき、大変光栄に感じております。 副部門長、部門長としての4年間の活動が多少なりとも評価いただいたものと理解しております。『ものつくり』を考えた場合、材料力学、流体力学、熱力学、機械力学といった分野は要素技術であり、これらが重要なのは当然のことでありますが、これらだけでは『ものつくり』が成り立たないのも事実です。設計工学、システム工学は上記の力学を横串することにより、『ものつくり』の観点から解を提示する重要な工学であります。設計工学の発展にはその性格上、大学と企業との連携、相互補完が必須と考えます。優れたSeedsと本質を見極めたNeedsとの融合以外に設計工学を深める道は無いと信じています。しかしながら、日本では企業サイドの閉鎖性がこの方向に水を差していることは否めません。昨今の不景気はこれにさらに拍車をかけています。多くの設計工学の手法は日本の製造現場に端を発しているものが少なくありません。ただ、これら手法が海外で注目浴び、かつ、効果を挙げているのは嬉しくもあり、残念なことです。今回の受賞を機に、学会という立場を活かし、大学(研究)、ベンダ(ツール)、製造業(ユーザ)の3者のより密接な交流を目的とした『設計研究会』(http://www.jsme.or.jp/dsd/dsd-sekkei/top_frame.html)を始めました。設計工学の発展と日本型製品開発環境の提案が三位一体となって提案できればと 考えております。


第12回設計工学・システム部門講演会 解析コンテスト 優秀研究表彰を受賞して
「パーソナルプリポストプロセッサーGiD」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.151-153.)
川岡 拓司(デジタルソリューション)
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 この度は、思いがけず設計工学・システム部門解析コンテストにおいて優秀賞をいただき、誠に光栄に存じます。近年の急速なハード性能の向上によって、特定の技術者が使用しているCAEが、近い将来ワープロなどと同様に個人使用にまで普及するものと期待しております。今回発表いたしましたGiDはCAEの革新的な普及を願って開発されたパーソナルプリポストです。個人購入可能な低価格で大規模フリーメッシャ、あらゆる分野のソルバーに対応できる柔軟性および豊富なポスト機能をご評価いただいたものと一同喜んでおります。
 すでに、多くのソルバーのプリポストとしてOEM販売されていますが、今後は各種標準インターフェースの開発と日本語マニュアルの整備に注力していく所存です。
 GiDはOSを選ばずあらゆる分野で活用できる汎用性を持っております。試用版は節点制限がありますが、サイトから無料でダウンロードできますので、多くの技術者にご評価いただき、適用範囲と可能性を広げて行きたいと望んでおります。


第12回設計工学・システム部門講演会 解析コンテスト 優秀研究表彰を受賞して
「流体〜構造連成解析手法のタイヤ解析への応用」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.169-171.)
瀬田 英介(ブリヂストン)
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 この度は、設計工学・システム部門講演会解析コンテストにおいて優秀研究表彰を頂き、大変光栄に思っております。紹介させて頂いた内容は、数値解析によるタイヤと路面の相互作用の解析です。路面の中でもウェット路面や雪路は特に相互作用が複雑で扱いが難しいのですが、最近ではこれらの路面上でもタイヤ性能評価のCAE化が必須になってきています。このCAE化を支える基盤技術として、タイヤと路面の相互作用を流体/構造連成解析を用いて予測する検討を行なってきました。ウェット路面では動水圧でタイヤが浮き上がるハイドロプレーニング現象を解析し、雪路ではタイヤの駆動力を解析しました。現在、ハイドロプレーニング解析はF1のウェットパターン開発に、雪上性能解析は冬用タイヤ開発に活用されるなど、数値解析はタイヤ開発において重要な役割を担うようになってきています。今後も性能評価の更なるCAE化、適用範囲の拡大を行ない、タイヤ開発の高度化・効率化を行なっていきたいと考えています。 今回、解析コンテストという場で研究内容を発表する機会を頂いたばかりでなく、多くの方々に興味を持って頂き,このような賞を受賞できたことは今後の大きな励みになります。最後に、研究内容を発表する機会を頂いた日本機械学会設計工学・システム部門の方々に、改めて厚く御礼を申し上げます。


第12回設計工学・システム部門講演会 設計コンテスト 優秀研究表彰を受賞して
「人工衛星用ヒートパイプのロバスト熱性能・質量最適化設計(応答曲面法とモンテカルロ法を組み合わせたロバスト最適化設計手法)」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.194-197.)
小林 孝(三菱電機),野村 武秀,神藤 正樹,矢尾 彰,大串 哲朗,後藤 明広

 このたびは,第12回設計工学・システム部門講演会での第1回設計コンテストにて優秀研究表彰を頂き、光栄に存じます。
 今回の発表内容は、人工衛星用ラジエータ内に埋設されているヒートパイプ間を接合するフランジフィン形状について、接着層厚みの製造ばらつきやヒートパイプ内のアンモニア熱物性の環境変化を発生確率から考慮し、総合最適設計した事例です。当社ヒートパイプは現在国内外の衛星80機以上で採用された実績・シェアがありますが、本最適形状を採用した次世代製品では従来比10%強の軽量化・高付加価値化を実現しています。なお、今回提案した応答曲面法とモンテカルロ法を組み合わせたロバスト最適設計手法は対象製品・分野を選ばず、各種用途に応用展開が可能です。
 近年、メーカの設計現場にも3次元CAD、CAEや高速計算機が当たり前のように普及し、設計インフラの高度化が進んでいます。しかし、真に高付加価値な製品開発に役立てるには、個々の成熟手法・戦術ツールをいかに戦略的フレームワークとして活用できるかが鍵であり、本部門活動の目指す領域横断的な枠組み作り・システム思考がますます重要と感じています。今後、企業サイドからも本部門活動へ積極参加させて頂き、21世紀の日本型新設計パラダイムの創出に微力ながら貢献していけたらと思っております。
 最後になりましたが,本セッションを御紹介頂いた大富座長をはじめ、本講演会の運営に御尽力された関係各位に深く感謝申し上げます。


第12回設計工学・システム部門講演会 優秀発表表彰を受賞して
「インターネット/マルチメディア技術を用いた単品鋳物製品設計支援システムの構築」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.145-148.)
綿貫 啓一(埼玉大学)
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この度,第12回設計工学・システム部門講演会におきまして,優秀発表表彰を頂き誠に光栄に思っております.
本発表では,製品を設計する際に必要となる設計および製造に関する知識を必要な時に効率よく習得できるようにするため,マルチメディアやXMLなどの技術を用い,インターネット・ベースでインタラクティブな設計支援システムを提案するとともに,単品鋳物製品設計を適用事例として紹介させて頂きました.日本の製造業において,高付加価値製品を継続的に設計および製造するためには,いままでに長年にわたって培われてきた技術・技能を伝承することは重要であり,さらにはそれらの技術・技能を基にした新たな知識創出が必要となってきており,このようなシステムは今後ますます必要となっていくものと考えております.今回このような賞を頂けたことは,研究を遂行するうえで大きな励みとなり,今後とも熟練技能伝承に関する研究・開発に全力で取り組んでいきたいと考えております.
最後に,研究発表の場を与えてくださった設計工学・システム部門講演会の関係各位に,厚く御礼申し上げます.


第12回設計工学・システム部門講演会 優秀発表表彰を受賞して
「新製品開発プロジェクトにおけるコラボレーション要件に関する考察」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.218-219.)
中山 隆文(三洋電機(株))
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 この度は第12回設計工学・システム部門講演会におきまして、優秀発表表彰を頂き関係者一同大変光栄に思っております。本発表はパネルディスカッションでの話題提供として行ったもので、日本のモノづくりの生命線である高付加価値製品開発のためのコラボレーションのありかたをプロセスの柔軟性、知識創造という視点で考察してみたものです。効率性という面では、日本の設計開発マネージメントにはまだまだ問題の多いことは事実ですが、開発の柔軟性や創造性といった視点で現場を見直してみると、一見ムダのようで実は非常に意味のあるコラボレーション行為が自然発生的に行われていることがわかりました。現在これらの知見に基づいたコラボレーション環境を実際の開発現場で運用中であり、その成果については改めて報告させていただく予定です。ところで、今回の発表内容は企業で「どろどろとした」と表現される現場のノウハウに係わるもので、これまで企業サイドからは学術研究の場に晒すことを避けていた側面ではないかと思います。しかしながら、モデル化・体系化という学術研究のツールによって泥の中の金貨を見つけることも可能であり企業側のメリットも大きいと言えます。そうした意味で今回の受賞が、企業からの学会参加のきっかけになればと考えております。


第12回設計工学・システム部門講演会 優秀発表表彰を受賞して
「創成型設計・製作プロジェクト"Paper Bicycle Project"の試み」
(第12回設計工学・システム部門講演会講演論文集,2002,pp.419-422.)
柳原 大輔(広島大学)
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 このたびは,第12回設計工学・システム部門講演会におきまして優秀発表表彰を頂き,誠に光栄に思っております.私の所属しております広島大学工学部第四類(建設・環境系)では,平成12年度から,実際の物作りを通して学生の基礎学力と知的創造力を高めることを目的に,Paper Bicycle (紙を材料とした人が乗って走れる自転車) を設計・製作する授業 "Paper Bicycle Project" を行っております.本授業は講義科目の総括として位置付けられており,創造的作業を通じて講義で得た知識の総復習とその活性化を促すことを目標としています.授業開始当初は問題も多く,上記のような目標を必ずしも達成できなかったのですが,毎年の授業改善により,高い教育効果を有する授業になってまいりました.関係教官全員,今回の受賞を本授業に対する高い評価と考え,大変喜んでおります.  近年,学生の資質や目的意識が多様化する中で,物作りに対する意欲の醸成と,物作りを通した問題発見・解決能力および創成能力の育成が,大学教育にこれまで以上に求められています.今後もこの受賞にあぐらをかくことなく,より良い授業となるように,講演時に頂いた様々なご意見を参考にして,さらなる授業の改良を行って行きたいと考えております.


No.03-27 第13回設計工学・システム部門講演会 講演募集
−新日本型ものづくりを目指して−
設計工学・システム部門−北陸信越支部 合同企画

開催日
2003年10月30日(木)〜11月1日(土)

会場
金沢読売会館(〒920-0912 石川県金沢市大手町5-30)

詳細は,http://solid3.hm.t.kanazawa-u.ac.jp/ds2003/をご覧ください.


構造・機械システム最適化に関する第2回日中韓ジョイント・シンポジウム(CJK-OSM2)開催報告
設計工学・システム部門 協賛

 2002年11月4日〜7日の間,韓国釜山市のリゾート,海雲台ビーチのパラダイス・ホテルを会場に標記シンポジウム(The 2nd China-Japan-Korea Joint Symposium on Optimization of Structural and Mechanical Systems: CJK-OSM2)が開催された.日本,韓国,中国をはじめ6カ国から総勢183名が参加し,3件の基調講演と30セッション150件以上の普通講演,パネルディスカッションが行われ,最適化に関する研究,技術開発についての活発な討議が繰り広げられた.日本からは本学会をはじめ,土木学会,日本建築学会,日本航空宇宙学会などの関係者54名が参加した.講演内容では形態最適化,形状最適化や複合領域最適化,信頼性分野をはじめ,進化的あるいは大域的最適化手法や土木,機械,建築,航空,海洋,MEMS分野などへの適用事例も多く発表され,今回は特に製品開発への応用に関する多数の講演発表があった点が特徴的であった.シンポジウム講演者の中からYoung Engineer’s Awardに3名が選ばれ,日本からは大阪府立大学工学部の小木曽 望先生がその栄誉に浴された.最終日にはバスで蔚山(釜山から東海岸沿いに約1時間半)の現代自動車,現代重工業の工場見学ツアーもあり,バンケットでは各国の歌自慢も飛び出し大いに盛り上がった.最後に第3回シンポジウムCJK-OSM3を2004年に日本で開催することを期して散会した.日本側の組織委員をはじめ開催にご尽力いただいた先生方,参加された皆様に感謝申し上げます.

(文責 山崎光悦 金沢大学)

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(画像をクリックすると拡大表示されます.)

発行日:平成15年5月28日

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日本機械学会設計工学・システム部門
(部門ホームページ http://www.jsme.or.jp/dsd/)
広報委員長 村上 存
  〒113-8656 東京都文京区本郷7‐3‐1
  東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻
  Tel: 03-5841-6327  Fax: 03-3818-0835
  E-mail: murakami@mech.t.u-tokyo.ac.jp
広報委員 池井 寧
  東京都立科学技術大学工学部生産情報システム工学科
  〒191-0065 東京都日野市旭が丘6-6
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