作成 廣安 知之(同志社大学)・泉井 一浩(京都大学) 2009/4/6

日本機械学会 設計工学・システム部門

「関西設計工学研究会」(A-TS12-04) 2008年度 研究会活動報告

 本研究会は2002年4月より日本機械学会設計工学システム部門設置研究会として関西地区の大学で設計関連の研究を行っているメンバーを中心に発足し、現在も活発に活動を続けております。

 2008年度には、第30回、第31回、第32回の3度の研究会を行いました。本年度は、「現状行っている設計プロセスの見直し・過去の設計を次の設計に生かす方法について」というテーマを中心に、数値解析と設計プロセスの関連や、設計知識の活用法について議論を行いました。機械設計において数値解析は必要不可欠なツールであり、近年の数値解析法の発展と汎用ツール化に伴い、誰もが容易に数値解析を行うことができるようになっています。数値解析は、その理論と限界を十分に理解して利用すれば、設計プロセスに対して大きな恩恵を与えてくれるものですが、数値解析の本質を理解しないまま実際に設計プロセスの中で利用され、不適切な使用方法により誤った判断がなされるという事態もしばしば発生しているのが現状です。また一方で、実験の実施が非常に困難な場合、実験による検証を経ずに、数値解析の結果のみを信頼して、開発・設計における重大な意思決定がなされる事例も増えてきております。この場合、数値解析が弾き出す解の精度を前もって把握しておくことが非常に重要となっています。このようなことから、本研究会では、数値解析を設計プロセスへ展開する際に数値解析の解の妥当性を十分に検討するための枠組みについて、1年間議論を行いました。例えば、そのような枠組みの一つとして、ASMEから出版されている固体力学に関する数値解析の妥当性検証のガイドラインがあげられます。このガイドラインでは、固体力学に基づく基礎的な数値解析を対象に、数値解析コードと理論解の比較による検証と、数値解と実験結果の比較による妥当性の確認手順についての指針がまとめられています。本研究会では、このガイドラインの是非を検討すると共に、講師として三菱マテリアル株式会社より瀧澤英男様をお招きして、議論を行いました。また、設計プロセスにおいて、現在の設計知識を記録し、過去の設計知識を活用していくことは、団塊の世代の引退といった社会的背景からも、非常に重要なテーマとなっています。本年度では、委員の研究成果に対する議論を行い、また、サイバネットシステム株式会社から大明孝雄様をお招きして、知識活用ソフトウエアの紹介をいただきました。

 

 以上の研究会の他にも、2008年9月20日(土)には、シンガポール国立大学の Kay Chen Tan先生をお招きして特別講演会を開催しました。Tan先生は、長年進化計算、特に多目的最適化の研究に従事し、スケジューリングや知的なロボット システムに開発したアルゴリズムを適用し、大きな成果を挙げてきました。現在では、IEEEのComputational Intelligence Society部門のEvolutionary Computation Technical Committeeの主査を務められています。 講演では、 「Advances in Evolutionary Multi-objective Optimization and Design Application」という題目で、多目的遺伝的アルゴリズムの概要、開発したアルゴリズム、スケジューリング問題やロボットへの適用例、現在、多目的遺伝的アルゴリズムの分野で話題になっている項目などをわかりやすく開発していただきました。終了後は、研究者や学生と和やかに歓談し、非常に有意義な会とすることができました。

 

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