2012年度環境工学部門長 川島豪(神奈川工科大学)

2012年度の活動の抱負
─総合技術としての環境工学を目指して─

 2012年度の環境工学部門、部門長をつとめさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。第1技術委員会に所属し、機械力学、振動制御関係が専門です。振動と聞くと抑えなければならないもの、対策しなければならないものという悪いイメージがあります。社会には必要な技術ですが将来を担う若者には魅力的に映らないようです。誰かが対策してくれれば良いと考える傾向にあります。そこで、この分野に若者をひきつけるため、音における騒音と音楽の関係を参考に、振動の良い面を引き出す「心地よい揺れ」の研究を始めました。その成果の一部を環境工学総合シンポジウムで発表させていただいたことが縁で現在まで当部門にお世話になっています。最近では、太陽エネルギーの有効利用という観点からエネルギーの地産地消に適した新しい公共交通システムの提案もさせていただいています。

 日本機械学会は、材料力学、機械力学、流体力学、熱力学の機械工学における4力学に対応したしっかりとした部門があります。そのなかで環境工学部門はそれらを横断する部門として特異な存在といえます。したがって、部門登録者数において第1位は少ないですが第2位には多くの会員の皆様に登録していただいております。第1位の登録者数、特に若い技術者の登録を伸ばすことが当面の課題と捕らえています。

 当部門は、環境問題の種類にしたがい「騒音・振動評価・改善技術分野」、「資源環境・廃棄物処理技術分野」、「大気・水環境保全技術分野」、「環境保全型エネルギー技術分野」の4つの分野から成り立っています。一つ一つが重要な分野であり、先輩方のご尽力によりかなりしっかりとした組織になっています。しかし、近年はこれらを総合して考えることでやっかいな問題を新たな資源に変えるなど新しい発想が求められています。さらなる部門の発展のためには、このような総合的な見地から情報を発信できる部門にする必要があると考えます。現在、これら4つの分野を横断する「先進サステナブル都市WG」を立ち上げ、総合的な提案をしようと部門として模索しています。本年度もこのワーキンググループの活動をバックアップし、総合的な情報発信により会員の皆様のみならず学生にも魅力的な部門にしたいと思います。

 また、環境工学部門は企業の方に多く参加していただいていることも特徴のひとつと捕らえています。企業の方に有益な情報を提供し、加えて情報発信の場を提供することも重要な課題と考えています。魅力的な部門に成長させるため、企業の方からの積極的なご意見をお待ちしております。

 本年の環境工学総合シンポジウムは、昨年開催予定で準備を進めてきましたが東北地方太平洋沖地震による震災の影響で残念ながら中止とした東北大学で開催します。復興に向けて頑張っている地で我々も元気をいただくと共に、部門として情報を発信してきたいと考えています。特に、「先進サステナブル都市WG」が中心となり、4つの分野が一体となって環境工学部門なりのインフラ整備に関する提案をしようと企画しています。この企画は、震災復興のみならず、今後起こりうる東南海地震に備え、復興の地で得た教訓を基に、総合的な防災技術に関する提案にも発展させていきたいと考えています。

 私の所属する第1技術委員会では、津波などに関する情報伝達の質の向上、避難所における生活環境の改善について提案しようと検討しております。加えて、大学でもキャンパスを防災拠点としたとき、単に避難場所、そして備蓄食料を提供するだけでなく、研究用に導入し、通常は研究に使用している太陽光パネル、蓄電池、水素発生器、燃料電池、循環型水槽等を結び付け、非常時のエネルギー供給システムを構築するような新しい構想なども検討しております。このような提案に関しては、計画段階の案でも発信できる場を提供することが重要と考えており、防災拠点作りの参考にしていただく場を提供する予定です。さらに、震災後の計画停電は記憶に新しいところです。最近は停電がなくなりましたが今の電力の多くは石油や天然ガスなどの化石燃料から発電しています。原子力問題で関心が薄くなりがちですが、オゾンホールの原因である温室効果ガスは大量に排出され、地球をじわじわと痛めつけています。温室効果ガスの排出削減についても忘れずに提案していきたいと思います。

 また、津波で大きな被害を受け、立ち直りつつある「仙台市南蒲生浄化センター」の見学も企画しております。本年のシンポジウムは、情報交換の場である講演発表に加え、上記のような魅力あるイベントを企画しております。奮って東北の地で開催されるシンポジウムにご参加ください。

 さらに、国際ワークショップの2014年の開催に向けて準備を始めます。環境問題は国境などなく、影響を及ぼしあいます。日本の環境おける成果をアジアに発信して連携しながら共に地球の保全に努力していく姿勢を示していきたいと思います。

 最後に、本部門の発展には皆様のご協力が不可欠です。学会の在り方が問われています。昔はボランティアでの運営が基本でしたが、業績が厳しく求められる現在ではなかなかボランティア活動では済まされなくなってきています。有益な情報が得られ、発信できる場、ギブアンドテイクが感じられる場を提供していくことが重要と考えます。是非とも、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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