「食品製造設備の安全設計による競争力強化の課題」
開催日時:2010年6月18日(金) 9.30-17.00
- 「食品メーカーから見た食品製造設備の衛生安全とその課題」
- [機械メーカーから見た食品製造設備の衛生安全性の考え方」
- 「食品機械の安全性確保に向けた取扱説明書と表示のあり方」
- 「食品工場における食品防衛はいかに考えるべきか」
1.「食品メーカーから見た食品製造設備の衛生安全とその課題」
山崎製パン株式会社 鷲巣恵一 氏
製パン業界は粉が舞う環境であり、ライン停止は品質に直接影響する。労働災害は、トラブル、清掃、調整の時に発生しやすい。 設備保全に力を入れて来た結果、トラブルが半減した。機械メーカーには残留リスクを明明確に言って貰いたい。
残留リスクは許容できるレベルまで下げなければならないが、そのレベルは時代と共に変化している。 食品機械は食品衛生のリスクアセスメントが重要である。だが現実には機械安全と衛生安全の両立が難しく、過剰な安全装置は作業性
の低下やライン停止による品質低下を招き兼ねない。
製パン機械の中には永年使われている古い設備も少なくない。PLの観点から言えば、食品機械は売った後が商売である。 設備のライフサイクルを考えてほしい事と、古い機械であっても安全性の上での改善を考えて欲しいと思う。
2.[機械メーカーから見た食品製造設備の衛生安全性の考え方」
岩井機械工業株式会社 森江康雄氏
法体系で言えば食品衛生は憲法第25条に基づいて食品衛生法が作られ、乳等省令などが出されている。国際的な基準としてコーデックスがあり、
サニタリ設備の基準として米国の3A、欧州のEHEDGがある。 サニタリ設備には金属、ゴム、プラスチックが材料として用いられているが、生産時のみではなく、洗浄時の酸・アルカリなどの薬剤耐性も考慮して
選ばなければならない。中でも材質に影響を与えやすいのは塩素である。特にパッキンに用いられるゴム材では、殺菌剤脱臭剤として用いられる次亜
による劣化がある。また着香強度はパッキン材料の特性に影響されるので材料特性を考慮して選定することが必要である。寿命1年のパッキンなら
2,3年の耐久試験も必要である。 サニタリ設備は、洗浄・殺菌性が良い事が求められる。熱交換器を例にしても焦げつきにくく洗浄しやすい形状へと改善され、近年はプレート式から
チューブ式へと移行している。またCIPに関しては、エネルギ-コストの低減も必要であり、この点からの改善も進めている。
3.「食品機械の安全性確保に向けた取扱説明書と表示のあり方」
日本食品機械工業会 大村宏之氏
食品機械は機械安全と衛生安全の2つの安全性が求められる。その設計に当っては、RBA(Risk Based Approach)の手法、すなわち機械の制限、危険源の
同定、リスクの評価を行い、残留リスクが許容可能なレベルまで低減しなければならない。残留リスクの低減活動に際しては、必要であればその機械の
利用者、用途などの機械の制限も見直す必要がある。
機械に添付されている取扱説明書には、その機械の利用に際しての注意事項が記載されている。ここに記載される内容は、設計時のRBAの結果である
残った残留リスクとリンクしなければならない。すなわち、その残留リスクのレベルに応じて、危険、警告、注意として記載する事が必要である。
また機械設備に貼るラベルに記載するシグナルワードも、取扱説明書とリンクしたものでなければならない。
4.「食品工場における食品防衛はいかに考えるべきか」
元味の素エンジニアリング株式会社 佐田守弘氏
食品メーカーでは食の安全性を補償する仕組みとしてHACCP、トレーサビリティなどを導入して来た。だがこれらの仕組みは性善説によって補償
されている仕組みである。冷凍餃子事件は食の安全を根本から覆す事件であった。この様な悪意による食品テロは、従来の食品安全ではなく食品防衛
として考えなければならない。
米国のバイオテロ防止法をそのまま日本に持ち込むのは難しい。日本には日本なりの食品防衛のあり方を考えなければならない。 破壊行為の多くは怨恨による事が多い。社内外からの怨恨を生じない施策、有害物を混入されない体制など、金を掛けずにできる事は多数ある。
そして防衛対策を講じている事を示す事も大切である。 だが組織的なテロを完全に防ぐ事は難しい。食品防衛もRBAに基づいてどこから実施するかを考える事が重要である。
「食品機械における衛生安全と機械安全の課題」
開催日時:2009年6月19日(金) 9.30-17.00
- 「機械類の安全性に関する規格の概要と新潮流」
- 「食品機械の洗浄の死角とその実例」
- 「手洗浄が必要な設備の洗浄性改善の課題」
- 「衛生設計の具体事例」
1.「機械類の安全性に関する規格の概要と新潮流」
NPO法人 安全工学研究所 加部隆史 氏
労働死亡災害の約1/3,年間約500人が機械による挟まれ,巻き込まれで死亡しているにも関わらず,機械安全は野放しに等しいとのことである。
シュレッダーによる幼児の指切断事故を例に予見可能性(=リスクアセスメント)と結果回避可能性(=リスク低減)について解説された後,
機械安全の規格から見たRBA(リスクベースドアプローチ)と設計プロセスとの関連,ARR(適切に低減されたリスク)の考え方に基づく技術的,
経済的に合理的な代替設計が無いこと(RAD)とその証拠書類を整えることの重要性について説明された。また,安全装置無効化の問題から,
人と機械の協働を可能とするバーチャルフェンスとそのために必要な安全ドライブシステムの紹介があった。
2.「食品機械の洗浄の死角とその実例」
NPO法人食品サニタリ技術協会 今道純利氏
食品機械には安全と機能の要素に加えて衛生の要素が求められる。食品機械の衛生性とは食品に接触する面を無菌、無塵埃、異物等の ない状態に保つ事であり、洗浄及び殺菌によって達成される。
しかしながら衛生性を阻害する問題点が発生する場合がある。その問題点は機械設備の計画・設計時、製作・設置時、運用・保守時の 各段階で発生する。これらの問題点について、洗浄用スプレイボール、シール部、エア溜りの発生などを例にして洗浄の死角の具体例と
対策についての解説があった。
3.「手洗浄が必要な設備の洗浄性改善の課題」
味の素エンジニアリング株式会社佐田守弘氏
機械安全と共に衛生安全が求められる事が食品機械の特徴である。衛生安全の危害には微生物的危害と異物危害があるが全者の方が 影響が大きい。そしてこの紀伊を取り除くものが設備洗浄である。洗浄方法にはCIPとCOPがあるが、食品メーカの数で見れば、
分解手洗浄を必要とする設備の方が圧倒的に多い。 分解洗浄を前提として作られた設備は、単にCIP設備の導入だけでCIPを行う事はできない。それはCIPの条件が成立しないからである。
しかしながら分解洗浄は省力的ではない。従来の手法によるCIPが困難な設備にあって、いかに洗浄を効率的に行うかは、今後の課題 であるが、その考え方の例と解説があった。
4.「衛生設計の具体事例」
日揮株式会社 田中 太氏
食品製造設備と医薬品製造設備の対比から始まり,品質確保の科学的なバリデーション導入を義務付けた GMP(Good Manufacturing
Practice)について,汚染防止の考え方,そして,汚染防止の衛生設計 について説明された。汚染の発生源としては,外来性,内来性があり,衛生設計としては,汚染の直接発生の防止,蓄積による汚染の
防止,除去処理不良による汚染の防止が重要とのことである。洗浄に対する衛生設計については,化学的,物理的な洗浄エネルギを 利用し,マクロ,ミクロのデッドスペースへの配慮の必要性が示された。バリデーションに関しては,DQ(設計検証),
IQ(据付時的確性確認),OQ(運転時的確性),PQ(稼働性能的確性)の各段階について説明 され,衛生設計の規格の動向が紹介された。最後に医薬品産業のリスクマネジメントの導入と国際調和,医薬品製造施設,
設備のリスクマネジメントについてガイドラインの解説があった。
石油・化学プラント機器の基礎と応用
開催日時:2006年6月2日
- 「熱交換器の設計の基礎と応用」
- 「回転機械の設計と応用」
- 「化学プラントにおけるステンレス鋼の損傷と対策」
- 「圧力機器の保全関連国際Codes&Standardsの動向」
概要
産業・化学機械のと安全部門 部門長 大原良友氏
以前好評を博した石油・化学プラント機器,装置の基礎的事項の解説,応用の講習会を本年度も開催致した. 各題目について業界のトップクラスの講師を迎え,エンジニアリング設計担当者,機器ユーザのエンジニアのうち比較的経験の
浅い方を対象に,プラント機器の設計についての基礎と応用について,今後の実務に役立つよう企画した.
1.「熱交換器の設計の基礎と応用」
東洋エンジニアリング株式会社 技師長 酒井健二氏
石油・化学プラントでは欠かせない熱交換器について,プロセス機能,伝熱過程,構造,伝熱機構による分類を試み, その中でも代表的なシェル・アンド・チューブ式熱交換器の各タイプ(固定管板型,U字管型,浮動頭型)について解説があった.
TEMAの紹介,バッフルのタイプや伝熱管の配列の違いによる性能の違いの解説もされた.その後,伝熱設計,構造設計の手法の解説, 保守性の向上,漏れ対策などの興味深い話も紹介された.
2.「回転機械の設計と応用」
千代田化工建設株式会社 技師長 鶴田廣夫氏
ポンプ,および圧縮機の選定,設計,運転に関する講義が行われた.ポンプについては,主に遠心式について, プロセス制御,NPSH不足によるキャビテーション,吸い込み比速度(SSS),ミニマムフロー,起動バイパス,
山形特性などの設計上の注意,プライミング,均圧管,暖機などの運転上の注意が解説された.圧縮機については, 遠心式,往復動式の長所,短所の説明,遠心式のサージング防止,往復動式の振動に対する対応などの解説が行われた.
3.「化学プラントにおけるステンレス鋼の損傷と対策」
千代田アドバンスト・ソリューション㈱ 山本栄一氏
プラントにおける材料選定の主要因子、実際に使用される金属材料、具体的な構成材料について説明。次にステンレス鋼の特徴、 用途及び劣化・損傷形態と頻度について説明。その後、化学設備プラントにおける具体的な損傷事例と対応策について説明。
ステンレス鋼の損傷事例として、孔食、隙間腐食、微生物腐食、鋭敏化と流会腐食、応力腐食割れ、二相ステンレス鋼の水素脆化割れ、 再熱割れ、亜鉛脆化と多岐に渡る損傷事例を取り上げ、それぞれについて、損傷メカニズム、具体的損傷事例の写真、対応策について紹介。
プラントの保全や設計に携わるエンジニアにとって非常に有意義な内容であった。
4.「圧力機器の保全関連国際Codes&Standardsの動向」
石油連盟・技術環境安全部 田原隆康氏
現在、維持基準の国際規格が次々と公表されている。田原氏は、APIなどの維持規格関係の委員会にも参加しており、そういった立場 から関連規格の最新の動向について説明。2000年5月に発行されたAPI
RP579(FFS)の技術的背景、続いて公表されたRP580,571 (損傷機構)の説明。2002年2月から2006年2月まで欧州で活動されたFITNETについて紹介。FITNETというのは、破壊,疲労,クリープ,
腐食の4つのワーキングとそれらを横断的に捕らえる7つのパッケージから構成された活動。FITNETのFFSは、適用範囲が設計、製作から
供用中評価まで一貫して使用できるところが、API579と異なっている。高圧ガス保安法でも、維持基準として損傷・劣化機構及び 余寿命予測手法について基準作りが進められている。
食品安全のための包装とその関連技術
開催日時:2005年6月10日(月)9:45~17:00
- 「異物検出技術とその最新動向」
- 「液体充填包装とヒートシール」
- 「食品製造・流通業におけるトレーサビリティの実現」
- 「HACCP構築の為のGMP/バリデーション」
概要
2000年頃よりBSE問題や偽装表示、異物混入などの食品の安全性に係わる様々な事件が多発し、 「食の安全」に対する消費者の関心が高まって来ている。ひとたび食品の安全性が脅かされる事故が発生すれば、 企業の存続に係わる自体につながりかねない状況で、食品業界の各社においては、安全に食品を製造するために必要な設備 の改善や仕組み作りに取組んでいる。この様な状況の中で、食品製造の最終段階である包装技術は、食品の安全性を保証するに 不可欠な工程で、確実な包装はもとより、異物検査や品質保証の仕組みが重要な技術課題となって来ている。
1.「異物検出技術とその最新動向」
アンリツ産機システム株式会社 開発本部 名田 延明 氏
食品の異物危害(物理的危害、生物学的危害、化学的危害)のうち、物理的危害(金属片、ガラス、石など)の検出技術にフォーカスし、 多くの食品製造ラインで使用されている金属検出機とX線異物検出機に特化した講義であった。4mm以上のネジを検出できる異物検出器を
設置しているラインで3mm以下のネジがそのライン設備に使用されている。この様に、異物検出機を設置したことで安心しているユーザーが
散見されるが、異物を製造現場に持ち込まないことが異物混入対策として極めて重要であるという事を皮切りに、検出感度や検出精度 についてわかり易く解説され、検査対象食品と異物の組み合わせによる検出限界を実例を交えて解説された。
2.「液体充填包装とヒートシール」
大成ラミック株式会社 常務取締役 R&D本部長 二瀬 克規 氏
ゴミの減量化が出来るプラスチックフィルムを容器とした商品が増えている。その内容食品の安全性を確保するには、プラスチック フィルムを密封するヒートシール技術の信頼性向上が必須である。本講では、液体商品のヒートシール技術に関して、液体充填包装
機械の仕組みとヒートシール部の発泡メカニズムの解説から始まり、ヒートシール不良の事例の説明、最適ヒートシール温度幅と充填物 の温度の関係から言える生産速度の高速化の可能性やシール状態の評価指標をシール不良発生の実態に合った衝撃強度とすることによる
フィルム厚の薄肉化、さらにはヒートシール技術を応用したフィルムのジョイント方法など、データを示してわかり易く解説された。
3.「食品製造・流通業におけるトレーサビリティの実現」
㈱日立製作所 保手濱 敦典 氏
食品製造・流通におけるトレーサビリティについて,基本の解説から導入事例の紹介まで説明された.トレーサビリティシステムの検討の ポイントとして,ねらい・範囲の設定,使用者に適したモデルの設計,実績(データ)収集システムの構築,現物と情報の一致化の検討,
データベースの構築,という流れに即して解説された. 導入事例については,食肉・生鮮食品のトレーサビリティ,加工食品のトレーサビリティ,製品物流・在庫管理のトレーサビリティに
ついて実際の例について,識別子の紹介や消費者へのインターネットによる生産者情報公開なども含め,興味深い紹介が行われた.
4.「HACCP構築の為のGMP/バリデーション」
NPO法人食品サニタリ技術協会 中谷 眞三 氏
食品の加工,製造における製品の安全・安心,衛生確保の推進のためのHACCP (Hazard Analysis Critical
Control Points)システムが 導入されているが,これが有効に機能しないが故の事故が発生している.HACCPスタディの必要条件の一つである
GMP (Good Manufacturing Practice)について解説がなされ,GMPに対応したエンジニアリングについてその役割,ポイントの
講義があった.続いて設備のGMP対応を評価するためのバリデーションの重要性と遂行方法についての説明,最後に日本における 食品加工設備のサニタリー基準の構築,推進の必要性について指摘がなされた.
安全と環境を考慮した化学機械とプラントの設計と保全-産業機械と化学機械におけるHSE-
開催日時:2004年6月10日・11日(木・金)9:45~17:00
- 「いま、なぜ安全・環境なのか-社会の要請と新しい視点」
- 「産業化学機械の防食対策」
- 「産業化学設備の耐震設計」
- 「実例に見る予防保全(PM)ヘの取組み方」
- 「産業化学機械の騒音対策」
- 「リスクベース設計の基礎とその実例」
- 「プロセス安全設計の基礎」
- 「機能安全規格とその動向」
- 「リスクの社会的需要のための課題とその解決方法 ~電磁界リスクを例に~」
1.「いま、なぜ安全・環境なのか-社会の要請と新しい視点」
(株)三菱総合研究所 坂 清次 氏
安全、環境に対する学会の動き、産業界の動き、規格の流れについて説明。機械学会は倫理規定の中で安全と環境への配慮をうたい、 日本経団連も改訂企業行動憲章の中で安全・環境の価値を重視している。安全・環境への影響を定量化する一つの指標としてリスクの 概念が用いられ、国際規格で規定されてきた。リスクはゼロか100かのデジタル的なものではなく受け入れ可能なレベルか否かという アナログ的な扱いがなされる。これからの技術者は自らの仕事の影響範囲の大きさ、責任の重さを認識して業務に精進する必要があること が述べられた。
2.「産業化学機械の防食対策」
すずき技術士事務所 鈴木紹夫 氏
危険物質を内包する化学装置の防食設計の基礎と事故事例に基づく防食対策の考慮点が講演された。防食設計はその考慮するフェーズを 材料の選定フェーズ、設計フェーズ、機器製作フェーズ、操業フェーズと分け、各フェーズ毎に留意するポイントが分かりやすく 解説された。また事故事例では海外化学プラントの爆発事故、国内石油精製プラントの気密試験中の破壊事故、国内食用油製造プラント でのPCB混入事故等が紹介され、事後事例のフィードバックとして防食設計の重要さが解説された。また講演全体を通じて、HSEのみならず 品質保証(Quality)を加えたHSEQを満足することが技術者として重要であることが示された。
3.「産業化学設備の耐震設計」
千代田アドバンストソリューションズ(株) 建設技術ソリューションユニットユニットマネージャー 大嶋昌巳 氏
地震国である日本の産業化学設備にとって耐震設計は避けることの出来ない重要な問題である。その耐震設計の基本概念、重要度分類の 考え方、地震荷重の考え方等を貴重な実例写真と図解を交えながらかりやすく講義していただいた。さらに、これまでの日本の地震の 歴史と、化学プラントの耐震設計関連基準・指針の変遷の説明があり、現行高圧ガス設備等耐震設計基準の概要と今後の展望について、 それらの技術背景を含めて解説がなされた。産業化学設備を設計する立場の人間として、地震リスクの管理という考え方に基づく耐震対策 を、その動向に関して注意をはらいながら遂行していかなければならないと感じた。
4.「食品製造・流通業におけるトレーサビリティの実現」
㈱日立製作所 保手濱 敦典 氏
食品製造・流通におけるトレーサビリティについて,基本の解説から導入事例の紹介まで説明された.トレーサビリティシステムの検討の ポイントとして,ねらい・範囲の設定,使用者に適したモデルの設計,実績(データ)収集システムの構築,現物と情報の一致化の検討, データベースの構築,という流れに即して解説された. 導入事例については,食肉・生鮮食品のトレーサビリティ,加工食品のトレーサビリティ,製品物流・在庫管理のトレーサビリティに ついて実際の例について,識別子の紹介や消費者へのインターネットによる生産者情報公開なども含め,興味深い紹介が行われた.
4.「実例に見る予防保全(PM)ヘの取組み方」
出光興産(株)工務部設備管理センター 主任部員 八重樫 彰 氏
石油精製および石油化学プラントの現場では、連続運転期間の延長に伴い予防保全(PM)が重要な要素となっており、その予防保全に 関して、基本的な考え方とその位置付けについて講義がなされた。さらには機器の種類ごとの予防保全に関して、現場の実例を紹介 しながら具体的に説明があり、興味深いものであった。現在の日本がおかれている"安全を確保するとともに保全コスト削減さらには 保全技術者の低減という厳しい状況"の中で、実際の現場では、どのように予防保全(PM)に取り組んでいるか、また今後、どのような 課題があるのかを認識することのできる貴重な講演であった。
5.「産業化学機械の騒音対策」
東洋エンジニアリング(株) 応用解析グループ 平井正史 氏
産業機械と化学機械におけるHSEとって切っても切り離せない騒音問題に関して、騒音の基本的概念、騒音法規の概要から始まり、 さらには騒音制御に関しての講義がなされた。 特に講演者の豊富な実務経験から、騒音制御には、"機器単体の騒音対策"と"機器の 複合体であるPLANTの騒音対策"の両面から検討することの重要性について詳細に説明がなされた。また、いかに設計段階で騒音対策を 行うことが経済面からだけでなく操作性、安全性の面からも有効であること、さらには海外の騒音制御の動向に関しても解説がなされた。
6.「リスクベース設計の基礎とその実例」
東京工業大学 大学院教授 小林英男 氏
我々の社会は、リスクを配分し受容するリスク社会に変わりつつあり、リスクの供給元とみなされている技術社会に対しての不信感を 払拭する取り組みが必要とされている。この講義では、リスクの本質についてわかりやすく説明された後、リスクベース工学という
考えをリスクベース設計とリスクベースメンテナンスを中心に事例を交えて解説が行なわれた。リスクベース設計の例として、 フェールセーフ設計とクラックセーフ設計を故障確率と影響度を考慮して使い分けている飛行機の損傷許容設計を取り上げた。
7.「プロセス安全設計の基礎」
東洋エンジニアリング(株) 応用解析グループ 角田 浩 氏
従来型の安全の作りこみでは、90数%程度までが対応の限界である。そこで、HAZOP等による安全設計の検証が望まれている。 本講義では、プロセスの代表例として化学プラントを取り上げ、安全設計の基本的な考え方から始まり、「プロセス安全」
を展開して事故の予防・抑制について、「外部防御」を展開して被害の局所化について解説された後、リスクに基づいた安全設計の 取り組みの中で、HAZOP等の事例を紹介された。
9.「機能安全規格とその動向」
(株)東芝 電力・社会システム社 情報制御事業推進室 田辺安雄 氏
石油精製および石油化学プラントの現場では、連続運転期間の延長に伴い予防保全(PM)が重要な要素となっており、その予防保全に 関して、基本的な考え方とその位置付けについて講義がなされた。さらには機器の種類ごとの予防保全に関して、現場の実例を紹介
しながら具体的に説明があり、興味深いものであった。現在の日本がおかれている"安全を確保するとともに保全コスト削減さらには 保全技術者の低減という厳しい状況"の中で、実際の現場では、どのように予防保全(PM)に取り組んでいるか、また今後、どのような
課題があるのかを認識することのできる貴重な講演であった。
9.「リスクの社会的需要のための課題とその解決方法 ~電磁界リスクを例に~」
インターリスク総研 三島和子 氏
世の中に絶対の安全は存在せず、リスクとベネフィットとのバランスで考える必要がある。一般に疾病による死亡率10^-2から 自然災害による死亡率10^-6の間がリスクとベネフィットのバランスで受容可能性が変動する範囲とされる。
人間のリスクイメージには「恐ろしさ」と「未知性」の2つの要素から構成される。特に電磁界の様な目に見えない、 過去に経験がないものに対しては大きなリスクのイメージを生じやすい。またリスクレベルの認識は、専門家と一般仁との間で
大きな乖離が見られるケースも少なくない。リスクを正しく理解してもらい、社会的受容性を得るには、リスクコミュニケーションが 必要であるが、方法を誤ると却って不安を増大させてしまう場合も少なくない。
安全で安心できる食品を作るための食品製造設備とプラント
開催日時:2003年6月5・6日(木・金)9:45~17:00
- 「異物選別装置とその機構および特徴」
- 「微生物汚染源を防止するための装置面での考え方」
- 「食品製造プロセスにおける汚れの付着現象と高度洗浄」
- 「破損による異物混入を防止するためのポイント」
- 「温度変化が食品の品質に与える影響について」
- 「冷凍流通と保存設備の温度制御技術について」
- 「ヒューマンエラーの発生原因と防止システムについて」
- 「リスクマネジメントとしてのHACCP展開」
1.「異物選別装置とその機構および特徴」
食品コンサルタント(元味の素(株)) 井上富士男 氏
安全で安心な食品には、異物選別が欠かせない。この講義では、米の選別工程の中で使われている各種の選別方式と選別除去装置、 および検査装置についての解説が行われた。従来から行われていた籾や玄米の選別機では、挟雑物の除去に限界がある。1粒子ずつ選別 する新しい選別機により、正常粒の異物側への漏出も防止でき、トータルとしてのメリットも見られる。また昨今、虫の混入が問題 になっているが、装置内の糠などの残留がその原因になっている。残留のない設備の構造が防止のポイントになる。
2.「微生物汚染源を防止するための装置面での考え方」
大成ラミック株式会社 常務取締役 R&D本部長 二瀬 克規 氏
食中毒の原因となる微生物が増殖するには種菌、栄養分、水分、適切な温度が必要で、これのいずれかを断てば微生物の増殖を防止できる。 食品の製造設備が多機能化する中で、洗浄しにくい構造が増え、また長時間の連続生産によって設備に由来する微生物トラブルが生じている 。また分解洗浄が可能な設備でも、その箇所が多いと実際には分解洗浄が頻繁には行われないケースも少なくない。講義の中では微生物汚染源 となりやすい装置の構造とその改善方法について具体的な説明がなされ、また洗浄しにくい箇所の微生物汚染対策の方法として、95%以上の アルコールを用いて水と置換し、乾燥によって微生物増殖を防止する手法などの説明が行われた。
3.「食品製造プロセスにおける汚れの付着現象と高度洗浄」
岡山大学工学部 生物機能工学科 教授 中西一弘 氏
汚れの付着と洗浄は、基礎的な立場に立つと速度過程、平衡論、分子間相互作用、化学反応などが複雑に絡み合った境界領域の課題 として捉えることができる。 それらについて、分子レベルで解析し、汚れの付着の制御と効率的な洗浄技術の最新技術について、 図解を含めてわかりやすく解説が行われた。特に高度洗浄として、OHラジカルによるUV/過酸化水素洗浄、講演者らが考案した H2O2-電気分解洗浄などが紹介され、大変興味深いものであった。
4.「破損による異物混入を防止するためのポイント」
工学博士(元味の素(株)勤務) 鈴木紹夫 氏
講演者による長年の実務経験によって培われた食品製造プラントにおける損傷、破損による異物汚染物質などの混入防止ポイントについて、 技術的、さらに経済的観点から貴重な説明がなされた。特に食品製造の分野では欠くことのできない、ステンレスの腐食 (粒界腐食、孔食、、応力腐食割れ、すきま腐食など)のメカニズムや防食手段の選定について実務的な見地より解説がなされた。
5.「温度変化が食品の品質に与える影響について」
財団法人日本冷凍食品協会 検査事業本部部長 新宮和裕 氏
冷凍食品の品質と食品のトレーサビリティの2つのテーマについての講演がなされた。冷凍食品の品質では凍結速度が重要であり、 急速凍結と緩慢凍結を比べた場合、急速凍結の方が貯蔵期間を延ばしても食感の劣化は少ない。理由は急速冷凍では氷結晶が小さく 細胞破壊が少ないからである。冷凍食品は輸送中における温度変化の影響を受け品質劣化が起こるため流通における温度管理が大変 重要である。食品のトレーサビリティについては欧州、米国、そして日本の最新の動向について解説があった。
6.「冷凍流通と保存設備の温度制御技術について」
(株)前川製作所 総合プロジェクト企画室 伊藤一郎 氏
冷凍食品の製造過程及び輸送過程における温度管理について解説があった。製造過程では具体的に加工米飯の製造工程フローを用いて 説明があった。一般に製造ラインでは温度管理はきちんとなされるが、加工米飯では箱詰め後のケース積付けフェーズ、また冷凍マグロ ではセリ市場での陳列フェーズでの温度上昇を管理する必要があることが例示された。またトラックによる搬送中の温度変化のデータに よると荷捌き時の温度上昇が大きく輸送過程における温度管理の困難さが指摘された。
7.「ヒューマンエラーの発生原因と防止システムについて」
電力中央研究所 ヒュ-マンファクタ-研究センタ- 上席研究員 高野研一 氏
最近の重大事故を見ると、共通の要因として組織要因の問題(例えば、安全体制の緩慢な後退、工程・手順管理の形骸化、工程優先の 職場風土)があることが分かる。そこで、この組織要因を分析し、これが、重大事故だけではなく、職場で発生する労働災害や軽微な 設備災害の発生にも関与している場合があることを示し、これらを防止するための考え方や戦略についての解説が行われた。 また、その実践的アプローチについても紹介があった。
8.「リスクマネジメントとしてのHACCP展開」
(株)ディ・エヌ・ビー・ファシリティーズ 代表取締役社長 大月弘行 氏
食品企業における安全の重要性について、そして、安全とリスクとの関係について企業としてどのように考えるべきかについて説明があった。 食品企業の場合はリスクマネジメント、特に、微生物学的なリスクアナリシスの手法を理解しておく必要がある。その一つの手法としての HACCPについて、ISOとの関連とともに解説が行われた。また、リテール業(大量給食業)でHACCPを行った実例の紹介があった。
リスクアナリシスに基づくプラント・機械の安全・保守
開催日時:2003年6月5・6日(木・金)9:45~17:00
- 「機械安全のグローバル化と第三者認証について」
- 「国際規格ISO12100に基づくリスク低減のための機械設計」
- 「ロボットの安全規格の動向とリスク低減の実際」
- 「機械安全へのユーザーとしての取組みと課題」
- 「リスクベースドマネージメント工学の基礎」
- 「リスクアナリシスに基づくライフサイクルコストの評価」
- 「RBIによる設備稼働率の向上とメインテナンスコストの削減の実例」
- 「API 579による機器の安全性評価」
1.「機械安全のグローバル化と第三者認証について」
北九州市立大学 教授 国際環境工学部 杉本 旭 氏
安全確保の具体的方策を定める共通の原理として国際規格ISO/CD12100(機械類の安全性:基本的概念,設計の為の一般原理)が21世紀 早々に正式決定される。この規格はリスク低減の標準的な方法を規定し,それに従って災害防止を行った場合であれば,たとえ災害を 生じたとしてもPL(製造物責任)に基づく責任から救済されるべきだ とするPLP(製造物責任予防)の考え方を採用している。 これまで作業者に委ねて きた災害防止を,可能な限り安全設計で実現し,その限界をユーザーに認めてもらう という危険の公平分担 の原理は,安全の公平な判断を保証する為に必要な基本的な原理・原則である。
2.[国際規格ISO12100に基づくリスク低減のための機械設計」
産業安全研究所 機器システム安全グループ 斉藤 剛 氏
設計製造者が災害防止に果たすべき責任に言及している,機械類の安全性-基本概念,設計のための一般原則(ISO 12100) についての 基本的考え方を説明し,その中の リスク低減プロセスのうち,設計者のためにリスクアセスメントとリスク低減方策を 組合せ安全設計 手順について事例を紹介しながら詳細に説明し,リスクが適切に低減 されたことを判断する基準を紹介した。
3.「ロボットの安全規格の動向とリスク低減の実際」
群馬大学 講師 工学部機械システム工学科 安藤 嘉則 氏
産業用ロボットの安全規格は,同ロボットの規格のみならず,その構成要素やロボットを含むシステムを対象にしたものがあり, 国内外(特に米国,欧州諸国)の関連 規格と特徴にふれた。また,ISO規格は基本安全規格(TYPE A),物理規格・安全関連設備規格 8TYPE B),個別安全規格(TYPE C)の3段階から構成され,それらの規格概 要説明がなされた。ロボットシステムの安全化と リスクアセスメントについて解説し, 安全防護の具体策と事故事例からみるリスク低減について説明がなされた。 今後より効果的な安全対策・安全機器の開発が求められ,そのキーポイントはソフトウエアによる安全の確保と関連する ティーチングペンダント等のワイヤレス化との指摘がなされた。
4.「機械安全へのユーザーとしての取組みと課題」
トヨタ自動車㈱安全衛生推進部安全衛生室 星野 晴康 氏
国内外の自社生産設備の安全について,隔離,停止,停止の維持と安全な起動手段の4つの観点からの基本基準の制定と運用, 安全装置の機能保証について紹介の後, 危険源そのものの大きさと危険源に曝される機会の低減と考えた本質安全化による, 低推力機器の開発導入・機械設備のシンプル化の効用を述べ,安全性の大幅な向上と 共に新設の場合,スペース,エネルギ使用量, 設備投資額等の半減事例,並びに,欧 米工場での展開事例とモノづくり企業にとって示唆多き紹介があった。
5.「リスクベースドマネージメント工学の基礎」
東京工業大学教授 大学院理工学研究科 機械物理工学専攻 小林 英夫 氏
一般に「安全性は100%保証されなければならない」と考えられがちだが,絶対に故障しない機械を作る事は不可能である。機械は故障する事を前提とし,その確立をリスクとして捉らえる。そしてリスクをいかに管理するかが,リスクベースの工学である。これは,設計,製造,メンテナンスの分野に応用ができる。このうちの検査についていえば,リスクを発生確率と影響度で評価し,どの部分についてどの様な方法で検査管理するのが良いかを決める事ができる。
6.「リスクアナリシスに基づくライフサイクルコストの評価」
東洋エンジニアリング㈱ビジネス開発グループ 川内 陽志生 氏
検査やメンテナンスを行う場合,コストを無視して行う事はできない。ライフサイクルコストとは,機械の発案から製造,メンテナンス,廃棄にいたる費用を意味する。 ライフサイクルコストを評価する事により,考えうるいくつかの対策案がある時に,どの方法を採用する事が,有利であるかを決める事ができる。この講演では,ライフサイクルコストを評価する手法について,実際の例をあげながら,評価の方法の概要についての紹介が行われた。
7.「RBIによる設備稼働率の向上とメインテナンスコストの削減の実例」
石川島播磨重工業㈱基礎技術研究所 木原 重光 氏
RBI(Risk Based Inspection)/RBM(Risk Based Maintenance) とは,設備,機器プラントの各部位のリスクを評価して,全部位でリスクが一定レベル以下になるようにメンテナンスを行う方法である。それにより,リスクが高い部位の検査とメンテナン スを重点的に実施することにより,設備の稼働率を向上させて,かつ検査やメンテナンスコストを低減出来る,としている。具体的な事例として,発電用ボイラを対象としたリスク評価方法について,リスク評価用目録の作成,寿命評価の紹介が行われた。
8.「API 579による機器の安全性評価」
(社)日本高圧力技術協会 特別研究員 田原 隆康 氏
圧力設備の経済性および信頼性向上を目的として,傷又は損傷を含む供用中機器部材の定量的な評価方法がAPI 規格として制定された。そのAPI規格による,供用適 性評価,減肉評価,亀裂状きず評価,脆性破壊評価の方法ついて,具体的にそれらの 手法の紹介と評価手順の説明が行われた。また,API 579規格の最近の動向について紹介が行われた。