優秀講演論文賞受賞

玉本 淳一
                (株)日立製作所
                機械研究所

  この度,IIP部門の優秀講演論文賞を頂きまして,共同研究者ともども大変光栄に存じております.部門の皆様に心より御礼申し上げます.

  受賞論文は,IIP'98部門講演会において発表した「紙葉類の搬送間隔補正システムの開発」です.ここでは,枚葉の紙葉類を搬送するときに発生する搬送間隔の変動に対して,それを補正する制御系の構成を提案し,実装置に適用して有効性を確認しました.

  紙葉類を取り扱う装置としては,例えばATM(現金自動取引装置)や伝票・郵便書状等の区分装置があり,他の分野と同様に処理速度の高速化が求められています.処理速度は搬送速度と搬送間隔とから決定され,搬送速度は騒音や寿命の観点から低く抑えねばなりません.したがって,搬送間隔が短い,高密度搬送を指向することになります.一方,紙葉類の行先を振り分るために,所定の搬送間隔が必要であり,両者より精密な搬送が求められています.しかし,紙葉類の形状や摩擦係数等の複合的な要因により搬送間隔が変動することが明らかになりました.

  そこで,論文では一部区間の変動量と行先までの変動量との相関を統計的操作により関数化し,間隔変動量の予測を含めて制御目標値を設定する制御系と,搬送間隔を制御するために紙葉類に与える最適な速度パターンを導出する方法を提案しました.本手法により,振り分け箇所における搬送間隔誤差を小さくすることができ,高密度搬送による処理速度高速化を実現しました.

  紙葉類等の柔軟媒体の搬送に関する分野は,研究的には未発達な分野であり,開発者のノウハウやセンスに多く依存しているのが実状だと思います.現在,東京工業大学の小野先生を委員長として,「柔軟媒体搬送技術と学理に関する研究協力分科会」が進められておりますが,このような分科会や学会の活動を通じて,媒体搬送技術の進歩に寄与していきたいと考えております.今後とも,ご指導をよろしくお願い申し上げます.

Last Modified at 2000/6/13