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Optomechatronic Systems III; by SPIEの会議報告

大平文和(香川大学)

 標記会議が2002年11月11日から14日までドイツのシュツッツガルトにおいて開催されました。本稿では、会議の概要を紹介するとともに、会議の傾向や筆者が注目した光通信ネットワーク分野の講演のトピックス等について紹介します。また、ドイツの代表的な研究機関であるカールスルーエ研究センターを訪問し見学をした内容についても紹介します。

1.会議の概要

 本国際会議は、SPIE主催の会議(Photonic West)から独立した、光とメカトロニクスの融合技術に関する会議で、今回が第3回目です。参加人数は約80名、講演件数は、オーラルが61件、ポスターが27件と比較的小規模な会議でした。しかし、シングルセッションで運営されたため日を追うごとに討論が活発になっていき、小規模の国際会議のメリットがよく出ていました。会議の主要メンバとしては、東京農工大の吉澤教授、KAIST(韓国)のCho教授、オタワ大学(カナダ)のKnof教授らです。

 会議の主な項目は、画像計測(パターン認識、3Dトモグラフィ等を含む)、メカ制御、光センサー(形状、運動)等の分野に大別され、またマイクロマシンやセンサーも包含した内容でした。具体的には、光学的手法による計測技術、画像処理・計測技術、パターン認識、光ネットワーク分野におけるオプトメカトロ技術、オプトメカトロ分野における駆動制御技術、ロボット技術(センシング、制御、マニピュレーション)、アセンブル技術等であり、いずれもオプト技術とメカトロ技術の融合した分野の内容です。本会議のセッションは15で、その他にポスターセッションが開催されました。

 
写真1 会場となったメッセ
写真2 講演風景
2.内容

 まず、キーノートスピーチとして「可動のマイクロアレーレンズ技術による三次元画像表示システム」(Connecticut大、米国)と、「光MEMSからフォトニック結晶へ」(Samsung、韓国)の2件の講演がありました。後者は、フォトニック結晶の技術は光MEMS技術と融合しながら技術の進捗を果たすこと、具体的には光通信用スイッチやアッテネータ、また表示デバイス等の実現が可能であるという将来動向を講演しました。次世代光デバイスのユビキタスハードへの展開について講演したものであり興味深いものでした。

 本会議では、今回はビジョン関連技術をトピックスにすえており、全体的にもカメラによる画像処理技術とメカ制御技術を組み合わせたオプトメカトロ二クス技術に関する発表が多くありました。マイクロマシン技術応用では、光スイッチ応用としてフォトリソ技術によりビーム支持のマイクロミラー構造を製作した内容や、可変焦点のマイクロレンズの眼鏡への応用の発表などがありました。

 また今回の会議では、Optomechatronics for Next-generation Photonic Networksと題して、光通信ネットワークシステムでメカトロニクス技術の果たす役割に関するセッションが開かれました。筆者は本セッションで発表したのでこれについて少し詳しく述べます。最初にInvited Paperとして、NTT研究所の片桐氏から将来のフォトニックネットワークの動向およびそこで必要となる様々な技術やデバイスについて講演がありました。本セッションの発表としては、特に光ネットワークシステムで重要なWDM(波長多重通信)システムにおいて必要となるチューナブルな波長選択フィルタや光ADM(挿入分岐モジュール)の提案と実証の話題が注目されました。また、マイクロメカトロ二クス技術により、アッテネータ等を実現した研究例も報告され、メカトロ二クス技術の果たす役割についての発表が注目されました。全体を通して、光通信ネットワーク分野におけるメカトロニクス技術の貢献内容や必要性について認識されたと思います。他の通信関連の発表では衛星間光データリンク等の発表もありました。

3. その他

 本国際会議終了後、会議に一緒に参加した東工大の堀江教授の紹介により、カールスルーエ研究センターへの訪問が実現しました。本研究機関はドイツの代表的な公的研究組織であり、以前は核融合等に関する研究を行っていました。しかし、国の核に対する方針転換を受けて核に関する研究を中止し、マイクロデバイス、環境、健康、エネルギー等に関する研究にシフトしました。ここは、特にマイクロ化技術分野で有名なLIGAプロセスを生んだ研究機関であり、その内容を中心に見学、討論を行いました。具体的には、精密リソグラフィ技術、メッキ技術、エンボッシング技術などの高い基盤技術を見学させて頂き、また応用として微小分光デバイスや通信デバイス、マイクロセンサーなど様々な先端デバイスを紹介して頂きました。このLIGAプロセスで製作された実物を目にして現場の担当者と討論が出来て大いに刺激を受けました。


写真3 カールスルーエ研究センターでの討論風景

シュツッツガルトは人口60万人の大都市ですが、ドイツの都市に共通するように緑に囲まれ落ち着いたきれいな都市です。少し郊外に出ると、街を一望できる高台にはテレビ塔が建ち、上に登ると緑に囲まれた都市の周辺が一望できる絶景でした。また、シュツッツガルトには、ベンツの研究所・工場があります。その中には、歴史と栄光に彩られた名車や最新鋭のベンツ車が並んでおり、車好きにはたまらない空間でした。


写真4 カールスルーエ研究センターの全体像と主な研究テーマ(パンフレットより)

Last Modified at 2003/2/25