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講習会「知能情報メカトロニクス研究最前線」の実施報告
開催日:2003年12月24日(水)会場:名古屋大学シンポジオン
名古屋大学大学院 情報科学研究科 大岡昌博
知能情報メカトロニクス分科会では,平成13年度より3年間に渡り,情報・精密機器等のメカトロニクス機器の高機能化に有効な知能化技術について調査を進めてきました.その集大成として,今回標記の講習会を企画しました.
はじめに,三重大学教授 古橋武氏から,「明示性を追求したモデリング手法」についての講演がありました.図1に示すようなロボットモデルを想定した場合には,環境から得た情報からパターン情報を得て,分類・処理して最終的な判断結果を得るといった一連の処理をいかにして実現するかが重要となります.本講演では,とくに分類・処理について,多次元入力空間を可視化し,その可視空間におけるファジィモデルを構築するといった多次元非線形データのモデリング技術を新しく提案しました.可視化することによりロボットへの教示が容易となる利点などが示されました.
図1
次に,名古屋大学教授 有田隆也氏から,「適応的なロボット設計を目指す人工生命アプローチ」についての講演がありました.有田先生は,生命だけでなく,社会,言語,経済,芸術などに関係するシステム論において普遍性のある知見を得ることを目的に,人工生命に関する研究を進めてこられました.本講演では,先生の研究の中から図2に示す行動と構造が同時進化するロボットのほか,ロボットにおける感情の適応性,ホストコンピュータに依らない自身で進化するロボットなどロボットに関係する興味深い様々な研究事例を紹介いただきました.
図2
名古屋工業大学教授 佐野明人氏からは,「遠隔臨場感のための触覚テクノロジー」について講演いただきました.平成15年度からスタートしたトヨタ自動車寄附講座「技と感性の力学的触覚テクノロジー講座」で進める研究内容から,刃物で物体を加工する場合の仮想現実感,滑り振動覚センサおよびディスプレイ装置などについて紹介されました.その一例として,本講演で紹介された佐野先生の研究で開発された触覚センサをロボットハンドに装着した様子を図3に示します.この触覚センサは,マイスナー小体という触覚受容器の力学的解析結果に基づいて設計されたもので,把握動作中に生じるスティック・スリップ現象を計測できます.
図3
続いて,名古屋大学教授 村瀬洋氏から,「パラメトリック固有空間法による画像認識」についての講演がありました.パラメトリック固有空間法とは,図4に示すように,3次元物体の認識を行う際に,3次元物体の向きや光源を連続的に変化させてそのとき得られる2次元画像の変化を,画像の固有ベクトルから構成される部分空間上での軌跡で表現する方法です.本手法は記憶すべきデータ量を飛躍的に減少させることが可能で,ビジュアルサーボ等に適用された事例についても紹介されました.
最後に,和歌山大学助教授 中村恭之氏からは,「機械学習法のロボットへの応用」について講演いただきました.本講演では,ロボットシステムの学習法として従来提案されてきた強化学習法,記憶に基づく学習法などについて紹介されました.次に,図5に示すような区分的線形近似によるロボットの行動学習法について紹介されました.この手法は,ロボット学習において,高次空間で与えられる訓練データの分布は空間上で均質ではないことに対応するために開発されたもので今後の発展が期待されています.
図5
本講習会の開催日が年末に設定されたこともあり,参加者は少なく19名でした.しかし,上で紹介したように内容は極めて充実したものであり,参加者の期待に十分応えるものであったと思います.本講習会に参加されなかった方のために,以下に本講習会で講師を務められた先生方のホームページを紹介します.
三重大学教授 古橋 武 先生のホームページ
http://www.pa.info.mie-u.ac.jp/
名古屋大学教授 有田 隆也 先生のホームページ
http://www2.create.human.nagoya-u.ac.jp/~ari/index.html
名古屋工業大学教授 佐野 明人 先生のホームページ
http://www.toyota.nitech.ac.jp/
名古屋大学教授 村瀬 洋 先生のホームページ
http://www.murase.nuie.nagoya-u.ac.jp/~murase/
和歌山大学助教授 中村 恭之 先生のホームページ
http://www.sys.wakayama-u.ac.jp/~ntakayuk/