優秀講演奨励賞を受賞して

株式会社 日立製作所
家坂 聡

 この度、2010年3月に開催されたIIP2010 情報・知能・精密機器部門講演会において発表致しました「電子写真の二成分磁気ブラシ現像におけるキャリア現像へのAC重畳電圧の影響」に対して優秀講演奨励賞を頂き、誠にありがとうございます。ご指導を頂いた早稲田大学の川本広行教授とこの研究を率いた村上樹司氏、共に研究に取り組んだ渡辺壮氏、酒村貴生氏、そして研究室と共同研究先の方々に深く感謝致します。

  今回受賞対象となった研究は、レーザープリンタやコピー機に用いられている電子写真技術に関するものです。電子写真技術とは帯電した着色微粒子(トナー)の運動を静電力により制御し画像を形成する技術です。電子写真では、画質向上のために画像形成時にAC電圧を重畳する機構が多く見られますが、白い斑点状の画像欠陥を生じるキャリア現像 (Bead Carry Out) という現象に対しての影響は検証されていませんでした。このキャリア現像へのAC電圧の影響について、周波数や振幅等をパラメータとしたキャリア現像の発生量とトナー現像量の定量的測定、及び高速度カメラでの挙動観察を行い、多面的にその効果とメカニズムを検討しました。その結果、全パラメータに共通して、トナー現像量とトナーの振動振幅が共に増大する条件においてキャリア現像が抑制される傾向が確認され、これについてIIP2010にて報告致しました。この研究の成果は現在,実機の画質改善に役立てられています。

 学部4年から修士2年までの三年間、この研究を通して、地道な研究の積み重ねの大切さを学びました。現在、大学を卒業し製造業に従事する立場となりましたが、今後もこの経験を生かし、社会に貢献できる技術者を目指してより一層努力していきたいと思います。

Last Modified at 2011/11/25