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2016年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰

東京電機大学
山本皐平

 この度は、日本機械学会2016年度年次大会において発表させていただいた「肺の硬さ計測に向けた把持面の平行開閉動作が可能なセンサ付把持鉗子の開発」に対して情報・知能・精密機器部門 ベストプレゼンテーション表彰を頂き、大変光栄に思います。この場をお借りして、日ごろから熱心に指導して頂いている東京電機大学 土肥健純教授,桑名健太助教、聖マリアンナ医科大学 中村治彦教授、東京大学 中井亮仁特任助教、東京女子医科大学 正宗賢教授、また、多大な面からご支援いただいた研究室の諸氏、本表彰を審査して頂いた学会の皆様に深く感謝いたします。

 受賞となりました本研究は、胸腔鏡下手術での肺の硬さ計測を目的とした把持面の平行開閉動作が可能なセンサ付把持鉗子の開発に関するものです。肺の腫瘍切除の手術は肺内の空気を抜いて手術を行う為、肺の形状変化に伴い術前の腫瘍位置と術中の腫瘍位置が大きく異なります。腫瘍は正常組織よりも硬い性質があり、開胸手術においては患部を触診することで硬さの違いから腫瘍の位置を検出しています。一方、胸腔鏡下手術では直接触診が難しい為、術具を介した少ない触覚情報しかえられず腫瘍位置検出が困難となっています。そのため、体内で肺の硬さ計測を行えるセンサ付把持鉗子の設計・試作及び動作確認を行いました。

 本研究で開発したデバイスは体内での圧縮試験により硬さの計測を行うことを採用しました。そのための開閉機構にはスコットラッセル機構と平行リンク機構を組み合わせた開閉機構を考案し、鉗子把持面が上下平行に開閉することを可能としました。試作したセンサ付把持鉗子を下図に示します。鉗子先端にはMEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 3軸触覚センサ、鉗子駆動軸には開閉量を計測する為のポテンショメータが取り付けてあり、2つのセンサにより対象を圧縮した際に加わる力と変位量の同時計測が行えるようになっています。

 試作したセンサ付把持鉗子の評価としてブタ肺と質量混合比30%のゼラチンに対して硬さ計測を行った結果、フォースゲージの圧縮試験により得られた結果に対して一定の比率で硬さ計測が行えていることを確認しました。現在はセンサ付把持鉗子の細径化を目標にし、研究を進めております。

 最後になりますが、機械学会情報・知能・精密機器部門の益々の発展を祈念して、受賞の言葉とさせて頂きます。


試作したセンサ付把持鉗子

Last Modified at 2017/7/26