Home > ニュースレター バックナンバー > ニュースレター55号 > 2019年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰

2019年度部門表彰者の声:ベストプレゼンテーション表彰

株式会社 日立製作所
堀江 陽介

 

 この度は、IIP2019において発表しました「サンプリングノズル向け小型超音波洗浄機の開発」に対して、情報・知能・精密機器部門ベストプレゼンテーション表彰をいただき、大変光栄に思います。

 本発表の内容は、医用分析装置で課題となっていた血液サンプルを扱う金属製のノズルの清掃メンテナンスを自動化する小型超音波洗浄機に関するものです。洗浄機の開発では、装置に実装するための小型化と洗浄範囲の局所化およびノズルの濡れ範囲の抑制が課題としてありました。

 本研究では、洗浄機の小型化と洗浄範囲の局所化に対して、図1の構成の超音波洗浄機を提案しました。本構成では、ボルト締めランジュバン型振動子(BLT<Bolt-clamped Langevin-type Transducer>)をベースに対して水平方向に固定し、洗浄槽とは直接接しない配置で、BLTの片端に接続した洗浄ヘッドと呼ぶL字型の金属ブロックの先端が洗浄槽内の液に浸かります。超音波振動子は、図2のような構成で、洗浄ヘッドの先端にはノズルを挿入するための孔(洗浄孔)があり、BLTを駆動することで、液中の洗浄孔内にキャビテーションを発生させてノズル洗浄を行います。以上の構成の超音波洗浄機では、洗浄槽と加振部が分離しているため洗浄槽の容量と洗浄効果(加振部の振幅)を分離できる利点があります。

 提案構成の超音波洗浄機では、図3のように超音波振動による液せり上がりがロッド部に発生し、ノズルの濡れ範囲を拡大することが分かりました。そこで、ノズルの濡れる範囲を低減するため、洗浄孔の位置を遠ざけつつ振幅が増幅できる洗浄ヘッド形状として、図4のように濡れ範囲を低減しました。最終的に評価した超音波洗浄機は、サイズがW39×D55×H37 mm、使用液量1.6 mLとなり、洗浄孔内に発生するキャビテーションで洗浄できることを確認しています。図5は、ルミノール発光を利用したキャビテーション発生分布の確認結果の一例です。

 今回開発した小型超音波洗浄機を搭載した分析装置は、従来機種に比べユーザの感染リスクや作業工数を低減でき、ユーザにやさしい製品となっています。今後も、この受賞を励みに精進するとともに、新しい技術の開発を行っていきたいと考えております。 最後になりましたが、超音波洗浄機を開発するにあたり、多くのご支援を賜りました株式会社日立ハイテクの関係者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。

 

図1 提案構成の超音波洗浄機

図2 洗浄ヘッド付きの超音波振動子
   
図3 初期試作品の液せり上がり 図4 改良品の液せり上がり
   
図5 ルミノール発光によるキャビテーション発生分布の確認
Last Modified at 2020/12/22