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心力学

cardiomechanics

 広義では,心臓に関するすべての力学的現象を対象とするが,狭義では,心臓の血液ポンプとしての力学的特性,特に,心臓のポンプ作用の中心を担う左心室の収縮とし(弛)緩の状態を記述する.心筋もほかの筋肉と同様に,アクチンとミオシンのクロスブリッジにおける相互の滑りにその運動のすべてが由来し,この滑りには,エネルギー源としてのATPおよび,調節因子としてのカルシウムの存在が欠かせないが,その力発生の分子的機構の詳細はいまだに不明である.一方,アクトミオシン分子レベルから一段複雑となる筋節(サルコメア)のレベルでは,発生張力と筋長に一定の関係が認められ,筋節の長さが,Lmaxと呼ぶ2.2μmのときに最大の張力を発生し,筋長がこれより大きくても小さくても発生張力は低下する.発生張力を増加させるカテコラミンなどの生理的薬理的作用を,陽性変力作用,減少させる作用を陰性変力作用と呼ぶ.このような心筋からなる三次元の構造物である心室の収縮弛緩の力学特性は複雑で,ポンプとしての吐出量である心拍出量は,収縮開始前の心室容積,心拍数など各種条件で変化する.巨視的には,心臓の収縮特性は心室を単純な袋と仮定する圧-容積関係の理論によって良く説明され,最近では,収縮期末圧容積関係を直線で近似し,その傾き(Emax)を用いて心室の収縮特性を議論する菅の理論が広く支持されている.