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分子機械

molecular machine

 機械の部品に当たる要素が分子からできているものを分子機械という.動物の筋肉を収縮させたり細胞内の原形質流動を起こすアクチン-ミオシン系,精子のべん毛やゾウリムシなどの繊毛であるチューブリン-ダイニン系,神経細胞内の軸索流動をつかさどるチューブリン-キネシン系,バクテリアの推進力を与えるべん毛モータなどはいずれも分子機械である.工学的にはこれらは生体機能を模倣した機械や,微細加工によって作られるマイクロマシンとは区別される.分子機械は文字通り分子から構成されており,化学エネルギーを力学エネルギーに変換する,高集積性かつ超小型の動力装置になっている.分子レベルで等方的な熱揺らぎから一方向の動きを取出すことは原理的に不可能で,分子機械は力学エネルギーを取出すためには異方的な構造でなければならない.またそのエネルギー変換効率は高いが,それは化学エネルギーが通常の内燃機関のようにいったん熱エネルギーに変換された後力学エネルギーに変換されるのではなく,化学エネルギーが直接的に力学エネルギーに変換されることによる.このエネルギー変換は負荷に見合うように効率的に行われるが,そのためには巨視的な動きを触媒とする分子間相互作用,すなわち動的協力性が必要である.分子機械はエネルギーを単に変換するだけでなく,制御系を合せ持っている,すぐれて自律的な機械である.