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技術思想

industrial ethics

 技術(ことに産業技術・生産技術)についての思想.どんなに精ち(緻)な機械でも,ありふれた生活上の道具でも,人間の手と心とが参加しなければ,たんなる物でしかない.戦後日本の代表的技術経営者の一人・本田宗一郎は「技術はお勝手の包丁と同じだよ.奥さんが使えばおいしい料理ができるが,強盗に持たせれば人が死ぬ」と名言を残した.これは学問的な規定とはいえないが,技術における人間思想と実践の大切さを示している.洋の東西を問わず技術ということばは本来芸術と同義であり,古代ギリシャ以来さまざまな解釈がなされてきた.しかし18~19世紀の産業革命以後は,もっぱら機械的な技術を意味するようになり,いわゆる自由技術と分けて考察するとともに,自然科学的理論の応用の面が注目され,今日技術といえば科学技術をさすにいたった.技術の定義をめぐり,日本では戦後はげしい論争が起こった.しかし,はやくローマの技術者ウィトルウィウスが技術の基本として,①強さ②用③美をあげ,中国の古典『考工記』が自然とともにある技術,つまりエコロジー思想を示唆しているように,人間にとって真の技術とは何か,いわば科学技術と人間性との調和ということを,歴史の原点に立ちかえって,あらためて考えてみねばならないところへ現代の機械文明社会はいたっている,といえる.