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転位

dislocation

 固体を構成している原子が規則正しく配列している場合を結晶というが,この配列に部分的に欠陥がある場合,格子欠陥とよぶ.格子欠陥には点欠陥,線欠陥,面欠陥があるが,結晶材料の塑性変形に最も重要な役割を果たすのが転位と呼ばれる線欠陥である.具体的には,転位は結晶のすべり面上で既すべり領域と未すべり域の境界を示す線と言える.転位線は結晶内部においては閉ループ(転位ループ)を形成する.転位まわりの変形場は,連続体弾性体中の特異点(後述)まわりの場として近似できるが,個々の原子が問題となる中心付近ではこの近似が成立しない.このような中心部分は転位心と呼ばれる.転位のすべり面上の移動は通常の塑性変形の基本である.転位の移動が障害物によってさえぎられ,せん断応力下で次々とすべり面上に縦列にならぶことを転位のたい積と呼ぶ.転位がすべり方向以外に移動する(刃状転位の上昇)場合は原子の過不足が生じる.このため,転位上昇律速は拡散過程が支配する.また,刃状転位心に沿っての空孔や固溶原子の拡散は,完全結晶中の拡散係数より大きい転位心拡散係数が関係する.転位はまた「連続体転位」として連続体力学における特異点として定義される.この場合,弾性変位を,転位線を囲む径路に沿って一周積分したものが転位である.この転位を連続分布させたものは,弾塑性変形場,クラック問題の解析の手法として用いられる.