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溶接後熱処理

post weld heat treatment

 溶接後,溶接部の残留応力低減や延性,靭性および耐食性などの諸特性の改善を目的として行う熱処理をいう.溶接後熱処理(PWHT)は同じく溶接後に行われる鋼のHAZの硬化を防止し,拡散性水素の放出を促進することを目的とした「後熱」とは区別されている.溶接後熱処理は一般には加熱および冷却速度ならびに保持温度などを制御できる温度管理の行き届いた熱処理炉が用いられる.また,溶接物全体を熱処理できない場合はバンドヒータやガスバーナを用いた局部後熱処理が行われる.鋼を対象とした応力除去熱処理では材料のA1変態点以下の温度(870~950K)に加熱保持し,クリープ変形を発生させて溶接部の残留応力を低減させると同時に焼もどし効果により靭性が改善される.応力除去熱処理時間ならびに加熱・冷却速度は鋼種,板厚ならびに構造物の種類によって決定される.応力除去熱処理を行うことにより鋼種によってはHAZにおいて再熱割れを生じる場合があるので注意を要する.オーステナイト系ステンレス鋼溶接部では耐食性改善や組織の安定化を目的とした溶体化処理(1323~1423K)や安定化熱処理(1123~1173K)が実施される.溶体化処理によって耐食性に悪影響を及ぼすクロム炭化物が固溶すると同時に高温使用時に組織変化により問題を生じやすい溶接金属中のδフェライトが消滅もしくは減少する.また,ニオブもしくはチタン添加の安定化鋼種を対象とした安定化熱処理では,それぞれニオブ炭化物,チタン炭化物を析出させることにより,固溶炭素量を低減し,溶接後の高温使用時におけるクロム炭化物析出による耐食性劣化を防止できる.