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マイクロメカトロニクス

micro mechatronics

 微小な対象物を操作する機械および超精密な運動と位置決めが要求される機械は,図1に示すように,運動機構,アクチュエータ,センサ,コントローラからなるシステムである.この機械システムの設計には微小物体の運動と力の法則およびその利用法を論じるマイクロメカニクスと,電子の運動や情報の変換に関する法則およびその利用法を論じるエレクトロニクスが必要であり,これらの工学と技術を合せてマイクロメカトロニクスという.操作対象物や機構が小さくなると,慣性力,電磁気力などの体積に比例する力に比べて摩擦力,表面張力,静電気力などの表面積に比例する力の役割が相対的に大きくなる.また,高分解能センサを用いた計測・制御技術,各種微小外乱の低減技術,新しい微細加工技術による構成要素のマイクロ化,集積化,一体化などが必要になる.
図2にマイクロメカトロニクスが必要になる各種の機器の大きさと要求される運動の分解能を示す.マイクロメカトロニクスが重要な機器分野には,第一に極限的な空間分解能で運動・位置決めと操作を行う計測器,加工機械などの精密機械がある.この場合装置自体は必ずしも小さくない.この分野の最近の機器例に走査プローブ型顕微鏡(SPM),半導体製造装置などがある.図3はこれらの精密機械において,ナノメートルオーダの高分解能を長距離にわたって実現するために用いられる2段移動・位置決め機構の模式図である.一般に電磁モータ駆動による粗動機構の上に電歪(でんわい)アクチュエータ駆動の微動機構を搭載している.
第二は,対象が小さく,よって機械システム自体も微小であることが必須である機械で,マイクロマシンと呼ばれている.期待される適用分野は,配管系などの検査・保全機械,バイオ・医療機器,微小な商品を加工するマイクロファクトリ用機械などである.これらの機械はマイクロ化のために図1に示した各要素の一体化が重要になる.具体的にはまだ研究段階で,現在各種のセンサやアクチュエータが研究試作されている.図4はマイクロジャイロの試作例である.振動子の寸法は400×800μm2,厚さ5μmで,シリコンをリソグラフィ技術により加工する.振動子を両側の櫛歯形静電アクチュエータでx方向に加振し,y軸回りの回転によるコリオリ力でz方向に生じる変位を基板・振動子間の静電容量変化として検出する.
第三はこれら二者の中間に位置する情報機器で,情報変換部の寸法と運動は常に微小化,高精度化されている.図5は磁気ディスク記憶装置用浮動磁気ヘッドスライダで,ディスク媒体に対して50ナノメートル以下のすきまで高信頼に浮上走査するために,ナノメートル領域の物理現象の解析と設計,制御が重要になる.図6はインクジェットプリンタの印字機構で,ヒータで瞬間的に加熱して気泡圧力でインク滴を飛ばすバブル形(図(a))と電歪(わい)素子でダイアフラムを加振してインク滴を飛ばす電歪形(図(b))がある.高速で正確なインク滴の形成・飛しょう技術には機械力学,材料力学,流体力学,熱力学,伝熱学などに基づく解析と設計ならびに微細加工技術などが必要である.

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