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超精密旋盤

ultra-precision lathe

 工作物を回転させ,その回転軸に平行に,または直角に刃物を移動させながら削る機械である旋盤の一種で,回転対称な光学部品を切削のみで加工できる精度を有するものを超精密旋盤と呼ぶ.光学部品として必要な光学的表面や形状を得るためには工作機械の母性原理が最大限に発揮されることが必要で,そのためには,工作物の回転の正確さ,刃物の移動の正確さ,刃物先端の鋭利さとその持続性が最も重要な要素である.
刃物の材料としては単結晶ダイヤモンドが使われるので,超精密旋盤はダイヤモンド旋盤と呼ばれることが多い.ダイヤモンド工具は鉄系材料の切削には向かないので,ダイヤモンド旋盤では銅・アルミニウムなどの軟質金属や,プラスチックなどの非金属材料が加工の対象になる.加工される製品のおもなものとしては,光学機器用レンズ,レンズ用金型,レーザ用金属反射鏡,プリンタ用ロールなどである.形状精度50nm,表面粗さ10nmRyの加工が可能である.
刃物を工作物の回転に対して直角に移動させる形式の機械では,工作物主軸を載置するスライダ(図中のテーブル)と工具を載置するスライダ(図中のサドル)はT字形に配置される場合が多い.工作物主軸スライダの移動方向をX軸,工具スライダの移動方向をZ軸と呼ぶ.刃物と工作物の相対位置を同時二軸CNC制御することにより,平面だけでなく球面や非球面の加工もできる.位置の検出は光学スケールやレーザ干渉測長器が使用される.
工作物は真空チャックにより主軸に取付けられる.主軸の軸受けは使用回転数や負荷の大きさにより油静圧か空気静圧が使われる.駆動するモータは主軸と一体型のものが多いが,振動が問題になる場合には弾性軸継手や磁気軸継手を介して駆動される.回転精度(NRRO)は20nm程度である.
スライダは通常サーボモータと送りねじで駆動される.スライダになめらかな動きをさせるために,送りねじにも摩擦の少ない方式が使われる.方式としてはボールねじやねじのフランク面を油または空気静圧で支持させる静圧ねじがあるが,規格化が進んでいること,入手が容易で比較的安価であること,静圧ねじのように特別の付属装置を必要とせず使い勝手がよいことなどの点から,一般には高精度クラスのボールねじが使われる.送りねじ方式のほかに,摩擦駆動方式や金属ベルトあるいはワイヤ駆動方式も実用化されており,振動の発生を抑制しながら駆動する手段として有効であるが,駆動できる負荷の大きさが制約される.
スライダの案内は油静圧か空気静圧が多いが,有限形V-V転がり案内にしたものもある.またボールねじ軸心の振れ回りによる運動真直度の低下を避けるために,ボールねじのナットを平行バネ継手や静圧継手を介してテーブルに固定する場合がある.運動真直度としては20nm/180mm程度が実現されている.
鏡面に加工するには,工作物と工具との間の相対振動をなくすことが必要である.案内面を含めた駆動部からの振動を極力小さくするほか,外部から伝わってくる振動を防止することが必要で,スライドを載置するベッドは空気マウントなどの除振装置の上に置かれる.また,加工形状精度を確保するためには,スライダの運動真直度や工具の位置制御精度を高めることが必要であるが,ベッドの熱変形によるスライダ間の相対変位を抑制することも重要である.そのためにベッドの材料として,熱膨張係数が鋳鉄よりも小さいグラナイトを使用することや一定温度流体を機械構造内に循環させる方法が採られることもある.
回転対象な部品を加工する場合,加工の終了時点で刃物の位置が工作物の回転中心に一致していることが必要である.そのために,主軸中心に対する高さとX方向の位置をあらかじめ測定し,微細に調整するための工具ステーションを備えたものもある.また球面または非球面を同時二軸制御方式で加工する場合,刃先上の切削点が移動するので刃先を正しく円形に成形することが必要である.刃先の半径誤差の影響を避けるため,旋回テーブルにより工具を旋回させながら常に刃先の同一点で切削が行われるようにすることもある.

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