原子,分子系のポテンシャルエネルギーはそれらを構成する電子および原子核の電荷間に働くクーロン力に基づく.多くの場合,電子の運動は原子核の運動に対して早いから,電子状態については平均化して,原子間あるいは分子間ポテンシャルという.これらのポテンシャルφの空間微分\(\nabla \phi \)は原子,分子間に働く力Fになり,斥力を正にとれば\(\boldsymbol{F} = - \nabla \phi \)である.ポテンシャルは\(\phi \left( \infty \right) = 0\)として\(\phi \left( r \right) = \int_r^\infty {\boldsymbol{F}\left( \boldsymbol{r} \right) \cdot } d\boldsymbol{r}\)と定義されるのが普通である.近距離場では電子運動が重なれない(パウリの原理)ことによる斥力,遠距離場では静電荷(S),誘起電荷(D, Q)によるもの\(\left( {S - S,S - D,D - D, \cdots } \right)\)が主で,後者に基づくものは分散力,van der Waals力などといわれている.定性的には\(\phi = \varepsilon \left\{ {{{\left( {\sigma /r} \right)}^m} - {{\left( {\sigma /r} \right)}^n}} \right\}\)の形(Lennard Jonesポテンシャル)で表されるが,物質によりいろいろな数式表現のポテンシャルが提案されている.最近では電子のSchro¨dinger式を直接数値計算して,より厳密なポテンシャルが求められつつある.