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人工知能

artificial intelligence

 人間の知能を対象とする学問分野で,知能を機械で実現する工学的立場と,人間の知能のメカニズムを科学的に解明する立場がある.人工知能(AI)が生まれた1956年ごろは,定理の証明,ゲーム,パターン認識,人間の問題解決などが研究されていて,論理学や認知心理学,計算機科学などの分野に属していた.その後独立した学問となり,研究分野も大きく変遷してきた.
AIの基礎分野としては,知識表現,推論,探索,学習などがある.知識の量が増えるとその表現や利用が重要になる.認知心理学で提案されたプロダクションシステムは,プロダクションルールとして知識を表現し,ルールの起動によって推論を進めていく.またフレーム理論に基づき,まとまりのある知識を関連づけて表現する方法が開発されている.論理的知識は述語論理によって表現される.常識のような必ずしも正しくない知識を用いた推論も非単調論理として研究されている.ブラックボード(非同期で動作するいくつかの計算モジュールが共有してもつメモリ:黒板モデル)は,多様な知識を統一して扱うのに適した知識表現法である.探索では,対象の性質に応じた知識の利用によって,探索範囲を限定している.学習の手法は,未確立であるが,多数のサンプルからの帰納学習,述語論理に基づくもの,グラフ表現に基づくもの,事例に基づくもの,ニューラルネットワークによる学習の導入などがある.
AIの応用は多いが,その代表例が図示されている.環境から情報を得て,環境に働きかけるロボットとしては,古くから眼と手を持つロボット,見て動き回るロボットなどが研究されてきた.最近では計算機の能力の向上により,感覚と行動の密な結合が可能になっている.ロボットの技術を福祉に役立てる試みもある.環境に適応するために,Aライフ(生命体の特徴を持つ人工システム:人工生命)の考えも応用されている.ビジョンとしては,ロボットの眼だけでなく,文書や図面を理解したり,人間の行動を理解するヒューマンインタフェース,あるいは高速処理により動画像から必要な情報を得る動画像処理などの研究がある.自然言語処理の中心は,音声,文書,キーボードによる文を解釈することである.文法に従って統語解析(構文解析)をする部分は対象によらないが,この結果から意味を考慮して解釈を絞る部分は対象に依存する.知識工学は,実用的な知識を蓄えておき,必要なときに推論によって答を取出すエキスパートシステムを生み,広範囲な分野で実用化されている.知的教育システムは,人間の理解に関する認知科学的研究に基づいている.娯楽の需要は大きく,教育と娯楽を結合する試みもある.
AI用言語として,LISP,PROLOGなどがあるが,データベースの検索言語にも影響を与えている.AI用並列処理としては,複数の処理装置(エージェント)が分散され,それらが協力して知能を発揮する方法が研究されている.

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15/1006096.txt · 最終更新: 2017/07/19 08:49 by 127.0.0.1