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人工物工学

artifactual engineering

 工学の内側からの学問的反省によって生まれた新しい学問であり,人工物がもたらした問題に対して有効な解決方法を与えることのできる知識の体系化を目的としている.人工物という言葉は,普通,・モノづくり」の「モノ」を表す語として,ハードをおもに,ソフトも付加した意味に用いられる.最近のわれわれの生活は,工業製品に代表される人工物によって豊かになったが,その一方で,地球規模の資源の枯渇や環境破壊,事故の大型化,貿易摩擦や過当競争などの解決困難な問題が生じた.しかし,現在の工学は,このような問題の解決に有効な知識を提供しているとはいいがたい.現在の工学が持つ構造的な問題の一つは,専門分野別に領域が著しく細分化していることであり,これが人工物の設計,生産,利用において総合的な取組みを困難にしている.もう一つは知識記述の限界であり,工学は演えき論理を基本にして知識が記述され体系化されているが,演えき論理によって記述された知識はつくられたモノを分析的に理解するためには有効であっても,新たにモノをつくり出すことに対しては有効とはいえない.このような工学の持つ構造的な問題を学問的に深く掘り下げつつ,理想的なモノつくりのための知識の体系化をめざした研究が人工物工学として展開されている.

17/1006104.txt · 最終更新: 2017/07/19 08:50 by 127.0.0.1