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境界層

boundary layer

 物体のまわりの流れは,レイノルズ数が大きいとき,図に示すように,非粘性流として取扱うことができる主流と,粘性の影響を考慮しなければならない物体表面近くのごく薄い境界層に分けて考えることができる.この境界層の概念に基づく境界層方程式によって流れを解析するのが境界層理論である.境界層厚さ\(\delta \left( x \right)\)は,速度\(u\left( {x,y} \right)\)が境界層外縁速度\(U\left( x \right)\)の99%となる厚さとして求められることが多い.境界層の厚さをもっと明確に表現するため,境界層の存在による排除効果を示す排除厚さ,運動量減少を示す運動量厚さ,および運動エネルギー減少を示すエネルギー厚さが用いられる.物体の前縁から下流方向に発達する層流境界層はやがて不安定になり乱流境界層に遷移し,その結果,境界層厚さは急に厚くなり,速度分布も変化し,壁面せん断応力が著しく増大する.乱流境界層の構造は,固体表面の影響を直接受ける内層とその外側にあって主流に接して乱流混合を行っている外層からなっている.内層のうち固体表面に接した部分には粘性力が支配的な粘性底層がある.境界層厚さが厚くなり物体表面近くに逆流が発生することを境界層のはく離という.層流境界層がはく離したのち再付着してはく離泡を形成することがある.

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