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水素エンジン

hydrogen engine

 燃料に水素を用いる内燃機関.炭素を含有しない燃料であるため,潤滑油に起因する極微量を除き,公害物質である炭化水素,一酸化炭素が排出されず,さらに地球温暖化の要因の一つである二酸化炭素が排出されない.一方,窒素酸化物は,理論空燃比近傍の燃焼では,多量に排出されるが空気過剰率約2以上の希薄燃焼では,問題ないレベルに低減される.従来のガソリン用内燃機関を使用し水素を燃焼させた場合,①高負荷時のバックファイアなどの異常燃焼の発生,②体積効率の低下などが生じ,運転不能あるいは出力の低下などの課題が生じる.①の原因は,水素がガソリンに比較し燃焼速度が速く,最小点火エネルギーが小さいため,高負荷域で,点火プラグ先端,排気バルブ,燃焼室デポジットなどを着火源とする過早着火が発生するためである.②の原因は,予混合により水素を供給すると,混合気中の水素の占める体積割合が理論空燃比においては約30%にも達するためである.①の対策としては,燃焼室への水噴射方式,燃焼温度低下をねらった希薄燃焼方式,ディーゼルエンジンの様な圧縮行程後期水素筒内噴射方式(図),ならびに構造上排気バルブを有せず,燃焼室温度の低いロータリエンジンの適用などが研究されている.②の対策としては,過給方式,水素筒内噴射方式などが研究されている.

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