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2017/10 Vol.120

「ゴミをでんきにリサイクル」
鈴木 偲温 さん(当時8 歳)
このきかいは、どこのくにでもでるゴミを、わたしたちにとってとてもひつよう、でんきにかえるきかいです。せかいの大人たち子どもたちにゆたかな生かつを送ってほしいです。

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特集 日本機械学会のグローバル化~アジア諸国との連携のあり方~

Work Hard, Enjoy Life!

金 尚奎〔マツダ(株)〕

日本留学を決意するきっかけ

韓国で生まれ育った私は、1997年当時23歳の時に来日した。留学生として大阪で10年間を過ごし、マツダ()に入社した2007年からは広島で暮らしている。入社以来ディーゼルエンジンの開発業務に携わっている。

韓国の大学で3年生になった私は、「これからの時代は、技術者も語学力を兼ね備えなければ……」という思いで海外留学を考えていた。英語圏は地理的にも文化的にも遠く、経済的な負担も大きいと感じた。次善策として、「母国から一番近い技術先進国」日本を選んだ。日本語学校在学時に、日本への留学生を対象にした支援制度や奨学金の情報を耳にし、周囲の留学生たちの頑張る姿にも刺激され、次第に日本の大学で学びたいと思うようになった。すでに高校卒業から6年が経っていたが、日本語と大学の受験勉強に励んだ。第一志望ではなかったが、運よく志望する大学に入ることができた。大学の卒業研究と修士・博士課程では、ディーゼルエンジンの数値解析に関する研究に取り組み、企業との共同研究にも参画していた。そこで今の上司に巡り合え、当社に就職するきっかけになった。

最初は語学研修のつもりで来日したのだが、日本語を習得することで、「日本の大学で学ぶ」という選択肢が加わり、また大学で専門知識を身に付けることで、さらに「日本の会社で働く」という選択肢も増えた。留学という第一歩を踏み出したことで、今の私があると思う。留学当時は言葉や文化の違いを感じることもあったが、「壁」を乗り越えることで可能性が広がるということを実感した。

日本企業で働いて感じること

日本の会社に対する私の第一印象は「技術者が花形」だということである。マツダで働いていると、留学生時代に見ていたTV番組の「プロジェクトX」や「1100食限定のラーメン屋」などで映っていた「熱意溢れるエンジニア」や「味にこだわるラーメン職人」のイメージと自分たちがオーバーラップすることがときどきある。何事でも慎重で丁寧に仕事をし、クオリティが高い。私自身、その中で働く技術者として楽しいと感じている。同じ漢字だが、開発の仕事は「楽」ではないが「楽しい」。例えば、私には大変そうに見えるマラソンでも、マラソンが趣味の人にとっては、楽しいと思うのと近いかもしれない。自分が開発に携わったSKYACTIV-Dを搭載した車が世に出され、世界の街中を走り回っている。自らもその車(CX-5XD)に乗っている。その力強い走りと燃費の良さには、妻も合格点をくれた。子どもらも「誇り」に思ってくれて、家族から応援されていると思うと自ずと嬉しくなる。

20166月には「低圧縮比クリーンディーゼルエンジンの発明」(特許第5338268)で、平成28年度全国発明表彰恩賜発明賞を受賞する快挙を成し遂げ、胸がいっぱいになった(写真1)。「志」をともにしてきた上司、同僚、部下に感謝を伝え、仕事仲間と素直に喜び合った。今も次世代SKYACTIV-Dのさらなる進化を目指して、互いにモチベートしながら開発に余念がない日々を過ごしている。
EnjoyHardWork!」、ときどき社内で目にするフレーズである。ワーク・ライフバランスを考えると、個人的には「WorkHard,EnjoyLife!」と言いたいところだが、「Life」はプライベートの範疇に入るので、人の「Life」に踏み入れないよう配慮する日本の会社では敢えて「Life」が入っていない「EnjoyHardWork!」が好まれるのだろうと、日本居住歴20年になる今となっては、心の中で静かに思うのである。

写真 1 平成 28 年度全国発明表彰式にて


<正員>

金 尚奎

◎ マツダ(株) エンジン性能開発部 シニア・スペシャリスト
◎ 専門:内燃機関、噴霧・燃焼の CFD 解析


 

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