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2021/9 Vol.124

機構模型

工部大学校の「機械学」教育機器(機械遺産第100号)

ハートカム

明治7(1874)年/真鍮、鉄、木製台座/H400, W300, D303(mm)/

東京大学総合研究博物館所蔵

「HEART CAM」の刻記あり。工部大学校を示す「IMPERIAL COLLEGE OF ENGINEERING. TOKEI. 1874」の金属プレート付。工科大学もしくは工学部の備品番号の木札があるが判読不能。

上野則宏撮影/東京大学総合研究博物館写真提供/インターメディアテク展示・収蔵

[東京大学総合研究博物館]

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特集 画像で見る機械工学

[ 熱工学ギャラリーで公開中の動画紹介 ]液柱内マランゴニ対流における粒子集合構造のダイナミクス

松本 聡(宇宙航空研究開発機構)

動画リンク:熱工学ギャラリー 液柱内マランゴニ対流における粒子集合構造のダイナミクス (ted-jsme.jp)

宇宙実験

国際宇宙ステーションでの流体実験

国際宇宙ステーション(図1)の日本実験棟「きぼう」での微小重力を活用し、地上では形成不可能な大型液柱でのマランゴニ対流実験を行った。浮力対流を排除し、純粋なマランゴニ対流を誘起することで、その遷移現象と粒子集合構造を観測する宇宙実験である(1)

図1 国際宇宙ステーション

実験方法

液柱対流の速度場、温度場の可視化

動粘性係数 10 mm2/sのシリコーンオイルによる液柱を形成し、可視化のために、直径 180μmのトレーサ粒子を混ぜた。液柱端面に温度差を設けると自由表面に温度勾配が生じ、マランゴニ対流が誘起される。対流は、CCDカメラにより透明な加熱ディスクを通して撮影した。自由表面の温度分布を捉えるために赤外線イメージャにより撮影した(図2)

図2 液柱マランゴニ対流の観測方法

粒子集合構造(PAS)

粒子がひも状に連なる特異な現象

マランゴニ対流が強くなると、定常流から振動流に遷移し規則的な流動構造が形成する。振動流の限定された条件下では、トレーサ粒子が閉曲線上に集合し、流動に同期して回転する現象が観測された。これは粒子集合構造(Particle Accumulation Structure, PAS)と名付けられた(2)。閉曲線は周方向に整数モード数の対称性を持ち、モード数mは液柱の高さ/直径比に依存した(図3)

PASの尖った部分は温度の低いところに沿っていることが明らかになった(図4)。自由表面近傍では流線が非常に混み合うので、有限の大きさを持つ粒子は流線を乗り換えて移動して閉曲線上に連なる。

粒子集合構造の数値解析結果5に示す。尖った部分が三つあるモード数3の場合を示している。白いひも状のものが閉じた流管であり、それに沿って粒子が流動していく様子がシミュレーションで再現された。

左から(1)モード m =1(2)モード m =2 (3)モード m =3

図3 流動モード構造における粒子集合構造

図4 PAS と表面温度分布

図5 PAS の数値解析


参考文献

(1) Kawamura, H., Nishino, K., Matsumoto, S. and Ueno, I., Report on Microgravity Experiments of Marangoni Convection Aboard International Space Station, Journal of Heat Transfer, Vol. 134, No. 3 (2012) doi:10.1115/1.4005145.

(2) Ueno, I., Experimental Study on Coherent Structures by Particles Suspended in Half-Zone Thermocapillary Liquid Bridges: Review, Fluids, Vol. 6, No. 105 (2021) doi: /10.3390/fluids6030105.


<正員>

松本 聡

◎宇宙航空研究開発機構 有人宇宙技術部門 主任研究開発員

◎専門:熱工学、流体工学

 

 

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