和文学術誌目次
日本機械学会論文集 掲載論文 Vol.91, No.943, 2025
公開日:2025年3月25日
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/transjsme/91/943/_contents/-char/ja
<動力・エネルギーシステムの最前線2025 (TEP)>
微粉炭ボイラ内部を想定した高温硫化腐食雰囲気下における2.25Cr-1Mo鋼の腐食疲労特性
吉田 匡秀
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00196
微粉炭火力発電所ボイラ水冷壁管では硫化腐食環境下による疲労き裂が生じており,変動型再エネ大量導入によって火力発電所の出力変動が増え,疲労き裂も増加する懸念がある.そこでボイラ内部を模擬した腐食環境下で水冷壁管材の疲労試験を行い,腐食環境下での疲労特性について検討した.なお装置上の制約から水蒸気は添加しなかった.腐食疲労試験の結果からベストフィットカーブ(回帰直線)を作成すると,同じひずみ振幅において,硫化腐食環境では大気環境と比べて破損繰り返し数が短くなった.我々は硫化腐食環境において破損繰り返し数が低下したのは,試験片表面の腐食ピットが疲労き裂の起点になったためだと考えている.
蓄熱技術の経済性に関する定量評価
松尾 雄司,大槻 貴司
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00210
変動性再生可能エネルギー(太陽光及び風力)の大量導入が予想される中,エネルギー貯蔵技術の重要性はますます高まっている.本研究では,蓄電池と比べて設置コストが安い一方でサイクル効率が悪い蓄熱技術に焦点を当て,2050年までに日本のエネルギーシステムが完全に脱炭素化することを想定した状況の中で,蓄熱技術がもつ経済性について,線形計画法に基づく技術選択モデルを用いて定量的に評価した.その結果,蓄熱システムのコストが5,000円/kWhを下回ると最適解で大量の蓄熱システムが導入されることが示唆された.また,サイクル効率が蓄熱システムの価値に大きく影響することも示された.
バイオディーゼル駆動水冷ディーゼル機関における熱電素子を用いた排熱発電の検討
近藤 千尋,麻原 寛之,森 嘉久
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00212
バイオディーゼル駆動小型熱機関においても,さらなるCO2低減のため,排気排熱回収が有用である.本報では,水冷排熱回収ユニットを試作し,熱電素子の発電電力を,MPPT制御により最大電力点追従するとともに後段に適切な電圧とするDC-DCコンバータを実装した電力変換回路を介して,バッテリ給電するシステムを構築した.その結果,素子の負荷接続で生じる電流によるペルチェ効果によって,無負荷時に比べ素子表面温度差が縮小する現象や,素子耐久性検証のためのユニットの振動を実測した.さらに,給電中の素子出力電流-電圧の動特性から素子内部抵抗を見積もるとともに,回路効率が模擬電源の結果と同等となることを示した.
先進型原子炉の設計プロセスの革新を実現するARKADIAの開発(設計最適化支援ツールARKADIA-Designの開発)
田中 正暁,堂田 哲広,浜瀬 枝里菜,桑垣 一紀,森 健郎,岡島 智史,菊地 紀宏,吉村 一夫,松下 健太郎,橋立 竜太,矢田 浩基
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00229
先進型原子炉システムの設計最適化や安全評価を支援する「AI支援型革新炉ライフサイクル最適化手法(ARKADIA)」の一部として,設計基準事象までの設計課題に適用する「ARKADIA-Design」の整備を進めてきた.本報では,今後の開発課題とともに,ARKADIA-Designにおける,炉心設計及び炉構造設計,並びに保全に関わる点検工程の最適化プロセスの実装状況と,最適化検討とともに個別評価におけるプラント挙動の解析に必要な複数の解析コードの連成によるマルチレベル解析技術の整備状況を報告する.
<材料力学,機械材料,材料加工>
円筒ハニカムコア構造の横弾性係数評価
関澤 光亮,石田 祥子
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00002
本研究の目的は円筒ハニカムコア構造のせん断剛性を評価することである.タイヤをはじめとする回転機械のラジアル荷重を支持するために設計された円筒ハニカムコア構造は,加減速時にはラジアル荷重だけでなく円周方向にせん断荷重を受けることから,設計変数を変更した円筒ハニカムコア構造においてせん断実験および有限要素解析を実施した.設計変数の変化に対する横弾性係数の傾向は実験と解析で一致し,コアサイズを大きくすると横弾性係数は減少すること,外周部の横弾性係数は内周部よりも小さいこと,コア高さを低くすると円筒ハニカムコア構造の横弾性係数は平板ハニカムコアのそれに収束することが明らかになった.
高リフトオフ対応のせん断波用電磁超音波センサの開発
吉田 侑生,山崎 友裕,古田 久人,濱田 和生
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00028
スケールや燃焼灰などが付着した測定対象にも適用可能な高リフトオフ対応の電磁超音波センサの開発を目的とし,鋼板の板厚測定においてリフトオフを増加させながら受信信号振幅の測定を行った.ここでは狭隘部での測定を考慮し,高さを20mm,有効面積を10mm×10mmに制限した.有限要素解析結果を基に測定部での板厚方向の磁束密度を高めるための改良を行った結果,測定部以外での超音波の発生を抑制した場合でも,板厚測定が可能なリフトオフが5mmまで向上し,板厚の測定精度は1%以内であった.
<熱工学,内燃機関,動力エネルギーシステム>
蒸気供給ヒートポンプシステムの技術経済性分析(高温冷媒の採用と水蒸気圧縮機の撤去によるコスト削減の可能性)
甲斐田 武延,マーティン・ピール・アンダーセン,森 昌司
https://doi.org/10.1299/transjsme.25-00004
蒸気供給ヒートポンプ(蒸気HP)は,産業部門の高効率な脱炭素化のための重要技術として期待されている.既存の蒸気HPは,R245faとR134aの混合冷媒を使用するヒートポンプ,フラッシュタンク,水蒸気圧縮機の3つのユニットで構成されている.しかし,近年,新たに高温用冷媒が開発されたことにより,蒸気HPの技術的選択肢が増えてきた.本研究では,蒸気HPシステム改良の可能性を探ることを目的とし,新たな冷媒の採用によるエネルギー性能と経済性への影響を分析した.その結果,R1336mzz(Z)やR601を冷媒に用い,併せて水蒸気圧縮機を取り除くことによって,COPを向上させ,かつOPEXとCAPEXをともに削減できる可能性があることを示した.
<機械力学,計測,自動制御,ロボティクス,メカトロニクス>
階段環境での荷物運搬を支援する人間協調型倒立振子ヴィークルの制御
大平 峻,立﨑 遥己,竹内 朝音,橋本 秀紀
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00172
本論文では,階段環境下での搬送作業の効率向上と人間の負担軽減を考慮した二輪型倒立振子ヴィークルを用いた搬送支援システムを提案する.提案システムは,階段を昇りながら行われる搬送作業を考慮し,人の力とアドミッタンスモデルの応答から推定される動作意図に基づく可変アドミッタンス制御を用いる.提案システムでは,階段環境での作業を考慮し,簡易な人間の操作意図を利用することで,シンプルな機構のヴィークルを用いて不整地である階段でのタスクを効率的に処理することを試みる.また,提案システムは,従来法では困難であった積載物重量の変化に伴う負荷荷重の変動にも対処することが可能である.
アイリス多指ロボットハンドの幾何学的解析
黄 鈞韜,江上 正
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00224
著者らはアイリス多指ロボットハンドを提案してきている.このハンドは単一のアクチュエータで駆動し,対象物を正多角形の形状を保って同心円状に多点で全周囲把持を行い,任意の枚数のブレードを持つハンドを同一の機構で実現できる特徴がある.本研究では,円柱対象物に対する全周囲多点把持,直方体対象物に対する多点挟み込み把持について,ブレードの回転角度と把持可能な対象物の大きさについて,幾何学的解析を行っている.そして,2つの異なる把持方法における解析から,指の本数と指の断面形状の違いにより,把持できる対象物の大きさについての比較検討を行い,アイリス多指ロボットハンドの選定基準に一定の指針を与えている.
実時間ハイブリッド実験による非強度部材の振動再現
川口 正隆,竹内 悠剛,水谷 雄大,田中 和人,渡辺 公貴
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00258
建設機械は稼働現場において過酷な振動を受け,構造物には破損が生じやすいので,破損メカニズムの解析,強度評価の方法等の研究が行われてきた.新機種開発時には各種の強度実験やシミュレーションを用いて,主要構造物の強度評価がなされる. しかし,ドアやカバー等の板金構造物については,実機を用いて実験を行っており,多大なコストと労力を要する問題がある.実時間ハイブリッド実験は,構造物にかかる荷重や振動を解析し,疑似的に振動再現することで,実機を組み上げることがない実験方法であるので,コストと労力を削減することができる.本研究では,ボイスコイルモータを用いた実時間ハイブリッド実験システムの開発について述べる.
<設計,機素・潤滑,情報・知能,製造,システム>
4M情報を活用した作業分析・改善点抽出方式の開発
辻󠄀部 晃久,小倉 孝裕,西 佳一郎
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00088
顧客毎に仕様が異なるカスタマイズ製品の生産では,製品仕様によって工程・製法が異なるため標準作業時間の設定が難しい課題がある.また現場での継続的な作業改善には,専門知識を有する熟練者が多くの時間をかけて分析する必要があるが,人材確保・育成が難しい課題がある.本研究では,4M(huMan,Machine,Material,Method)情報を活用し,作業内容検知による正味作業時間推定と標準作業時間の設定単位の自動選定を特徴とする(1)標準作業時間推定方式と,作業内容をスコアリングする作業評価モデルを特徴とする(2)ムダ作業自動抽出方式を開発した.そして昇降機を対象とした実証実験の結果を報告する.
感性とデザインのトレードオフ関係を考慮した言葉によるエンジニアリング
勝又 暢久,原田 創之介,福原 颯,荒川 雅生,中尾 彰吾,藤原 雅彦
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00174
作り手・設計者であるデザイナは,受け手・消費者であるユーザに「共感」が得られるデザインを目指している.しかし,ユーザが発する感覚・感情的な「言葉」の意味合いとデザイナが理解する「言葉」との間にギャップがあるという問題意識から,ユーザがデザインに求めている意味を誤解がないように反映したデザインを提案することを目的に,言葉によるエンジニアリングというという手法を提案した.ゴルフグローブのパッケージデザインを例にとり,6つの感性ワード(手に取りたい,斬新な,目立つ,かっこいい,かわいい,高級な)に対するユーザの言葉をアンケート調査した.またユーザの評価値とパッケージデザインのデザイン要素の関係性を数量化理論I類により分析し,評価値とデザイン要素の関係をデータベース化した.さらに,感性ワードの評価値を希求水準に置き換え,複数のデザイン要素から最適解を求める多目的最適化問題として,満足化トレードオフ法によりデザイン要素を求める手法を提案した.6つの感性ワード間の全30パターンについてトレードオフ分析を行い,ユーザがパッケージデザインにもつ印象をベースにした感性ワード間のトレードオフ関係を求めた.また希求水準を満たすパッケージデザイン要素の組み合わせから,ユーザの感性に沿ったデザイン例とデザイン方針を示した.
人を惹き込む瞳孔に自己影を重畳合成した瞳輝インタフェース
中瀬 悠汰,瀬島 吉裕,渡辺 富夫
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00241
「目は口ほどにものを言う」という諺があるように,強い情動を伴った瞳は輝く印象を与え,人はその瞳の輝きに強く惹きつけられる.この瞳の輝きを工学的に再現することで,人を惹き込む要因解明やそれを組み込んだソーシャルロボットの開発が期待される.本研究では,眼球表面上の反射に伴う映り込みに着目した瞳輝表現手法を提案した.この手法は,瞳に疑似的な自己像として人物影を重畳合成することで瞳の輝きを印象付ける.さらに,これまでに開発してきた瞳孔反応システムに提案手法を適用した瞳輝インタフェースを開発した.開発したインタフェースを用いて印象評価実験を行い,本提案手法および開発したインタフェースは,映り込みを認識させる仕組みとして効果的であり,とくに男性に対して有効であることが示された.
<環境工学,産業・化学機械,システム安全>
貯水池における連続式空気揚水筒の揚水性能に関する実地調査実験(寸法の異なる実機を用いた取水口近傍および浅層の水流計測)
早藤 大輔,中村 淳一,山岸 真孝,野本 真広,中田 亮生
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00113
本研究は,間欠式空気揚水筒の更新設備として,連続式空気揚水筒が2012年に福岡県内の貯水池で複数基導入され,その揚水性能を調査する機会を得て実現したものである.対象の揚水筒は4基で,その直径と長さの組み合わせがすべて異なる.実験では,各揚水筒が複数の空気量の条件で運転されている状態で,揚水筒下端の取水口と気泡噴流が現れる水面付近の流動層の流速分布を,電磁流速計を用いて直接計測した.これによって,深層からの取水流量と浅層での連行流量の内訳を含む全揚水流量を把握して各寸法がそれに及ぼす効果を明らかにし,設備設計に使われる浅枝ら,池田らの計算式と比較したので報告する.
<交通・物流>
曲線におけるレールの疲労破壊の照査方法の提案
細田 充,弟子丸 将
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00257
本研究では,軌道構造の汎用的な設計・照査方法を構築する一環として,曲線におけるレールの疲労破壊の照査方法を検討した.設計作用のうち横圧の算定に用いる変動横圧係数について,直線におけるレールの疲労破壊の照査方法を基本とし,曲線半径等の各種軌道パラメータを変化させて車両が曲線を走行した際に発生する横圧を推定し,曲線半径に応じた横圧の発生確率を反映する方法を検討した.次に応答値の推定方法を確立するため,左右両側レールを模擬したFEMモデルによってレール応力を推定した.上記の検討に基づき,曲線半径に応じたレールの疲労破壊の照査方法を提案し,まくらぎ間隔を拡大した場合の疲労破壊に関する安全性を照査した.
<宇宙工学>
摩擦ダンパーを用いた再使用型ロケット着陸脚緩衝機構の提案と全機落下試験による検証
竹内 伸介, 橋爪 達哉, 伊藤 隆, 野中 聡, 松永 学, 森 初男
https://doi.org/10.1299/transjsme.24-00216
本論文は,再使用型ロケット脚部緩衝機構に摩擦ダンパーを適用する事の提案,及び実際に適用した機体の全機落下試験の結果,及びその評価を行っている.試験の結果,摩擦ダンパーは予定通りに機能して問題なく着地が出来ており,また設計結果として過去の事例よりも軽量な脚が出来上がっている.試験でのダンパーのストローク量は機体を剛体と仮定した事前の予測と比較して小さかったが,落下の運動エネルギーの3割程度は機体の弾性変形・振動として散逸されていると推測され,その修正を加える事で試験結果と概ね一致する解析結果が得られた.
キーワード:和文学術誌目次
表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。
デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)