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2025/4 Vol.128

表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。

デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)

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特集 マテリアル分野におけるデータ駆動研究の進展

ミクロ組織・特性連関の逆問題解析

白岩 隆行(東京大学)

はじめに

材料の組織-特性連関と信頼性

持続可能な社会の実現に向けては、より環境負荷の小さいエネルギーシステムへの移行と、高効率な移動体の普及が必要である。そのためには、システムを構成する材料について、軽量化のための高強度化や過酷な使用環境下で壊れないタフさが求められる。しかしながら、一般に材料の強度を高めると、変形能が低下し、延性や靱性は低下する。このような特性のトレードオフを克服するためには、組織と特性の連関を素過程に分解して考えることが有効である。組織-特性連関の概念図を図1に示す。材料の微視組織は結晶構造や粒形状、化学組成分布などにより記述される。材料に力学的・環境的な負荷が与えられると、微視組織にもとづく微視的な変形や破壊が生じ、これらの積み重ねとして、引張強度や延性などのマクロな特性が決定される。また材料の信頼性は、これらマクロな特性の組合せや時間・環境依存性により定義できる。

図1 材料の組織-特性連関

例えば、自動車の車体構造などに用いられる金属材料の開発において、引張強度(TS)×破断伸び(EL)の値は、材料の強度と延性のバランスを評価する上でよく用いられる指標のひとつである。このように材料信頼性の指標を定義することで、材料開発にデータ駆動型解析を適用することが可能になる。

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