会長挨拶
会長就任のご挨拶
魅力を高め、発信する学会へ
2025年度(第103期)会長
岩城 智香子〔東芝エネルギーシステムズ(株)〕
2024年、世界の平均地表気温は過去最高を記録し、日本でも統計開始以来の最高値を更新しました。また、大規模な道路陥没事故は、インフラ老朽化の深刻さと影響の大きさを浮き彫りにしました。環境、エネルギー、社会インフラといった社会課題への危機感はますます高まっており、これらの解決には機械工学の技術が不可欠であることは明白です。機械工学の本質的な魅力は、安全で豊かで持続可能な社会の構築への貢献にあり、日本機械学会の活動を支える原動力とも言えるでしょう。
一方、AIやIoTなどの技術進展に伴い、産業構造は急速に変化しています。このような状況下で、機械工学には新たな役割と進化が求められます。また、昨今の複雑化・多様化する社会課題に対しては、創造的で革新的な解決策が不可欠です。本会は、多分野にわたる専門家集団であり、リーディング・ソサイエティとして機械工学の未来を切り拓く使命を担っています。異分野を横断する学際的な取り組みを通じて、機械工学の価値と魅力を一層高め、本会の存在価値を向上させることを目指します。
社会貢献において、学会活動で得られた知見を広く発信することは欠かせません。機械工学の最前線から届けられる情報は、社会全体の知識基盤を深化させ、この分野の重要性と可能性への理解を広げます。さらに、本会の意義と役割が広く認識されることで、多様な人々が参画する機会の創出や新たなパートナーシップの形成も期待されます。こうした動きが相乗効果を生み出し、本会の活動をさらに発展させる基盤となるでしょう。
以上のことより、2025年度の重点項目として以下の3つに取り組んでまいります。
1.社会課題解決に向けた本会の役割強化
これまでも、学会横断テーマや分野連携分科会を通じて社会課題の解決に取り組まれてきました。今後もテーマのさらなる拡充や活動の活性化に注力してまいります。年次大会は、異分野の専門家が集う貴重な機会として、社会課題解決に向けた会員交流の場としての魅力を一層高めることを目指します。また、他学協会や産業界との連携をさらに強化し、幅広い協力体制を築いてまいります。
2.情報発信力の強化
さまざまな活動を通じた議論を提言や見解、報告としてまとめ、積極的に社会へ発信する取組みを推進します。機械遺産については、機械技術史の視点での発掘に加え、情報発信も強化してまいります。また、会員メリットの向上と相互コミュニケーションの促進を目指し、ホームページの情報拡充や検索機能の向上に取り組むとともに、支部・部門ホームページのプラットフォーム化を推進します。さらに、機械工学図書の閲覧サービスや動画配信など、会員向けコンテンツの一層の充実を図ります。
3.体質強靭化に向けた積極投資
これまでの施策により改善された財務状況を踏まえ、将来を見据えた安定的な運営と活動基盤のさらなる強化に向けて、積極的な投資を行います。若手会員が活躍できる環境を整備し、多様な背景と視点を持つすべての会員が価値向上を実感できる学会への変革を推進します。技術者教育では、体系化と迅速な情報公開を通じて、会員および社会への貢献をさらに深化させます。また、機械工学便覧は新たなニーズに応じた改訂を進め、学術誌においては価値向上と投稿数増加を図るための施策を展開します。
社会に貢献する学会としての魅力をさらに高めるとともに、積極的な発信を通じて本会のプレゼンスを一層強化してまいります。会員の皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
キーワード:会長挨拶
表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。
デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)